2015年12月7日月曜日

日刊サンコラム12:ファーストトラックとは

先週は、デザインビルドついてご紹介しました。
一般的に米国における建築は、施主に依頼された建築士が図面を作成し、
工務店(コントラクター)が施工をするのですが、
その場合すべての図面が揃うまで正確な見積もりが組めません。

デザインビルドでは、建築士と工務店が一体となって業務を遂行するため、
計画の途中でも正確な見積もりを取ることができ、
かつ図面がすべて揃う前に材料を発注することができるなど、工期短縮に大きく貢献します。

タイムイズマネー


Time is Money

建築というのはとても時間のかかるものです。
建築設計は小さいプロジェクトでも3ヶ月、大きなもので3年~5年かかるものも珍しくありません。
工期についても同様で、何年もかかるものまであります。

誰にとってもこの待ち時間というのはなんとも苦痛なものです。
土地を所有していたら固定資産税はもちろん、ローンの支払いも始まりますし、
リースであれば月々の支払いをしながら待たなければならない場合もあります。

そんな中、完成を待ち続けるのは精神的にも経済的にも非常に辛いものです。
1ヶ月でも早く完成すれば、そこで利益を生むことができる(出費を抑えることができる)ため、
多少費用が追加でかかっても、早く完成させたいケースも多いかと思います。
そんなときに有効なのがファーストトラックという手法です。

ファーストトラックで工期短縮


ファーストトラック(Fast Track)とはデザインビルドの手法の一つです。
よって、建築士と工務店が一体となることが大前提となります。

どのような手法かというと、建築士が図面をすべて完成させる前に工事を開始するのです。

簡単に流れを説明すると、建築士は躯体や基礎のデザインだけを決めて、
図面におこし、それを基に工務店が工事に取り掛かります。
工事をしている間に、次は屋根や内壁の位置などを決め、
躯体等の工事が終わり次第、新たに描いた図面を工務店へ渡していきます。

このようにして、同時進行で工事と設計を行うことにより、
本来設計がすべて終わるまで工事着工を待たなければならなかった分、時間短縮になります。

Fast Track
ファーストトラックの図解

もちろんその分、各工程へ進むごとにその都度、現状の図面をアップデートし、
新たな部分を描き足すという作業が必要となりますので、
建築士が描かなければならない設計図の量はかなり増えます。

そこで、トラブルを避けスムーズに作業を進めるためには、
計画序盤から完成までの全体像が頭の中で描けるような
経験豊富な建築士の起用が望ましいでしょう。
この手法で3ヶ月でも工期を短縮できれば、大きく節約できる場合は多々ありますので、
特に商業施設を計画されている方は一度建築士に相談されてみてはいかがでしょうか。


日刊サン 2015年10月21日掲載

2015年11月30日月曜日

ヨーロッパ旅行記1~ロンドン編~

学術論文の審査が通り、イタリアの学会で発表することになりました。ついでにロンドンやミラノ、パリにも寄って旅行を満喫してくることに。
10月8日~10月21日の2週間ほど滞在してきました。


初めてのロンドン


ヨーロッパには去年も旅行で行き、十代の頃にも一度行きましたが、
イギリスには一度も足を踏み入れたことはなく、とても楽しみにしていました。

行く前の印象では、食べ物は美味しくない、物価は高い、いつもどんより曇っている
と悪いイメージが多かったですが、今回の旅ですべて払拭されました。

いや、物価が高いのだけは事実かもしれません。。
ホテルもお世辞にも立派とは言えないようなところが5つ星で、一泊7万円近くしました。
アメリカ基準だと2つ星ぐらいのところです。

ただ、食べ物はとっても美味しかったです。
妻が事前にレストランをリサーチ(主にTripAdvisor)でしてくれたのも大きかったと思いますが、
何料理を食べても軒並み美味しかったです。

そんな普通の旅行記みたいな話はこの辺にして…
一応建築ブログなので、建築の話をメインにご紹介していきたいと思います。

ロンドン建築


せっかくロンドンまで来たのですから、ベタな観光は一応しました。
ロンドン塔やタワーブリッジは当然一通り見てまわり。。

タワーブリッジ
タワーブリッジ


夕方にはミレニアム記念事業により建設されたロンドン・アイにのってみたり。

ロンドン・アイ
ロンドン・アイ
その向かいにあるウェストミンスター/ビッグベンを見てまわったりと、
一通り、俗に言う「観光地」は観てまわり、人並み以上に感動してきました。

ウェストミンスター
ウェストミンスター/ビッグベン
ですが、私が最も好きなのは、近代建築から現代建築なのです!
アールヌーヴォーやバウハウスなんかも好きですが、イギリスにはほぼないので今回は割愛。




ロンドンの現代建築


まず、ほとんどの観光客が行かないであろうロンドン市庁舎。

ロンドン市庁舎
ロンドン市庁舎全貌


ロンドン市庁舎
ロンドン市庁舎エントランス

こちらはタワーブリッジのすぐ側にあるので、
時間がある方はお立ち寄りされることをお勧めします。

ノーマン・フォスター
が設計した近代建築で、ヤドカリのような形をしています。
これは、表面積を極力小さくすることで、エネルギー効率が上げられるのではないか
という実験的な目論見を基に設計されたと言われています。
実際、エネルギー効率を測定してみると、あまり良い結果が出なかったのが残念ですが…。

