2017年12月10日日曜日

日刊サンコラム40:窓ガラスの種類について

窓は自然光を室内に入れ、また室内環境を維持したまま外の景色を見ることの出来る
とても重要な役割を果たしています。
常夏のハワイでは、良くも悪くも窓から太陽熱がさんさんと入るので、
一日の時間帯や季節によっては、
とても暑く不快な室内になってしまう場合もありますね。
今回は遮熱性のある様々な窓ガラスについて簡単にご紹介致します。

最も安価かつ簡単なのはTINT


車の窓ガラスに良く用いられる手法ですが、
ガラスに薄い膜を貼ることで眩しくなくするだけでなく、熱も遮断できます。

建物用もあり、専門業者も当然いますが、
時間をかけてやればDIYでも十分キレイに貼ることができお手軽です。

フィルムにも様々な種類があり、
金属系のものは電波を遮断してしまうので注意が必要です。
携帯電話やWifi等が通じなくなってしまいますので、
少し高価ですが出来ればセラミック系のものをお勧めします。
セラミック系であれば、部屋の明るさは適度に保ちつつ、
UV及び熱のほとんどを遮断することが可能です。

Low-eガラス


ガラスの内部に金属膜を挟むことで太陽熱とUVを遮断することができます。
暑い季節には、外からの太陽熱を反射し涼しい室内環境をつくり、
寒い季節には、室内熱を反射することで暖かい室内を保ちます。
どの季節でも有意義に活用できるため、とても人気のあるガラスの種類です。

普通の窓ガラスに比べてコストはかかりますが、
西側や東側の窓のみに設置するととても効果的です。
色はほとんどつかないため、普通の窓ガラスと混ぜて使っても違和感はありません。

電子カーテンシステム


こちらは最も最先端な方法です。
熱と光の遮断を自由自在に調整できるという優れものです。
エレクトロクロミックジェルと呼ばれるものがガラスとガラスの間に挟まれており、
電気を流すことで調光します。
スイッチ一つで完全な透明から真っ黒まで調整できるのはとても便利です。
近年開発されたボーイング787の機内にある窓ガラスもこの技術を利用しているため、
馴染みのある方も多いかと思います。
カーテンやブラインド、ひさしが全く必要なくなるのは良いですね。
建築用に大きな窓ガラスでももちろん利用可能です。
電子カーテンは、その優れた機能性のため、当然コストは最もかかります。

今回ご紹介した選択肢を上手く取り入れて、
一つのシステムで統一するのではなく、
場所に合わせてガラスの種類を選ぶとよいかもしれませんね。

日刊コラム40:窓ガラスの種類について 2016年12月7日掲載


2017年11月30日木曜日

日刊サンコラム39:バリアフリーについて2

先週は商業施設のバリアフリーについてご紹介しました。
米国は裁判大国であることも関係して非常に厳しく制定されています。
バリアフリーでなければならないという法律はありませんが、
万人が差別なくサービスを受けることができなければならないという決まりはありますので、
実質法律で定められているようなものですね。

一般住宅については、個人の自由となり何ら決まりはありません。
今回は、バリアフリーの住宅を建てる(改築する)際に
注意した方が良い点をいくつかごご紹介します。

最も大変なのは段差


バリアフリーの住宅に改築・新築する際に最もコストがかかるのがスロープです。
特に50年ほど前の住宅は、高床式住宅であることが多く、玄関前に階段があります。
それをなくしてスロープにするにはかなりのスペースが必要とされます。
車椅子で自走できる勾配は最大1:12と言われており、
1インチの段差を上がるのに1フィートの距離が必要になるということです。
24インチ玄関が高くなっていると24フィートと、
かなりの面積が必要だとお分かり頂けるでしょう。
もし、どうしてもスペースがとれない場合にはエレベーターを設置することも可能です。

開口部及び周辺を広げる


通常のドア、特にトイレのドアなどはとても狭いことが多いですね。
しかし、車椅子で利用するには最低でも32インチ、
出来れば36インチの開口を推奨します。
毎日通る場所ですから、頻繁に壁にぶつかっていてはストレスになるかもしれません。
また、計画時に忘れがちなのがドア周辺です。
開き戸の場合、取っ手側に逃げるスペースがないと、
ドアが車椅子にぶつかってしまい開けることができません(下図の左)。
少しスペースを設けるだけで
車椅子の利用者が心地よく行動できるスペースが増えるので工夫をしてみましょう。
ドア周辺に必要なクリアランス


