2015年9月30日水曜日

日刊サンコラム6:涼しい家づくりのコツ

ハワイは暑い?

夏真っ盛りですが、暑さをしのいで少しでも快適に過ごされていますか?
皆様ご存知の通り、ハワイはとても気候に恵まれており、
年中暖かいわりに湿度が低く、比較的カラッとしていて快適です。
ですが、家によっては日中エアコンなしではとてもじゃないけど過ごせない、
なんていう話もよく耳にします。

それはなぜでしょうか。
どれほど暑い日でも、公園の木陰にでも座っていれば心地よいのがハワイです。
木が一本あれば快適に過ごせるのです。
では、なぜ家の中は暑く、過ごしにくいのでしょうか。
カピオラニパーク
カピオラニパーク - 日中でも木陰は涼しい

暑い原因を探ろう

外よりも家の中が暑くなってしまう主な原因は、

1.屋根や壁に断熱材が入っていない
2.風通しが悪い
3.直射日光が家の中に入ってくる

の3つです。

1つ目に関しては築年数が50年近い住宅に多く見られます。
当時、屋根に断熱材をいれる法律がなかったためです。
断熱材が入っていないと、太陽の熱が家の中にどんどん蓄積され、
グリーンハウスのような状態になるのです。

2つ目は間取りと開口の問題です。
部屋に窓が一つしかないと、
なかなか空気が循環せずに室内温度を上昇させてしまいます。

3つ目については、方位と庇(ひさし)の問題です。
日本では「南窓が良い」とよく言われていますが、
ハワイでは冬がないため、あまり南窓の利点はありません。
南窓は庇が浅いと、日中長時間直射日光が室内を照らしてしまいます。
また、東・西窓は正面から太陽が昇り降りするため、庇がほとんど役目を果たしません。

どうしたら涼しい家にできるのか

断熱材が入っていないのであればまず入れましょう。
格段に快適さは向上します。

また、窓は出来る限り部屋の両端に配置することが理想的です。
部屋全体を風の通り道にしてあげることで熱が室内にこもらず、随時換気ができます。
間取り上、両端に窓を配置できなければ、斜めでも効果はあります。
また、ドアを開ければ、
家全体を通して風の通り道になるような間取りにすることもとても効果的です。
風通しのダイアグラム
風通しが良い開口のとり方


直射日光を室内に入れないためには、方位によって異なる対策が必要です。
北側はほとんど対策がいりませんが、逆に大きな庇をつけても意味がありません。
南窓は最も庇が効果的に働きます。出来るだけ大きくとりましょう。
庇の例
短い庇(ひさし・Overhang)

また、東・西窓は庇の効果はなく、
ルーバー[羽板(はいた)を縦に組んで取り付けたもの]が最も適しています。
あまりハワイで見ることがないものですが、
とてもお洒落にかつ効果的に日光を遮断できるのでお勧めです。
ルーバーのある家
東西に効果的なルーバー


その他、Low-Eガラスといって、熱を室内に入れない透明な特殊ガラスを採用したり、
屋外に植物を配置するなど様々な方法がありますので、
お悩みの方は建築士にご相談されてみてはいかがでしょうか。


コラム6:涼しい家づくりのコツ
日刊サン 2015年7月29日掲載

2015年9月27日日曜日

日刊サンコラム5:良いキッチンのレイアウトとは


家の新築時、もしくは改築時に最も時間をかけて考えるのはキッチンではないでしょうか。

たくさんの方が強くこだわりを持つ場所でもあります。
それは当然で、長時間過ごす場所であり、またキッチンの使い勝手次第で、
毎日の家事が「効率よく」かつ「楽しく」出来るかが決まってきます。

今回はキッチンをレイアウトする際に、
大きな間違いをしないためのアドバイスをさせて頂きたいと思います。

キッチンイメージ

 

作業動線の三角形


キッチンのレイアウトを考える際には、
「シンク」、「コンロ」、「冷蔵庫」の3つを軸として考えることが大切です。
料理をする際に、この3つの間を行き来することが一番多いからです。

これらを線で結び三角形を描きます。
この三角形の中に障害物があると非常に使いづらいキッチンとなってしまいます。

また、各辺が長すぎると無駄な動きが多くなり、料理をしていても不必要に疲れてしまいます。
逆に、辺の長さが短すぎると配膳や調理スペースが確保できず使いにくくなります。