その他にも近代・現代建築はロンドンにたくさんあります。
イス・リ本社ビルも歴史的な建物と共存して建っている様子がいかにもロンドンらしくて素敵です。
イタリアなんかではなかなかこういった光景はお目にかかれません。

スイス・リ本社
スイス・リ本社

また、200m超の超高層ビルも街中に建っています。
こちらはRogers Stirk Harbour + Partnersによる設計で、
真下から見上げた姿は圧巻です。
周囲と比べてもズバ抜けて高いので、よく目立ちランドマークとなっています。

Leadenhall Building
Leadenhall Building

ですが!今回のメインはこれではありません。
もちろん好みによると思いますが、
私はリチャード・ロジャーズ設計のロイズがとっても見たかったのです。







こちらも実験的な要素が強い建築です。
こういったコンセプトが明確で挑戦的なものが大好きです。
こちらのコンセプトはパリにあるポンピドゥセンターと同様で、
通常隠してしまう配管などを前面に押し出してしまったらどうかという試みです。

これにはいくつかの狙いがあります。
まず、大きなところとしては、機能美です。
配管がたくさん立ち並び複雑なファサードをしていますが、
どの建材をとっても必要なものばかりで構成されております。
どのように建物が機能しているのかということを見せることにより、
美しいIndustrialなファサードを表現しています。

また、機械設備というのは最も耐用年数が短い建材です。
よって、他の建材に比べて頻繁に修理や交換が必要になってくるのですが、
外に出ていることにより、それらの作業がしやすくなるという狙いもあります。

ただ、現実的には、外に露出することで経年劣化を早めてしまい、
イニシャルコストもランニングコストも通常より高くなってしまうため、
この後、あまり建築のトレンドとして流行することはありませんでした。

これはとても残念な事実でありますが、
だからこそ、このロイズは試験的に試したとっても貴重な建物の一つであるわけです。

また、実際に見て初めて気づいたのですが、
デザインが黒川紀章氏による中銀カプセルタワービルを思わせました。

中銀カプセルタワービル
中銀カプセルタワービル

4枚目の写真なんかちょっと…。。
気のせいですかね。

こちらも同じく実験的な有名な建築物なので、共通認識があればおもしろいですね。


2015年11月16日月曜日

日刊サンコラム11:デザインビルドとは?

デザインビルドとは?


前回は、一般的な建築士の役割についてご紹介しました。
施主は建築士を選定し、契約をします。
建築士は別途各種エンジニアと契約を結びコンサルタントとします。
工務店(コントラクター)については、別途施主が契約をします。

工務店と建築士は独立しているため、
図面がすべて出来上がってからでないと最終的な工事の見積もりは出ないという話をしました。
ただ、それでは困る場合が多々あるので、
そういった場合のために編み出された手法を「デザインビルド」と呼びます。

工務店と建築士が一体となる


デザインビルドでは、建築士と工務店が一体となります。
施主との契約も建築士・工務店合わせて一つしか交わされません。

通常の手法では、施工図面がすべて完成してから工務店が選定されますが、
デザインビルドではプロジェクトの最初から工務店が関わってきます。
そのことにより、設計の途中段階でも正確な見積もりがとれる上に、
デザインを選定する際に正確な金額の差を考慮に入れて決めていくことができます。
さらには、仕入れや施工に時間のかかるようなもの(レストランのキッチン周り等)は
設計の途中段階で始めてしまうことで、工期を大幅に短縮することが可能になります。

デザイビルドと通常のやり方の違い
デザインビルドと従来の方法の工期の違い

非常に効率的で、かつ無駄な予算をかける必要がなくなる可能性が高いため、
近年米国では急速に広がりつつある手法です。

デザインビルドに欠点はないのか?


一般的な手法よりも優れている点が多いように聞こえますが、
それならばなぜすべてのプロジェクトに採用しないのでしょうか。

それは、工費があがってしまう傾向があるからです。
前の段落と矛盾していると思われるかもしれませんが、
最初から工務店を選定することで、工務店同士の競争相手がいなくなるため、
出来る限り予算を下げて仕事をとろうとする姿勢はなくなってしまいます。

また、設計段階から工務店が打ち合わせに出席したり、見積もりを何度もとったりと、
こなさなければならない仕事量が増えるため、どうしても費用がかかってしまいます。

どういったプロジェクトに向いているのか


ほとんどの場合、施工費は出来る限り安く済ませたいでしょう。
そのような場合には従来の一般的な手法の方が向いています。

投資・借り入れなどの理由により、予算を完全にコントロールする必要がある場合や、
多少のお金よりも工期短縮を優先する場合に向いています。
大規模な建物ほど一ヶ月でも早く完成させることができれば、
多少の施工費の増減など簡単にペイオフできることが多いためです。

来週はさらに工期を短縮できるファーストトラックという手法についてご紹介致します。


日刊サンコラム11:デザインビルドとは
日刊サン 2015年10月7日掲載

2015年11月1日日曜日

日刊サンコラム10:建築士の役割とは?

建築士の役割とは?