シャワー・バスタブは専用品がある


お風呂については、どの程度自力で動くことができるのかにより大きく変わってきます
捕まる場所があればシャワーを浴びることが可能な方ならば、
手すりのみを設置できます。
誰かに身体を洗ってもらう等、さらなる機能性が必要であれば、
ドアがついていて段差をこえなくても入れるバスタブや、
段差のないベンチ付シャワーなどにすることも出来ます。
そういったところを工夫することで、介護者の負担も飛躍的に軽減することができます。

日刊サンコラム39:バリアフリーについて2 2016年11月23日掲載

2017年11月20日月曜日

日刊サンコラム38:バリアフリーについて

近年、日本でもバリアフリー住宅や、バリアフリーな公共施設が増えつつありますが、
米国は裁判大国であることも関係して非常に厳しく制定されています。
バリアフリーでなければならないという法律はありませんが、
万人が差別なくサービスを受けることができなければならないという決まりはありますので、
実質法律で定められていると言っても過言ではありません。

商業・公共施設は障がい者の方も同様のサービスを受けられるべき


一般住宅においては、個人の所有物ですし当然義務化はされていません。
ご家族に車椅子を利用される方がいらっしゃれば
当然バリアフリーにした方が便利ですが、
しなければならないという決まりはありません。

ところが、商業・公共施設においては、すべてバリアフリーにする必要があります。
「同じサービスを受けることができない」=「障がい者を差別している」と見なされてしまいます。
訴訟リスクが高いので軽視せずに必ず遵守するようにしましょう。

すべてをバリアフリーにする必要はない


時々勘違いされることも多いのですが、
すべての空間をバリアフリーにする必要はありません。
同等なサービスを受けられれば良いので、
例えばレストランであれば一部車椅子で座れるようにすればよいのです。
二階建てのレストランでも、1階でも同じメニューで食べることができれば、
エレベーターやスロープを設置する必要はありません。

ホテルとなると、様々な部屋があるので少しややこしくなります。
海が見える部屋があれば、同様にバリアフリーでも用意する必要があります。
スイートルームを含むその他の部屋も同様に、
一般の部屋と同様バリアフリーの部屋も
それぞれ一部屋ずつは用意しなければなりません。

ADAの問題点


バリアフリーは米国ではADA(Americans with Disabilities Act)の規定に従います。
この規定に従うと車椅子利用の方にはとっても便利な空間になりますが、
例えば耳や目等が不自由な方への対応はまだまだ不完全と言えます。
より充実させることでどんな人でも快適に暮らせる街になっていくと良いですね。

日刊サンコラム38:バリアフリーについて  2016年11月17日掲載

2017年11月10日金曜日

日刊サンコラム37:様々な床仕上げについて

今回は主要な床の仕上げについて紹介したいと思います。
床材は毎日触れるので足触りの感触はもちろんのこと、
見た目やメンテナンスのしやすさ、価格、耐久性のどれも大切です。

セラミックタイル

セラミックタイル

丈夫で掃除もしやすいのがセラミックです。
もし、欠けたり割れたりしてしまったとしても、部分的に交換もできます。
ただ、とても硬いので素足で長時間立っていると足が痛くなりますし、
また見た目も冷たい印象を与えるので、
リビング等にはあまり向いていないかもしれませんね。

ハードウッド

ハードウッド

本物の木のフローリングです。
きちんとメンテナンスをしていれば100年以上ももちます
また、汚れたり、傷がついたりしても、
上層部を削りまた美しい表面を取り戻すことができます。
コストはかなり高い部類に入りますが、
感触や見た目共に万人に好かれる仕上げだと言えるでしょう。

カーペット

カーペット

ハワイにお住まいの方は最もなじみ深いかもしれません。
暖かみのある雰囲気が利点ですが、他の床材に比べて汚れやすく、
一旦汚れるとキレイにするのが困難です。
ただ、意外と知られていないのですが、
カーペットは断熱材の役割を果たす上に、吸音材にもなります。
あまり声が反響してほしくないところに敷くと良いでしょう。
さらにチリやホコリを吸着するので、他の床材に比べ空気がキレイになります。

ビニール(Vinyl)