目安として、
・シンクからコンロまで4 feet(120cm)~6 feet (180cm)
・シンクから冷蔵庫まで4 feet (120cm)~7 feet (210cm)
・コンロから冷蔵庫まで4 feet (120cm)~9 feet (270cm)

これらの範囲内に収まっていると、あらゆる料理をする際に、作業効率が上がるとされています。

キッチンレイアウト例
キッチンの作業同線の三角形


これはあくまで、主に一人が料理をする場合のみに限られるので、
常に二人で料理をする場合や、レストランのキッチンには同じ理論はあてはまりませんのでご注意下さい。
住宅であれば、売却時のことも考え上記の法則に従った方が無難であると思います。

今現在お使いになられているキッチンはどういったレイアウトでしょうか。

キッチンの改築もしくは新築をお考えであれば、まずは専門家に相談されることをお勧めします。
後悔することのないよう、ご自身でレイアウトをして工務店と直接交渉することは避けましょう。
市に届ける建築許可が必要ですし、
細かな法規も守らなければせっかくのマイホームが違法建築物にもなりかねません。

レイアウトはもちろん、材料や工期、工費などについても詳しく建築士のアドバイスを受け、
じっくり検討されることをお勧めします。




日刊サンコラム5:良いキッチンのレイアウトとは
日刊サン 2015年7月15日掲載

2015年9月24日木曜日

日刊サンコラム4:ソーラーパネルで高い電気代を大幅削減!

ハワイの電気

ハワイには原子力発電所がありません。
再生可能エネルギーも活発に導入・開発がされていますが、
未だに8割は石油もしくは石炭による火力発電に頼っているのが現状です。

ハワイの発電所
ハワイの発電所
 
それらの化石燃料はハワイではとれないため、
遠方地からはるばる運ばれてきます。

そのため、私達の電気代は非常に高くなってしまいます。
HECOによると1kw・時間あたり、約$0.34を平均しているようです。
ピンとこないかもしれませんが、これは全米で最も高く、
2位のニューヨークの$0.16と比較すると倍以上の値段です。

さらに全米平均の$0.10の3倍以上ということからも、
ハワイの電気代の高さはご理解頂けると思います。

この高額な電気代を削減するために私達は常日頃から色々と工夫していますが、
今回は大幅に削減できるソーラーパネルについて是非ご紹介したいと思います。

ソーラーパネルの種類

ソーラーパネルは大きく二つに分類されます。
太陽のエネルギーを電気に変換する太陽光発電システムと、
太陽の熱を利用して水を温める太陽熱温水器です。

太陽光発電システム
太陽光発電システム

太陽熱温水器
太陽熱温水器

ソーラーパネルというと、電気を生み出す前者をまず思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
実は太陽光発電システムは効率が悪く、エネルギーの変換効率はわずか10~20%程度です。

それに比べて、太陽熱温水器の方は50~60%と効率良く利用できるため、
電気でお湯を沸かすという用途に限れば、
こちらの方が断然太陽エネルギーを有効利用できるということです。

太陽熱温水器の仕組み
太陽熱温水器の仕組み

水を電気で温めているから非効率で高い

太陽熱温水器は日本でも70~80年代にとても流行りましたが今ではあまり見かけません。
これには様々な理由がありますが、一番大きいのは瞬間湯沸かし器の存在だと思います。
日本ではほとんどガスで水を温めているため、
比較的安価に、かつ瞬間的にお湯を沸かすことができます。

ハワイではガスの普及率が非常に低いため、大半のご家庭でWater Heaterが設置され、
電気で24時間タンク内の水を温め続けています。

このことが高額な電気代に拍車をかけているわけです。
こんなに年中暖かい土地に住んでいて、
毎日のように水を温め続けるためにお金と貴重な資源を使うなんてもったいないと思いませんか?
タンクの水を屋根に設置した太陽熱温水器に循環させて、
太陽熱で温めてあげれば飛躍的に電気代は削減できます。

どのぐらい節約できるのか、設置費用はいくらか

太陽熱温水器を設置すれば年間最大40%の電気代が節約できるといわれています。
4人家族のご家庭であれば、最低でも年に$600の節約ができます。
また、新築住宅に関しては州法で設置を義務付けられているほど、ハワイでは評価されています。

ソーラーパネル内を循環する水の重量を支えるため、既存住宅への設置の場合、
屋根の補強が必要となることもありますが、
ソーラーパネル単体は州・国の税額控除や$1,000分のRebate(割引)も受けられ、
実質$2,000程度で購入できます。
節約される電気代を考慮すれば、約3年で投資の元が取れるので、
まだ設置されていない一軒家オーナーの方はご検討されてみてはいかがでしょうか。