日本人の方から建築設計の依頼を受ける際に、
一番最初に私がするお話があるので、今週はその一部をご紹介致します。

それは施主建築士工務店(コントラクター)の関係についてです。

建築士は施主が予め購入もしくはリースした土地に、
施主の提示するプログラムに基づいて建物をデザインし、
各種エンジニアと共に施工図面を作成し、市から建築許可をとり、
工務店と工事の確認を行います。

こう説明するとなんだかややこしいですが、
例えば新築の住宅を建てる場合で見てみましょう。



まず土地を見つけ購入し、どのような家にするか夢を膨らませると思います。
その中で家族構成や来客の頻度等で、必要な部屋数やレイアウトを決めていきます。
この設計する際のガイドライン、もしくは施主の用途に基づいた希望をプログラムと呼びます。
その後、建築士を決めて、一緒にデザインを詰めていくことになります。
エンジニアは建築士がコンサルタントとして雇います。
今回の場合ですと、Civil Engineer(土木技師)やStructural Engineer(構造設計士)、
Landscape Architect(造園設計士)等が関わってくる可能性があります。

建築士は施主からの要望を聞き入れ、
それを実現できるようすべてのコンサルタントに指示及びマネージメントをします。
施工図面が完成しましたら、市に図面を提出し、建築許可をとります。
(建築許可についてはコラム1を参考にしてください)
許可が下り次第、工務店から見積もりをとって契約を結びます。
そこからいよいよ工事に入ります。
ここで勘違いされがちな点が2つほどあります。

1. 工費の見積もりをとるのは工務店である

建築士と工務店は独立しており、
設計が終わって工務店に見積もりの依頼を出して初めて正確な工費が算出されます

もちろん、建築士も工費に関する知識はあるので、
例えば50万ドルで家を建てたい等という要望があれば、それを実現する義務があります。
もし、予算よりも工務店の見積もりの方が高い場合には、
AIA(アメリカ建築家協会)の契約書により、
建築士は無償にて図面の描き直しをすることになっています。

予算内に収まるよう最大限の努力をするのが建築士ですが、
実際見積もり金額を算出及び加減することはできないという点にご注意下さい。

2. 建築士は工事の指揮をとらない

日本と異なるのは、アメリカの建築士は通常施工監理を行いません
もし建築士が監理する必要がある場合には、基本設計料とは別に費用が必要になります。

これには責任の分担がありまして、工事の全責任は工務店が、
デザインの全責任は建築士がとれるようになっています。

よって、現場で建築士はデザイン通りにきちんと施工されているかどうかを細かくチェックしますが、
工事過程(例えば足場の組み方等)について口出ししないことにより、
双方が責任をもってきちんとした仕事をすることができます。


以上がアメリカでの基本的な建築士の役割ですが、変則パターンも数多く存在します。
次回はその一つであるデザインビルドについてご紹介します。





コラム10:建築士の役割とは?
日刊サン 2015年9月23日掲載

2015年10月23日金曜日

日刊サンコラム9:サスティナブルとは

サスティナブルとは

近年耳にすることが多くなってきたSustainable(サスティナブル)という単語。
グリーンだったり、エコとも呼ばれたりしますが、
意訳をすると「地球環境に考慮する」といった意味です。

建築において代表的なのがUSGBCが認定しているLEEDというシステム。
ハワイでもカカアコ地区がLEEDプラチナ認定を取得していたりと、
実は身近なものとなってきています。

USGBC LEED認定


また、最近スーパー等でビニール袋が全面的に廃止になり、
エコバッグの使用が強制になったり、
リーフやi3などの電気自動車も数多く街中で見かけるようになり、
生活の直接的な部分で関わってくることが増えてきました。

そのことにより、サスティナブルに関心のある人が徐々に増えてきたことは
本当に素晴らしいことだと思います。

複雑な地球環境


サスティナブルというのは実は複雑なコンセプトです。

環境に良さそうなものは世の中に溢れていますが、
本当に良いのかどうかは何をどういった角度で見るかによって変わってきます。

身近な例で見てみましょう。
皆さんご自宅でご飯を食べるときに食器を使って、洗って乾かして再利用しますよね。
この時の環境負荷は最初の食器を作る時に要するエネルギーと、
使用した水及び下水処理にかかるエネルギー、温風で乾かすのであれば、
その際要するエネルギーとなります。

食器洗い


また、紙皿を使ったらどうでしょう。
紙皿を作る時に要するエネルギーとゴミ処理するエネルギーになります。

紙皿


一般認識として前者の方がエネルギー消費量が少なそうですが、
ほとんどの場合紙皿の使い捨ての方が少ないです。
油汚れを含んだ水を処理するのには想像以上にエネルギーが必要となるからです。

ただ、地球環境はエネルギー消費量だけでは計れません。
ゴミ問題もまた深刻な問題の一つです。
紙皿を毎食捨てていたら膨大なゴミが発生してしまいます。

この観点から考えると圧倒的に食器を洗って再利用する方が良いのは明らかです。
このように見方を変えると結果が180度変わってしまうものが数多く存在するため、
「環境に良い」ことをするのは想像以上に難しいことなのです。