ビニール

最も施工がしやすく、かつ安価な床材です。
こちらもハワイで使われることが非常に多いと思います。
とても丈夫で掃除もしやすく、耐水性もあります。
また、様々な色やデザインがあり、ハードウッドそっくりなものや、
タイルのようになっているものもあります。
ただ、唯一の欠点は接着剤等に揮発性有機化合物(VOC)が含まれていることがあったり、
製造過程や廃棄後の処理が環境によくありません。

以上の他に石や竹等、様々な床材があります。
また、ハードウッドと一言で言いましても、
純粋な木から出来ているものや、
Engineered Woodと呼ばれる複数の木の層を重ねて作っているもの、
Floating Woodと呼ばれる木のような材質をしているものの
全く異なる材料でつくっているもの等、多種に及びます。

とても大事な部分ですので、選ぶ際には色はもちろんのこと、
感触も含めて実物を一度見てお選びになることをお勧めします。

日刊サンコラム37:様々な床仕上げについて 2016年11月10日掲載

2017年10月30日月曜日

日刊サンコラム36:住宅の増築について

希望より少し小さめの家を購入された場合や、家族の人数が増えた場合等、
家の面積を大きくしたいというケースはあるかと思います。
今回はそのような場合における住宅(一戸建て)の増築についてご紹介します。


住宅の建ぺい率・総面積に注意

所有している土地だからといって何をしても良いわけではありません。
東京の住居のように敷地いっぱいまで建設することは
ハワイの住宅街では禁じられています。

敷地境界線から5 feet(約1.5m)もしくは10 feet (約3m)の部分に
建設することはできません。

ホノルル市の住宅街におけるセットバック

容積率も50%と定められており、
敷地面積に対して最大半分までのみ住宅を建てることができます。

また、総面積に応じて必要な駐車スペースの数が定まっています。
2,500 sqft(232㎡)以上の場合には最低2つ、
3,500 sqft(325㎡)以上の場合には3つと、
面積が大きくなるに準じて必要数が増加します。
駐車スペースが限られている場合には、
増築できる面積に制限がかかってしまうので注意が必要です。
ちなみに、駐車スペースとは屋根がある駐車場やカーポートに限らず、
ドライブウェイも駐車スペースとして数えることができるので、
4台程度(4,500 sqftまで)であればあまり問題になるケースはありません。

二世帯住宅は注意が必要


二世帯住宅及び一部を貸して収入を得ようとする場合には注意が必要です。
ランドリー(洗濯室)や台所は住宅に一つしかおくことができませんし、
家を二つに分割し、内部で直接行き来ができないようにすることは禁じられています。

ただ、敷地の面積、ゾーニング(用途区分)によっては
二世帯住宅を可能にするような制度(Ohana Unit)が適用される場合や、
住宅の一部を賃貸できる新しい制度であるAccessory Dwelling Unit (ADU)
といったものが利用できることもあります。

どの敷地でもというわけではありませんが、
これらが適用できれば何ら問題なく建設することが可能となりますので、
増築及び二世帯住宅をお考えの方はお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

日刊サンコラム36:住宅の増築について 2016年10月12日掲載

2017年10月9日月曜日

日刊サンコラム35:オフィスを開く際の注意点

今回はハワイでオフィスを開こうとする方への注意点をご紹介させて頂きます。
建築的にはどのような業種のオフィスであれ、大して違いはありません。
人が寝泊まりしたり、料理を作ったり、何か物を売ったり、
危険物を保管したりする等特別な用途ではなく、
一般的なイメージのオフィスであれば通常同じカテゴリーに分類されます。

レストランや住宅に比べてそれほど注意点は少ないのですが、
それでも気をつけるべき点がいくつかありますので、
お考えの方はご参考にして頂ければと思います。


オフィスを開ける地域は決まっている


オフィスはどこにでも開けるものではありません。
住宅街に開くことはできず、
オフィスが開設可能なゾーニング(用途別区分け)の区域でなければいけません。
それほど厳しい制限ではなく、ワイキキ等の観光地や、
カカアコ等の工業地域でも可能です。
閑静な住宅街でなければほぼ大丈夫ですが、
決める前に予め建築士に相談することをお勧めします。

建築許可は必要


オフィスの簡単な工事であっても、9割以上の場合は建築許可が必要となってきます。
具体的には、工費が$500を超えるような場合、
もしくは電気工事を含む場合は建築許可を申請しないと、工事の途中で止められたり、
リース終了後撤去の際に困ることになる可能性がありますのでご注意下さい。

