2016年2月17日水曜日

日刊サンコラム15:一軒家の決まりごと

一軒家を建てる際、もしくは改築・増築する際には様々な法規が関わってきます。
高さ制限からセットバック、建蔽率などあげていけばキリがないほどのルールがありますが、
今回はその中から、一軒家には一家族しか住むことを認められていないという話を
ご紹介したいと思います。


一軒家に一家族


自分が所有する土地に自分が家を建てるのだから好きにさせてほしい!
というのが大半の方々の考えで、日本では自由度が高いのですが、
米国は少し事情が異なります。

一軒家には、基本的に一家族のみが住むことができます。
二家族住めるようなプランニングは厳しくチェックされますし、
市から変更を要請されてしまいます。
二家族以上住むようであれば、その分火災などのリスクや損害が大きくなるなるため、
規制が一層厳しくなり、タウンハウスやアパート、コンドミニアムとして申請する必要があります。
ほとんどの住宅街ではこれらの複合住宅の申請は許されていないため、
不可能であるケースが多いのです。

ただ、例外としてハワイにはOhana(家族)という制度があります。
二世帯住宅を目的としたもので、ある程度敷地が広い住宅街で認められてます。
これは個々の敷地によって定まっているので、自分が所有している、
もしくは買おうとしている土地が認められているかは、建築士に聞いてみましょう。
もしOhanaが認められていれば一つの土地に二軒の住宅を建てることも可能となります。

一家に一つしか置けないモノ


住宅は一軒でも、内部を無断で分割してこっそりと二家族住んだりできないように、
他にも決まりがあります。

まず、すべての部屋は繋がっていなければなりません
それも、寝室やトイレ、倉庫などを通って他の部屋に行くことは禁じられており、
リビングもしくは廊下を通じて家の中にあるすべての部屋に行き来できる必要があります。

その他にも、キッチンとランドリーは一家に一つずつしか配置することができません
厳密に言うと、ランドリーという部屋が一つしか配置できないというだけで、
同室に二個ずつ洗濯機と乾燥機を設置することは問題ありません。

また、キッチンは一つしか配置できませんが、
バー(Wet Bar)という形態であれば配置することができます。
キッチンには、冷蔵庫・コンロ・シンクが必ず一つずつはありますが、
「バー」であるにはこの三つのうち二つまで(通常冷蔵庫とシンク)しか設置することはできません。
また、カウンターやキャビネットの大きさに制限があるので注意が必要です。

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これらの制限は、二家族以上住むことを目的としていない場合でも、
引っかかるケースが数多くあります。
一軒家の新築・改築・増築ご計画の方は、根を詰めて考え出す前に、
自分達が計画しようとしている住宅は法規的にも実現可能なのか、
一度建築士にご相談されてはいかがでしょうか。

日刊サン
日刊サン 2015年12月2日掲載

2016年2月4日木曜日

日刊サンコラム14:屋上農業について

手前味噌で恐縮ですが、
先日提出した学術論文が国際学会の審査を通過したため、
今年の開催地であるイタリアに赴き発表をする機会を与えていただきました。
そこで今回は、学術ジャーナルに掲載される内容の触りを少し紹介させて頂きたいと思います。

イタリアでのプレゼンの様子

屋根のポテンシャル


屋根の役割というのは、その下にある建物内部を雨風等から守り、
太陽光・熱を遮るために存在しています。
この屋根の上に何かを載せて付加価値をつければ、建物の所有者はもちろんのこと、
都市全体として多大なるメリットを享受することができるのではないでしょうか。
都市部における屋根が占める面積というのは、都市全体の面積の1/3程度もあります。
そのすべてを緑化したときの影響力は計り知れないものがあります。

小栗建築設計室 の ラスティックな 家 緑の屋根

屋上緑化のメリット


大都市の問題点は主にコンクリートの多さに起因しています。
特にハワイにおいてはその影響を肌で感じることができます。

例えば、雨水は通常土の中に染み込んでいき、
時間をかけて河川や地下水、また海へと流れていきます。
ただ、都市部においてはコンクリートが地面のほとんどを覆っているため、
土に染み込むことなく下水へと流れていきます。
そのため、強い雨が降るとすぐにFlash Warning(洪水警報)が
出るのは皆さんご存知かと思います。
また、コンクリートは熱帯夜を引き起こす「ヒートアイランド現象」の主な原因にもなっています。
都市部の1/3もの面積を占める屋根をすべて緑化することで、
劇的に都市部特有の問題を軽減することが可能になります。
他にも屋外の防音・断熱の役割を果たしたり、空気の浄化を手伝ったりと、
屋上緑化の利点は数多く挙げることができます。

都市農業のメリット

屋上でせっかく植物を育てるのであれば、
食べられるモノ(農作物)をつくった方が有意義ではないかというのが私の主な論点です。
農作物であっても上記にあげた利点はすべて享受できます。
単なる芝を育てるわけではないので、その分手間もかかりますが、
逆に言うと、その分雇用の機会を増やすことにもつながりますし、
もちろん利益を生むことも可能です。

FCD の モダンな 庭 屋上菜園

また、短時間の農作業をすることによって、
現代人のストレスは飛躍的に軽減することも知られており、
さらには、食料自給率を上げます。
ハワイや日本のように食べ物を輸入に頼っている場合、
震災時や有事の際に致命的な状況になるだけでなく、
送料や関税により値段が高い上に、
運ぶときに必要なエネルギーを考えるととてもエコだとは言い難いでしょう。

都市部で農作物を作ることが最も効率的でかつエコであることは明らかなのですが、
唯一の問題は地価の高さです。
そこで、今まで利用されていなかった屋上を利用すれば、
その点は難なくクリアできると私は考えます。

緑あふれる自給自足の大都市…
そんな街にいつかなればいいなと夢見ています。

日刊サンコラム14
日刊サン 2015年11月4日掲載