では、何をしたら良いのか


環境に良さそうなもの・行為でも、実はそれほど良くないことが多い中、どうしたら良いのか。
リサーチをするにも多方面からアプローチしなければならず、
専門知識がないとなかなか難しいでしょう。

そこで、最も有名かつわかりやすい法則が3Rです。
3RとはReuse, Reduce, Recycleのことで、
再利用する、利用する量を減らす、リサイクルするの三つです。

建築も同じです。出来る限り長く使い続けること。
必要最小限の大きさの建物にすること。
そして、建て直しの場合には、
より多くの建材をリサイクルすることが最も効果的かつわかりやすいサスティナブルの手法です。

また、これらの法則はお財布にも優しいので是非取り入れてみて下さい。


日刊サンコラム9:サスティナブルとは
日刊サン 2015年9月9日掲載

2015年10月7日水曜日

イタリア国際学会での発表

急遽決まったイタリア旅行

今年度はアウトプットの年!と年始に決めていて、
日刊サンの記事もその一環だったのですが、
それ以外に建築の論文も4~5ヶ月ほどかけて書いておりました。

8月上旬、無事に書き終え、学会へ提出!
一次審査、二次審査を通過し、9月始めに掲載が決定。
と同時に、イタリアのサレント大学で発表をすることになりました。

Salento University
サレント大学

そこから、仕事の都合をつけ、プレゼン資料をまとめ、旅程を立てて…
っと、かなり慌しい日々を送ってました。

そして、ついに明日出発です!

未だ荷造りも出来ていませんし、仕事の引継ぎも出発当日まで行う予定です。。
なんとかなるでしょう!多分。

学会ついでに巡るEUの都市

片道20時間ほどかけてヨーロッパまで行くのですから、学会だけではもったいない!
ということで、サレント大学のあるイタリアのレッチェ以外にも、
ミラノ、ロンドン、パリと3カ国・3都市を巡る予定です。

11泊14日で、学会を含んだ4都市というのは、
かなり無理のある弾丸旅行になりそうですが、楽しんできます。

10月21日に戻ってくるので、帰ってきたら建築の話題を中心に、
旅行話をご紹介したいと思います。
「ハワイの建築設計事情」ではないですが、いいですよね…たまには。

今回の建築のハイライトは、サヴォア邸、モンサンミッシェル、ポンピドゥーあたりでしょうか。
いずれも初めて訪れるので非常に楽しみです。

その他、ルーブル美術館や大英博物館などの世界的美術館や、
最後の晩餐が描かれているサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会など、
建築以外の芸術にもたくさん触れてくるつもりです。

2015年10月6日火曜日

日刊サンコラム8:不動産購入時の注意点

中古物件購入時の注意点


大半の方にとって住宅購入というのは、人生において最も高額な買い物となると思います。
それだけでなく、最も長い時間を過ごす場所になるので、
失敗をしたくないのは皆さん同じですよね。

投資目的や、商業利用の場合にも同様に慎重になるかと思います。
購入の決め手となるのは大体、
立地の良さや周辺環境、面積、間取り、デザイン(内装含)といったところかと思います。
上記すべてが気に入った物件であっても、
建築的に問題があると後悔することになってしまうので、事前に十分チェックするようにしましょう。

何を見ればよいのか

中古のモノを買う際は、車でも何でもそうだと思いますが、
基本は「すべて試してみる」ということです。

ドアや窓は全部開け閉めをし、電気もすべてつけてみて、
水道もお湯を出してみたり、バスタブに水を溜めてみたり、動くものはすべて動かしてみて下さい。

そこで少しでも違和感があったら徹底的に調べます。
気になる点があった場合、できれば建築士や工務店等、専門家を呼ぶことをお勧めします。

例えばドアが開きづらいものがあった場合、単にヒンジが錆びているだけなら良いのですが、
建物全体がゆがんでいる可能性があります。
また、内外壁に斜めにヒビが入っている場合も同様です。

内装のヒビ
内装のひび割れ


傾いた建物を直すのは大掛かりな工事が必要となりますので、
購入を見送っても良いですし、また、その点を交渉材料にし値引きを試みるのも自由です。

また、ハワイではシロアリ被害がとても多いので、特に気をつけましょう。

シロアリ被害
シロアリ被害

もちろん、購入時にInspectorと呼ばれる検査員が調査しますが、
チェックリストに従い現状を報告するにとどまります。
何か問題点を発見した場合、その問題から派生するさらに大きな問題や、
原因となるものまではやはり通常教えてもらえない場合が多いので、
個人でさらに調査をするか判断をしたほうがよいでしょう。

築年数に注意

当然ですが、古ければ古いほど注意が必要になります。
すぐに建て替えてしまう日本とは違い、建物の平均寿命が非常に長いので、
築50年以上の住宅はそこら中にあります。

しっかりとリフォームされていれば、新築よりも安く、
快適に住むことができるので人気があると思います。

ただ、どれだけメンテナンスをしていたとしても、建材には寿命があります。
例えば鉄筋コンクリートの寿命はきちんと施工されたとして80年~100年といわれています。
また、海岸部では塩分がコンクリート内部に侵食し、
鉄筋と反応することで通常よりも早く腐食されてしまいますので、
購入時にはこれらの内容も踏まえた適切な判断が必要でしょう。

専門家を雇う必要は?