一番の注意点はシンク

オフィスのキッチン

ある程度の大きさのオフィスになると、
休憩室等にシンクが必要となってくると思います。

シンクの水道の下水は重力にのみよって流れていくため、
大本の下水管まで傾斜をつける必要があります。
よって、下水管までの距離
が遠い場合、物理的に設置することが難しくなります。
ポンプをつけることで加圧する方法もあるのですが、
大がかりになるためあまり現実的ではありません。

その他のオフィスのレイアウトは自由ですので、
まずはシンクが必要なエリアから考えていくことが大切でしょう。

場所に目星がつきましたら、
ご希望のオフィスが実現可能かどうかまずご相談頂ければと思います。

日刊サンコラム35:オフィスを開く際の注意点 2016年9月21日掲載

2017年9月25日月曜日

日刊サンコラム34:ハリケーン対策について

皆さんご存知の通り、ハワイにはほとんど地震がありません。
あったとしても、近隣の火山の影響で震度3くらいの揺れがある程度でしょう。
ただ、ハリケーンのリスクはあります
毎年のように注意報が出ており、今年も例外ではありませんが、
過去60年強の間に9回は最接近しています。

日本の台風よりもエネルギーの大きいハリケーンは、
一度接近すると膨大な被害をもたらします。

ハワイのハリケーン

インフラは機能しなくなり、
水や電池などの必需品を用意しておかないと大変なことになりかねません。
また、家自体への被害も大きいため、
年々ハワイ州の建築基準法はハリケーン対策のため厳しくなっています。
その一つがSafe Roomです。

ハリケーンによる被害

リスクの高い地域には各住宅に避難場所が必要


Safe Roomは近年、ハワイで法整備されました。
ハリケーン接近時に風速が高くなるような高台は、
高リスクエリアとして認定されます。
具体的にはマノア、パロロバレー、カイルア、カネオヘ等です。

ホノルル市のホームページで具体的に
どの地域が風速何マイル出る可能性があるのか詳しく見ることができます。
これらの場所で、改築・増築・減築・改修をする場合には特に問題はないのですが、
新築住宅を建てる場合のみ、Safe Roomと呼ばれる避難場所を用意する必要があります。

家族が立って入れるぐらいの小さな部屋で良いのですが、
この部屋はその他の住宅と構造的に独立している必要があり、
住宅がたとえ倒壊したとしても、その部屋だけは無事であることが求められています。
非常用の電話回線や換気用の開口部等、
市から指定されたものを用意する必要があります。

家全体の構造を強化するのは大変お金がかかるので、せめて一部屋だけでも強化し、
そこへ批難することで人命だけは守ろうというコンセプトなのです。

家の強度を上げれば避難場所は不要


もちろん、家全体の強度を上げれば、別途避難場所を用意する必要はありません。
強風に耐えられるよう外壁の強化はもちろんですが、
風にのって飛んでくる様々な物が窓に当たっても割れないよう、
すべての窓ガラスを強化ガラスにする必要があります。
また、日本家屋によくあるような雨戸(シャッター)を各窓ガラスに設置し、対策をすることができます。

これらの対策は新築住宅において義務化されていますが、
当然既存の住宅においても行うことができます。
最近ハリケーンが頻繁に接近してきており、心配な方も多いかと思いますので、
もしご興味がありましたらお気軽にご相談下さい。

日刊サンコラム34:ハリケーン対策について 2016年9月7日掲載


2017年7月13日木曜日

日刊サンコラム33:レストランを開く際の注意点

最近、ハワイでレストランを開きたいといったお問い合わせを多くいただきます。
そこで今回は、レストランを開業するにあたって、
建築的な観点から、いくつか注意点をご紹介したいと思います。

ハワイには数え切れないほどの和食レストランがあり、
介入しやすいビジネスかと思われがちですが、
特に日本でレストランを経営された経験のある方ほど、.
アメリカの法規の厳しさ及び工費の高さに困惑されます。
日本では必要でないことでもアメリカでは義務付けられているものが数多く存在し、
イニシャルコストも大幅に膨れ上がってしまいます。

日本とは異なる数多い法規・条例


全部挙げるときりがないですが、特に安全面はとても重んじられています。
収容人数が50人を超える場合、避難経路が2箇所以上必要であったり、
また、人数に応じて避難経路の道幅も広くとる必要があります。