日刊サンコラム4
日刊サン 2015年7月1日掲載


2015年9月23日水曜日

日刊サンコラム3:LEEDという環境負荷認証制度について

環境というものを考える

「環境」というとどういったものを思い浮かべるでしょうか。

住環境、職場環境、地域環境、地球環境と色々ありますが、
建築学でいう環境とは、
「私達をとりまくモノが生み出す空間が与える影響」のことであると言えると思います。

漠然としすぎていてわかりづらいかもしれませんが、
実際、「環境」というのは小さなものが広範囲に渡って影響するものなのです。

例えば住宅の建材一つをとってみても、
住居者に与える影響は見た目、香り、手触り、光の反射、断熱性等多数あり、住環境を左右します。
外壁であれば、近隣に住む人や、通行者へ与える印象に影響を与え、近隣環境が変化します。
また、その建材を作るときに要したエネルギーや資源、運搬時に使った化石燃料、
さらには取り壊した後に廃材として残るゴミや、
そのゴミを燃焼したときに生じる大気汚染といったように地球環境にも影響します。

これらの様々な「環境」はすべて重要な事柄であり、建物が建てられる時から、
利用され、取り壊されるまでを総括的に考えることが大切です。

ただ、それには膨大な知識とリサーチを要してしまいます。
そこでガイドラインとなるような指標を用いれば、
比較的短時間で「良い環境作り」ができる建築を設計することも可能になるのです。

環境負荷の指標

指標となるものはいくつかありますが、
日本であればCASBEE(建築環境総合性能評価システム)が用いられ、
アメリカではLEED (Leadership in Energy and Environmental Design)が主流です。

USGBC LEED
LEEDのロゴ

LEEDの指標項目は以下のとおりです。

1.立地の持続可能性・交通の便
2.節水性
3.省エネ(再生可能エネルギー)と大気汚染
4.建材の再利用性
5.室内環境の快適性
6.革新性と特別な設計プロセス 

と大きく分かれています。

地球環境を考慮したものが大半ですが、室内環境等も重んじている点が特徴です。

例えば、シックハウス症候群対策として、
揮発性有機化合物(VOC)を含まない塗料や接着剤を使用することを推奨しています。
評価対象は新築建築物・既存建築物の保全と運営・商業施設の内装・住宅・都市開発と
色々ありますが、各項目の評価ポイントの内訳は評価対象先によって異なります。

LEEDの評価方法

LEEDの認定は点数方式で評価されており、
点数が高い順にプラチナ、ゴールド、シルバー、認定といったように格付けされます。
LEEDが定める環境負荷の指標をより多く満たしていればいるほど
高い評価を受けることができます。

ハワイでLEED認定された建築

ハワイでも数多くの建築物がLEED認定されています。
Punahou Schoolの Omidyarはプラチナを取得しており、
ワイキキにあるHard Rock Cafeはシルバーを取得していたりと、意外と身近な存在です。

その他オフィスや住宅など多岐に渡って数多くハワイでは認定された建物が存在します。

水道光熱費の削減はもちろん、生産性の向上も数多くの論文で立証されており、
LEEDの認定を受けることで資産価値の増大も期待できます。


WaikikiのHard Rock Cafe
LEED シルバーを取得したWaikikiのHard Rock Cafe

どうすれば認定されるのか

LEEDの認定を受けるためには、計画の初期段階から建築士に相談する必要があります。
新築の場合には、敷地を決める前から相談することがベターです。

また、LEEDの認定を受けたLEED AP(LEED Accredited Professional)の
資格を持つ建築士に相談できれば、更に詳しいアドバイスを受けられるでしょう。
「環境」に興味のある方は、一度相談をされてみてはいかがでしょうか。