一般的に自分でチェックしてみて気になる点がなければ
わざわざ雇う必要性はあまりないと思います。

ただ、大規模な建物や、商業利用の場合には一度相談されることをお勧めします。
建物によってはレストラン等に改築することが非常に困難な場合や、
また、立地によって不可能な場合もあるので十分に注意しましょう。

日刊サンコラム8:不動産購入時の注意点
日刊サン 2015年8月26日掲載

2015年10月3日土曜日

日刊サンコラム7:アスベストについて

アスベストって何?

毎週このコラムを読んで下さっている方から「アスベスト」について
書いてほしいとリクエストを頂いたきましたのでお応えしたいと思います。

アスベストは日本語で「石綿」と書き、英語ではasbestosと呼ばれています。
世界中で大きな問題となったので、
30代より上の年代では聞いたことがある方も多いかと思います。

断熱性、耐熱性、絶縁性など非常に多くの利点を持つ鉱物とされ、
長年あらゆる建材に使用されてきました。
吹き付けるだけで燃えにくく、熱しにくい材料になるわけですから、
当時は夢のような材料だったわけで、急速に世界中で流通しました。

アスベスト吹きつけ
構造体に吹き付けられたアスベスト
 
残念ながら後にアスベストに発がん性があるということが発覚し、
今現在では世界中で使用が禁じられています

アスベストの危険度

アスベストは肺がんを引き起こす原因となる恐れがあります。
濃度にもよりますが、非喫煙者と比べ喫煙者の発がん性リスクは、
アスベスト暴露によるもののおよそ倍と言われています。

喫煙の約半分のリスクと聞くと、そこまで深刻に思えないかもしれませんが、
日常的にアスベストを吹き付けていた職人さん達は、
かなりの量を吸い込んでいたことが予想され、被害者の数は膨大です。

ハワイの建物にアスベストはあるのか

1980年代以前に建てられたアパートやコンドミニアムには
すべて含まれているといっても過言ではありません。

床や壁、天井、断熱材や構造体のいずれかには利用されているでしょう。
ただし、アスベストというのは安定した状態では害はないのです。
空気中に飛散したものを吸い込むことにより発がん性リスクが上がりますが、
通常そのようなことは起こりません。
日常生活で害のあるものではないので、自宅にアスベストがあるからといって、
過敏に心配する必要は一切ありません。

どのような時が危険なのかというと、解体時です。
解体する際にアスベストが空気中に飛散することが多いので、
吸い込むことは避けなければなりません。
そのような工事の際には、
アスベストの取り扱いを専門とする業者に委託することが法律で定められています。

解体時の写真
解体時におけるアスベスト飛散


増築・改築をお考えの場合にも、是非建築士にご相談下さい。
アスベストが飛散する可能性を考慮し、
工事で触れる部分については予め除去するなどの対策が必要となるからです。
また、そうした工事の際に細心の注意を払うことは、
住民の方や作業員の健康と安全を守るためでもあるのです。

日刊サンコラム7:アスベストについて
日刊サン 2015年8月12日掲載

2015年9月30日水曜日

日刊サンコラム6:涼しい家づくりのコツ

ハワイは暑い?

夏真っ盛りですが、暑さをしのいで少しでも快適に過ごされていますか?
皆様ご存知の通り、ハワイはとても気候に恵まれており、
年中暖かいわりに湿度が低く、比較的カラッとしていて快適です。
ですが、家によっては日中エアコンなしではとてもじゃないけど過ごせない、
なんていう話もよく耳にします。

それはなぜでしょうか。
どれほど暑い日でも、公園の木陰にでも座っていれば心地よいのがハワイです。
木が一本あれば快適に過ごせるのです。
では、なぜ家の中は暑く、過ごしにくいのでしょうか。
カピオラニパーク
カピオラニパーク - 日中でも木陰は涼しい

暑い原因を探ろう

外よりも家の中が暑くなってしまう主な原因は、

1.屋根や壁に断熱材が入っていない
2.風通しが悪い
3.直射日光が家の中に入ってくる

の3つです。

1つ目に関しては築年数が50年近い住宅に多く見られます。
当時、屋根に断熱材をいれる法律がなかったためです。
断熱材が入っていないと、太陽の熱が家の中にどんどん蓄積され、
グリーンハウスのような状態になるのです。

2つ目は間取りと開口の問題です。
部屋に窓が一つしかないと、
なかなか空気が循環せずに室内温度を上昇させてしまいます。

3つ目については、方位と庇(ひさし)の問題です。
日本では「南窓が良い」とよく言われていますが、
ハワイでは冬がないため、あまり南窓の利点はありません。
南窓は庇が浅いと、日中長時間直射日光が室内を照らしてしまいます。
また、東・西窓は正面から太陽が昇り降りするため、庇がほとんど役目を果たしません。

どうしたら涼しい家にできるのか

断熱材が入っていないのであればまず入れましょう。
格段に快適さは向上します。

また、窓は出来る限り部屋の両端に配置することが理想的です。
部屋全体を風の通り道にしてあげることで熱が室内にこもらず、随時換気ができます。
間取り上、両端に窓を配置できなければ、斜めでも効果はあります。
また、ドアを開ければ、
家全体を通して風の通り道になるような間取りにすることもとても効果的です。
風通しのダイアグラム
風通しが良い開口のとり方