キッチンでは、耐火材料を使うことはもちろんのこと、
下水道に直接油が流れこまないようグリーストラップの設置も必ず義務付けられています。
さらに、ワイキキにおいては、屋外に煙を流すこと自体が禁じられており、.
エコロジーユニットと呼ばれる煙を除去する大掛かりな機器の設置も必要となってきたりと、
思いも寄らないところで施工費用が大幅に膨らんでしまうことがあります。

ワイキキで大人気の丸亀うどん

居抜き物件であっても注意が必要


前テナントが造作した店舗の内装や厨房設備などがそのままの状態で残っているような居抜き物件であれば、
安価でかつ早くお店をオープンできると思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。
ほとんどの場合、レストランで提供するメニューが変更されたり、
内装の改装をすると思います。
そうすると、厨房の改築はもちろんのこと、
機械工事(エアコン・上下水道の配管・換気ダクト)や電気工事が必要となり、
建築許可を取得する必要がでてきます。
建築士を雇い、建築許可を取り、やっと工事が着工できるので、
デザイン開始から店舗オープンまでは6ヶ月程かかると考えてよいでしょう。
その間、家賃を払い続けるのか否かによっても初期投資の金額は大きく変わります。
建物のオーナーとの交渉次第では、建築許可がおりるまでは家賃を免除してもらえたり、
また、改築費用を一部負担してもらえるケースもありますので、
粘り強く交渉することをお勧めします。

また、立地・建物の状況によっては、
そもそもレストランをオープンすることが不可能であったり、
想定外の莫大な費用がかかることもあります。
リース契約前に一度建築士に現場を見てもらい、
大まかな費用や工事の必要性も含め相談することが大切です。

何かご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

日刊コラム33:レストランを開く際の注意点

2017年4月19日水曜日

日刊サンコラム32:建築トラブル回避の方法

最近「工務店に騙された!」とのご相談を受けたので、
そのようなことにならないよう今回は注意事項を書いていきたいと思います。

異国の地で大金を積んで工事を依頼するというのは、非常に怖いことだと思います。
また、風習や常識も異なるため、細心の注意が必要です。
工務店の免許を確認する等、簡単にできることも多いですが、
依頼主に落ち度があるために損をするケースが非常に多いので、
しっかりと勉強してから挑むか、詳しい専門家に相談をすることを強くお勧めします。

口頭で工事依頼をするリスク


ちょっとした工事や修復、リフォームは建築許可はいらない、
建築士を雇う必要はない、とよく耳にするかと思いますが、
厳密には$1,000以上の施工費がかかる場合には、
例外なくすべて建築許可が必要となります。

建築許可 - Building Permit


また、工務店の役割は、日本とは大きく異なります。
日本ですと、改築やリフォームをする際、工務店に相談をしに行き、
そこでデザインや材料の選定の打ち合わせをします。
きちんと図面にして、工事内容に納得した上で施工依頼をするという流れになります。

一方、米国の工務店は基本的に工事しかしません。
図面は引いてもらえないため、
直接工務店に駆け込むと口頭で工事内容を伝えることになります。
そして見積書にサインをし、工事着工となるわけですが、
口頭ですべてのことを伝えることは困難です。

例えば、シャワールームのタイルが古臭いから新しくしたい思い、
「タイルを張り替えてください」と伝えたとします。
一見それで十分そうですが、はたしてどこまで双方同じ考えを持っているでしょうか。
これでは、タイルの上から新たにタイルを張るのか、
タイルを取り除いた場合、痛んだ石膏ボードは張り替えるのか、
防水処理はどうするのか、どのようなタイルを張るのか等、
一見単純に思える作業でも、たくさんの決定事項があります

シャワーのタイル

実は、「工務店に騙された!」と相談をしにいらっしゃる方で
このようなケースはとても多いです。

最も大切なのは契約書


とても月並みですが、建築工事の場合、契約書というのはとても広義になります。
実は建築士の描く設計図というのは、施主と工務店の間の契約書として機能しています。
工事内容についてすべて自分で説明し、文書にしてから契約書を作成するか、
自信がなければきちんと建築士を雇い図面にしてもらう方が無難です。