日刊サンコラム3:LEEDという環境負荷認証制度について
日刊サン 2015年6月17日掲載



2015年9月22日火曜日

日刊サンコラム2:バスルームについて

建築士としてよく質問を受けるのが日本的なトイレ・お風呂についてです。







ハワイと言えどアメリカであり、ホテルはもちろんのこと、

一般的な一軒家、アパート、コンドミニアム(マンション)も

大抵日本とは異なったレイアウトになっています。

バスタブがないところも少なくなく、あったとしても大半がシャワータブと呼ばれるもので、

シャワー室とバスタブが一体になっているものが主流です。

また、トイレもお風呂と別室である場合は稀です。

日本であれば、トイレはウォシュレットが標準でついている上に個室です。

お風呂も浴室といった形で洗面所とは仕切られた空間で、

洗い場と浴槽はわかれており、とても快適に過ごせるように工夫されています。

そのような日本的なトイレ・お風呂が恋しい、ハワイの生活はとても好きだけど、

お風呂だけがちょっと。。。といった意見をよくお聞きします。









まず、お手軽に改善できるのはウォシュレットです。

既存の便器の上にのせて、接続をするだけで使用できるので特別な工事も必要ありません。

機器自体も専門店はもちろんホームセンターでも購入可能です。

唯一の注意点としては、電源を確保することです。

通常ハワイのトイレ周りにはコンセントがないので、

安全面を考慮すると別途電気工事をしてコンセントを設置することが望ましいですが、

近くにある洗面台などのコンセントから延長コードを引っ張ってくることも可能です。 




また、次にお手軽にできるのはシャワー室にバスタブを増設することです。

こちらは給・排水の配管とコーキング(タブと壁の隙間を目地材等で充填すること)

の作業をするわけですが、大規模な工事をせずに、

快適な湯船をハワイでも楽しむことができます。




完全に日本的なお風呂にするのであれば、建築許可を申請し、

工務店(コントラクター)に工事をしてもらう必要があります。

通常あまり日本様式の浴室は見かけませんが、依頼の多い案件なので、

経験豊富な建築士に相談すれば、

まるで日本にいるかのようなお風呂に仕上げることは難しくはありません。

肩までつかれる浴槽はもちろん、追い炊き機能も搭載することもできます。



コンドミニアムの場合には、スペース的な制約と共に、

配管を取りまわす床下スペースがないため、かなり難易度が上がりますが、

決して出来ないことはありません。

ハワイだからお風呂は仕方がないと諦める前に一度お考えになってみてはいかがでしょうか。

日刊サン掲載記事
日刊サン 2015年6月3日掲載

2015年9月21日月曜日

日刊サンコラム1:建築許可について


建築士としてよく質問を受けるのが建築許可についてです。


どういった工事に必要でどういうプロセスなのか疑問に思う方が多いようです。

建築許可申請書


まず、カーペットをフローリングにしたり、外壁や屋根の修復をする時、

建物の補習や仕上げのやり直しだけであれば必要ありません。

建築許可が必要になってくるのは、上記以外のケースはほぼすべてといえるでしょう。

壁を新たに追加、解体する場合や外にデッキを建設する場合、

また外構にフェンスを建てるだけでもほとんどのケースで許可を申請しなければいけません。

それは建物の種類は問わず、あらゆる建築物に該当されます。

一戸建ての住宅はもちろん、レストラン等の商業施設、

アパートやコンドミニアムの一室の改築であっても、

許可なく工事をすることは違法行為となるので注意が必要です。

もし許可なく工事をしてしまい、そのことが発覚すれば、

工事は全面的に中断させられます。

工務店(コントラクター)は新たに建築許可がおりるまで待機せねばならず、

その分の追加料金を請求させられることも多いようです。

また、こっそりと工事ができたとしても不動産の売却の際に問題となることが多いです。

もちろん、建築に置いて最も大切なことは、安全性です。

住む人が事故や不具合の心配をせず、安心して暮らせる建物をつくるという面でも、

正式な許可をとることは重要なのです。小さな工事であっても正しいプロセスを踏んで、

不必要なリスクを回避することができるのです。


さて、ではどうすれば建築許可がとれるのかということですが、

完成した施工図面(construction drawings)と申請料が必要となります。

申請料は工費によって変動し、プロジェクトの規模に比例します。

(参考のために$100,000の工費ですと、申請料が$1,560で審査料$312となります。)


施工図面については、必要な図面が揃っていれば良いというわけではなく、

ハワイ州で免許をもっている建築士に描いてもらう必要があります。

複雑な工事であれば構造、電気、機械、造園等のエンジニアにも描いてもらう必要があります。

個々に専門的なものとなりますが、

建築士を通して各エンジニアが連携をとり各種図面を揃えます。

また、入札から工事完了までの工務店とのやりとりも委任する形となります。

高額な投資ですので、必要なところを倹約しようとして大きな損害を被らないようくれぐれも気をつけましょう。

日刊サン 2015年5月13日号掲載