直射日光を室内に入れないためには、方位によって異なる対策が必要です。
北側はほとんど対策がいりませんが、逆に大きな庇をつけても意味がありません。
南窓は最も庇が効果的に働きます。出来るだけ大きくとりましょう。
庇の例
短い庇(ひさし・Overhang)

また、東・西窓は庇の効果はなく、
ルーバー[羽板(はいた)を縦に組んで取り付けたもの]が最も適しています。
あまりハワイで見ることがないものですが、
とてもお洒落にかつ効果的に日光を遮断できるのでお勧めです。
ルーバーのある家
東西に効果的なルーバー


その他、Low-Eガラスといって、熱を室内に入れない透明な特殊ガラスを採用したり、
屋外に植物を配置するなど様々な方法がありますので、
お悩みの方は建築士にご相談されてみてはいかがでしょうか。


コラム6:涼しい家づくりのコツ
日刊サン 2015年7月29日掲載

2015年9月27日日曜日

日刊サンコラム5:良いキッチンのレイアウトとは


家の新築時、もしくは改築時に最も時間をかけて考えるのはキッチンではないでしょうか。

たくさんの方が強くこだわりを持つ場所でもあります。
それは当然で、長時間過ごす場所であり、またキッチンの使い勝手次第で、
毎日の家事が「効率よく」かつ「楽しく」出来るかが決まってきます。

今回はキッチンをレイアウトする際に、
大きな間違いをしないためのアドバイスをさせて頂きたいと思います。

キッチンイメージ

 

作業動線の三角形


キッチンのレイアウトを考える際には、
「シンク」、「コンロ」、「冷蔵庫」の3つを軸として考えることが大切です。
料理をする際に、この3つの間を行き来することが一番多いからです。

これらを線で結び三角形を描きます。
この三角形の中に障害物があると非常に使いづらいキッチンとなってしまいます。

また、各辺が長すぎると無駄な動きが多くなり、料理をしていても不必要に疲れてしまいます。
逆に、辺の長さが短すぎると配膳や調理スペースが確保できず使いにくくなります。

目安として、
・シンクからコンロまで4 feet(120cm)~6 feet (180cm)
・シンクから冷蔵庫まで4 feet (120cm)~7 feet (210cm)
・コンロから冷蔵庫まで4 feet (120cm)~9 feet (270cm)

これらの範囲内に収まっていると、あらゆる料理をする際に、作業効率が上がるとされています。

キッチンレイアウト例
キッチンの作業同線の三角形


これはあくまで、主に一人が料理をする場合のみに限られるので、
常に二人で料理をする場合や、レストランのキッチンには同じ理論はあてはまりませんのでご注意下さい。
住宅であれば、売却時のことも考え上記の法則に従った方が無難であると思います。

今現在お使いになられているキッチンはどういったレイアウトでしょうか。

キッチンの改築もしくは新築をお考えであれば、まずは専門家に相談されることをお勧めします。
後悔することのないよう、ご自身でレイアウトをして工務店と直接交渉することは避けましょう。
市に届ける建築許可が必要ですし、
細かな法規も守らなければせっかくのマイホームが違法建築物にもなりかねません。

レイアウトはもちろん、材料や工期、工費などについても詳しく建築士のアドバイスを受け、
じっくり検討されることをお勧めします。




日刊サンコラム5:良いキッチンのレイアウトとは
日刊サン 2015年7月15日掲載

2015年9月24日木曜日

日刊サンコラム4:ソーラーパネルで高い電気代を大幅削減!

ハワイの電気

ハワイには原子力発電所がありません。
再生可能エネルギーも活発に導入・開発がされていますが、
未だに8割は石油もしくは石炭による火力発電に頼っているのが現状です。

ハワイの発電所
ハワイの発電所
 
それらの化石燃料はハワイではとれないため、
遠方地からはるばる運ばれてきます。

そのため、私達の電気代は非常に高くなってしまいます。
HECOによると1kw・時間あたり、約$0.34を平均しているようです。
ピンとこないかもしれませんが、これは全米で最も高く、
2位のニューヨークの$0.16と比較すると倍以上の値段です。

さらに全米平均の$0.10の3倍以上ということからも、
ハワイの電気代の高さはご理解頂けると思います。

この高額な電気代を削減するために私達は常日頃から色々と工夫していますが、
今回は大幅に削減できるソーラーパネルについて是非ご紹介したいと思います。

ソーラーパネルの種類

ソーラーパネルは大きく二つに分類されます。
太陽のエネルギーを電気に変換する太陽光発電システムと、
太陽の熱を利用して水を温める太陽熱温水器です。

太陽光発電システム
太陽光発電システム

太陽熱温水器
太陽熱温水器

ソーラーパネルというと、電気を生み出す前者をまず思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
実は太陽光発電システムは効率が悪く、エネルギーの変換効率はわずか10~20%程度です。

それに比べて、太陽熱温水器の方は50~60%と効率良く利用できるため、
電気でお湯を沸かすという用途に限れば、
こちらの方が断然太陽エネルギーを有効利用できるということです。