建築工事はとても大きなお金が動きます。
コミュニケーション不足で工事をやり直すことになると、
2倍・3倍とお金がかかることは珍しくありませんので、十分に気をつけて下さい。

コラム32:建築トラブル回避の方法

2017年4月12日水曜日

日刊サンコラム31:住宅地における建ぺい率と容積率について

数週間に渡り、住宅を建設する際に、
セットバックや高さ制限があるということをご紹介してきました。
今回はその他に建蔽率(けんぺいりつ)、容積率というものについてご紹介致します。

住宅地では最大50%まで建設可能


建蔽率とは、所有している土地に対して建設可能な面積の割合のことです。
住宅地では敷地の総面積に対して50%まで住宅を建設することが許されています。
残りの50%は庭として保持することで建物が密集し、
息苦しい住宅街になることを防いでいます。
この割合についてはゾーニングによって定められており、
郊外や都心部においては異なりますので注意が必要です。

建設物と認識されるものとは


住宅の場合、壁に囲われている範囲は当然建設物として計算されます。
柱だけで支えられているカーポート等も同様です。
屋根については軒先30インチまで免除されます。
ハワイで最も一般的な軒先の長さは30インチのため、
特別に大きな屋根にしない限り、屋根は除外されるという認識で問題ありません。

その他、フェンスや擁壁(retaining wall)、ドライブウェイ、
屋根のないコンクリートデッキ等も建設物として計算されません。
また、二階部分だけ突き出していて、
地面部分は庭となっていたとしてもその範囲は建設物として認識されてしまいます。

通常の一軒家を建てる上では、
あまりこの制限がシビアに関係する場面は多くありませんが、
投資物件で土地面積をフル活用する場合や、土地がとても狭い場合、
また一つの敷地に二軒以上の住宅を計画する際には細心の注意が必要になります。

容積率はあまり気にしなくても良い


日本では、建蔽率と対になって容積率も重要視されます。
容積率とは、敷地に対して、どれだけの延床面積の建物が建てられるかを示すもので、
建蔽率同様、各ゾーニングごとに制限が定められています。

ハワイの住宅地においては、容積率の制限は特にありませんが、
延床面積の大きさによって必要な駐車場の数が変わってきます。
例えば延べ床面積が2,500 sf未満の建物については、
駐車スペースが最低1つ必要となり、それを超えると2つ以上なければなりません。
3,500 sf以上の場合には3つ以上と、大きさに準じて増えていきます。

ただし、序盤にもお話しましたが、これらはゾーニングごとに定められており、
郊外や都心部においては異なりますので、詳しいことはお気軽に直接ご相談下さい。

日刊サン記事
日刊サン 2016年7月27日掲載


2017年4月5日水曜日

日刊サンコラム30:斜面に住宅を建てる場合

先週、ハワイの住宅地ではセットバックというものがあり、
敷地いっぱいに建物を建設することは禁じられているという話をご紹介しました。
その他にも高さ制限があり、
最大25 feet (約7.6m)であるということをお伝えしました。

ただ、敷地が斜面の場合には少し事情が変わってきます。
斜面に住宅を建設すると、どうしても最高高さが高くなってしまい、
25 feetにおさめるのが難しくなってしまいます。
そのような状況に対処するために、ホノルル市では、
敷地が斜面のときに限り最大30 feet (約10m)まで認められています。

斜面では三階建て住宅も可能


最大30 feetまで認められているといっても、条件がいくつかあります。
基本的なセットバックは平地のときと同じで、
道路に面している側は敷地境界線から10 feet
その他は、5 feetのエリアは建設することはできません。
その他詳しいことは下図をご覧下さい。太線のところが建設可能エリアになります。


斜面における建物のセットバックと高さ制限の図(立面
この30 feetの制限を利用して、実は3階建ての住宅を建設することが可能です。
平地の25 feetの高さ制限では不可能ですが、
段々畑のようにずらしながら建設することで建設可能エリアにおさめることができます。

通常かなりの量の土を取り除いたり、
足したりする必要があるため、建設コストは割高になります。
ただ、ハワイにおいて斜面の敷地といいますと、山沿いがほとんどだと思います。
山から海を見下ろすような絶景が望める場合には、
上記のような建設方法をすることで、
各階から海が望めるようになり多少割高でも投資する価値は大いにあると思います。