太陽熱温水器の仕組み
太陽熱温水器の仕組み

水を電気で温めているから非効率で高い

太陽熱温水器は日本でも70~80年代にとても流行りましたが今ではあまり見かけません。
これには様々な理由がありますが、一番大きいのは瞬間湯沸かし器の存在だと思います。
日本ではほとんどガスで水を温めているため、
比較的安価に、かつ瞬間的にお湯を沸かすことができます。

ハワイではガスの普及率が非常に低いため、大半のご家庭でWater Heaterが設置され、
電気で24時間タンク内の水を温め続けています。

このことが高額な電気代に拍車をかけているわけです。
こんなに年中暖かい土地に住んでいて、
毎日のように水を温め続けるためにお金と貴重な資源を使うなんてもったいないと思いませんか?
タンクの水を屋根に設置した太陽熱温水器に循環させて、
太陽熱で温めてあげれば飛躍的に電気代は削減できます。

どのぐらい節約できるのか、設置費用はいくらか

太陽熱温水器を設置すれば年間最大40%の電気代が節約できるといわれています。
4人家族のご家庭であれば、最低でも年に$600の節約ができます。
また、新築住宅に関しては州法で設置を義務付けられているほど、ハワイでは評価されています。

ソーラーパネル内を循環する水の重量を支えるため、既存住宅への設置の場合、
屋根の補強が必要となることもありますが、
ソーラーパネル単体は州・国の税額控除や$1,000分のRebate(割引)も受けられ、
実質$2,000程度で購入できます。
節約される電気代を考慮すれば、約3年で投資の元が取れるので、
まだ設置されていない一軒家オーナーの方はご検討されてみてはいかがでしょうか。

日刊サンコラム4
日刊サン 2015年7月1日掲載


2015年9月23日水曜日

日刊サンコラム3:LEEDという環境負荷認証制度について

環境というものを考える

「環境」というとどういったものを思い浮かべるでしょうか。

住環境、職場環境、地域環境、地球環境と色々ありますが、
建築学でいう環境とは、
「私達をとりまくモノが生み出す空間が与える影響」のことであると言えると思います。

漠然としすぎていてわかりづらいかもしれませんが、
実際、「環境」というのは小さなものが広範囲に渡って影響するものなのです。

例えば住宅の建材一つをとってみても、
住居者に与える影響は見た目、香り、手触り、光の反射、断熱性等多数あり、住環境を左右します。
外壁であれば、近隣に住む人や、通行者へ与える印象に影響を与え、近隣環境が変化します。
また、その建材を作るときに要したエネルギーや資源、運搬時に使った化石燃料、
さらには取り壊した後に廃材として残るゴミや、
そのゴミを燃焼したときに生じる大気汚染といったように地球環境にも影響します。

これらの様々な「環境」はすべて重要な事柄であり、建物が建てられる時から、
利用され、取り壊されるまでを総括的に考えることが大切です。

ただ、それには膨大な知識とリサーチを要してしまいます。
そこでガイドラインとなるような指標を用いれば、
比較的短時間で「良い環境作り」ができる建築を設計することも可能になるのです。

環境負荷の指標

指標となるものはいくつかありますが、
日本であればCASBEE(建築環境総合性能評価システム)が用いられ、
アメリカではLEED (Leadership in Energy and Environmental Design)が主流です。

USGBC LEED
LEEDのロゴ

LEEDの指標項目は以下のとおりです。

1.立地の持続可能性・交通の便
2.節水性
3.省エネ(再生可能エネルギー)と大気汚染
4.建材の再利用性
5.室内環境の快適性
6.革新性と特別な設計プロセス 

と大きく分かれています。

地球環境を考慮したものが大半ですが、室内環境等も重んじている点が特徴です。

例えば、シックハウス症候群対策として、
揮発性有機化合物(VOC)を含まない塗料や接着剤を使用することを推奨しています。
評価対象は新築建築物・既存建築物の保全と運営・商業施設の内装・住宅・都市開発と
色々ありますが、各項目の評価ポイントの内訳は評価対象先によって異なります。

LEEDの評価方法

LEEDの認定は点数方式で評価されており、
点数が高い順にプラチナ、ゴールド、シルバー、認定といったように格付けされます。
LEEDが定める環境負荷の指標をより多く満たしていればいるほど
高い評価を受けることができます。

ハワイでLEED認定された建築

ハワイでも数多くの建築物がLEED認定されています。
Punahou Schoolの Omidyarはプラチナを取得しており、
ワイキキにあるHard Rock Cafeはシルバーを取得していたりと、意外と身近な存在です。

その他オフィスや住宅など多岐に渡って数多くハワイでは認定された建物が存在します。

水道光熱費の削減はもちろん、生産性の向上も数多くの論文で立証されており、
LEEDの認定を受けることで資産価値の増大も期待できます。


WaikikiのHard Rock Cafe
LEED シルバーを取得したWaikikiのHard Rock Cafe

どうすれば認定されるのか

LEEDの認定を受けるためには、計画の初期段階から建築士に相談する必要があります。
新築の場合には、敷地を決める前から相談することがベターです。

また、LEEDの認定を受けたLEED AP(LEED Accredited Professional)の
資格を持つ建築士に相談できれば、更に詳しいアドバイスを受けられるでしょう。
「環境」に興味のある方は、一度相談をされてみてはいかがでしょうか。

日刊サンコラム3:LEEDという環境負荷認証制度について
日刊サン 2015年6月17日掲載



2015年9月22日火曜日

日刊サンコラム2:バスルームについて

建築士としてよく質問を受けるのが日本的なトイレ・お風呂についてです。







ハワイと言えどアメリカであり、ホテルはもちろんのこと、

一般的な一軒家、アパート、コンドミニアム(マンション)も

大抵日本とは異なったレイアウトになっています。

バスタブがないところも少なくなく、あったとしても大半がシャワータブと呼ばれるもので、

シャワー室とバスタブが一体になっているものが主流です。

また、トイレもお風呂と別室である場合は稀です。

日本であれば、トイレはウォシュレットが標準でついている上に個室です。

お風呂も浴室といった形で洗面所とは仕切られた空間で、

洗い場と浴槽はわかれており、とても快適に過ごせるように工夫されています。

そのような日本的なトイレ・お風呂が恋しい、ハワイの生活はとても好きだけど、

お風呂だけがちょっと。。。といった意見をよくお聞きします。









まず、お手軽に改善できるのはウォシュレットです。

既存の便器の上にのせて、接続をするだけで使用できるので特別な工事も必要ありません。

機器自体も専門店はもちろんホームセンターでも購入可能です。

唯一の注意点としては、電源を確保することです。

通常ハワイのトイレ周りにはコンセントがないので、

安全面を考慮すると別途電気工事をしてコンセントを設置することが望ましいですが、

近くにある洗面台などのコンセントから延長コードを引っ張ってくることも可能です。 




また、次にお手軽にできるのはシャワー室にバスタブを増設することです。

こちらは給・排水の配管とコーキング(タブと壁の隙間を目地材等で充填すること)

の作業をするわけですが、大規模な工事をせずに、

快適な湯船をハワイでも楽しむことができます。




完全に日本的なお風呂にするのであれば、建築許可を申請し、

工務店(コントラクター)に工事をしてもらう必要があります。

通常あまり日本様式の浴室は見かけませんが、依頼の多い案件なので、

経験豊富な建築士に相談すれば、

まるで日本にいるかのようなお風呂に仕上げることは難しくはありません。

肩までつかれる浴槽はもちろん、追い炊き機能も搭載することもできます。



コンドミニアムの場合には、スペース的な制約と共に、

配管を取りまわす床下スペースがないため、かなり難易度が上がりますが、

決して出来ないことはありません。

ハワイだからお風呂は仕方がないと諦める前に一度お考えになってみてはいかがでしょうか。

日刊サン掲載記事
日刊サン 2015年6月3日掲載

2015年9月21日月曜日

日刊サンコラム1:建築許可について


建築士としてよく質問を受けるのが建築許可についてです。


どういった工事に必要でどういうプロセスなのか疑問に思う方が多いようです。

建築許可申請書


まず、カーペットをフローリングにしたり、外壁や屋根の修復をする時、

建物の補習や仕上げのやり直しだけであれば必要ありません。

建築許可が必要になってくるのは、上記以外のケースはほぼすべてといえるでしょう。

壁を新たに追加、解体する場合や外にデッキを建設する場合、

また外構にフェンスを建てるだけでもほとんどのケースで許可を申請しなければいけません。

それは建物の種類は問わず、あらゆる建築物に該当されます。

一戸建ての住宅はもちろん、レストラン等の商業施設、

アパートやコンドミニアムの一室の改築であっても、

許可なく工事をすることは違法行為となるので注意が必要です。

もし許可なく工事をしてしまい、そのことが発覚すれば、

工事は全面的に中断させられます。

工務店(コントラクター)は新たに建築許可がおりるまで待機せねばならず、

その分の追加料金を請求させられることも多いようです。

また、こっそりと工事ができたとしても不動産の売却の際に問題となることが多いです。

もちろん、建築に置いて最も大切なことは、安全性です。

住む人が事故や不具合の心配をせず、安心して暮らせる建物をつくるという面でも、

正式な許可をとることは重要なのです。小さな工事であっても正しいプロセスを踏んで、

不必要なリスクを回避することができるのです。


さて、ではどうすれば建築許可がとれるのかということですが、

完成した施工図面(construction drawings)と申請料が必要となります。

申請料は工費によって変動し、プロジェクトの規模に比例します。

(参考のために$100,000の工費ですと、申請料が$1,560で審査料$312となります。)


施工図面については、必要な図面が揃っていれば良いというわけではなく、

ハワイ州で免許をもっている建築士に描いてもらう必要があります。

複雑な工事であれば構造、電気、機械、造園等のエンジニアにも描いてもらう必要があります。

個々に専門的なものとなりますが、

建築士を通して各エンジニアが連携をとり各種図面を揃えます。

また、入札から工事完了までの工務店とのやりとりも委任する形となります。

高額な投資ですので、必要なところを倹約しようとして大きな損害を被らないようくれぐれも気をつけましょう。

日刊サン 2015年5月13日号掲載