ただ、敷地の広さや傾斜角度によっては難しい場合もありますので、
詳しくはお問い合わせ下さい。

日刊サン 2016年6月29日掲載


2017年3月29日水曜日

日刊サンコラム29:セットバックについて

日本の建築基準法では、道路斜線・日陰斜線と呼ばれるものがあり、
敷地ギリギリまで高い建物を建てることが制限されています。
なので、道路から離れるごとに段々と高くなる建物がとても多いのが特徴です。
今度日本へ訪れる際には少し気にしてみてみるとおもしろいかもしれません。

ハワイでも似たような制限があり、特に住宅地においては、
敷地いっぱいに建物を建設することは禁じられています。
それをセットバックと呼びます。
今回は主に住宅地で適用されるセットバックについてご紹介致します。

住宅地では必ずセットバックが必要

住宅地はResidential Zoningと呼ばれます。
この地域では、道路に面する場所では最低10 feet(約3m)
セットバックが必要となります。
その他の敷地境界線でも最低5 feet (約1.5m)のセットバックが必要となり、
敷地ギリギリに住宅を建設することは禁じられています。

また、高さ制限は最大25 feet(約7.6m)となっています。
下図では、太線で囲われている部分が建築可能なエリアとなっています。

Building Setback
建物のセットバックと高さ制限の図(立面)

図をご覧頂けるとわかる通り、上記以外にも傾きが1:2の斜線規制があるため、
特に二階建て住宅を建てる際には注意が必要です。

建築可能エリア外で認められているもの

住宅は、もちろん建築可能エリア内に収める必要がありますが、
はみ出すことが認められているものがいくつかあります。

例えば、フェンスや擁壁(Retaining Wall)は、
敷地境界線ギリギリに建設することが認められています。
ドライブウェイももちろん隣接している道路まで
延長されている必要があるため大丈夫です。
また、住宅の屋根も2.5 feet (約76cm)までであれば、
このエリアからはみ出すことが認められています。

上記以外にも住宅には述べ床面積の制限等、様々な制限がありますが、
それは次回以降ご紹介したいと思います。

また、住宅地以外のゾーニングでは
異なるセットバックのルールが適応されますので注意が必要です。
ご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

日刊サン 2016年6月22日掲載

2017年3月1日水曜日

日刊サンコラム28:建築許可にかかる時間

建築工事をする際、事前に建築許可を得る必要があります。
今回はどのような時に建築許可が必要なのか、必要な費用、
かかる時間についてご紹介していきます。

建築許可が必要な工事とは


カーペットをフローリングにしたり、外壁や屋根の修繕をする時、
建物の補修や仕上げのやり直しだけであれば建築許可は必要ありません。
建築許可が必要になってくるのは、
上記以外のケースはほぼすべてといえるでしょう。

壁を新たに追加したり、解体する場合や外にデッキを建設する場合、
また外構にフェンスを建てるだけでも
ほとんどのケースで許可を申請しなければいけません。
それは建物の種類は問わず、あらゆる建築物に該当されます。
一戸建ての住宅はもちろん、レストラン等の商業施設、
アパートやコンドミニアムの一室の改築であっても
許可なく工事をすることは違法行為となるので注意が必要です。

申請方法・費用


建築許可を申請するには、建築士もしくは構造設計士が描いた
施行図面(Construction Drawings)が必要となります。

よって、何らかの工事をしたい場合には、
1.建築士を探す 
2.デザインをしてもらい、図面を揃える 
3.建築許可の申請 
4.申請している間に工務店を探して見積もりを出してもらう 
5.建築許可がおりれば工事着工 

といった流れが最も一般的になりますが、
上記以外の方法もありますので、興味のある方はお問い合わせ下さい。

また、建築許可の申請料は工費によって変動し、
プロジェクトの規模に比例します。
例えば、$100,000の工費ですと、申請料が$1,560で審査料$312となります。

申請にかかる時間


建築許可にはものすごく時間がかかります。
2016年6月現在で改築の申請をする場合に4~6ヶ月、
新築であれば9ヶ月以上かかっています。
よって、早め早めに計画を始めることがとても大切になります。

ただ、どうしても早く工事をしたい場合があると思います。
リース契約で許可を待っている間にも多額の家賃が発生してしまう場合や、
住宅であれば建つまでどこかで賃貸物件を借り続けなければならない等、
様々な事情があります。
そういった場合には、ホノルル市に直接申請するのではなく、
市に認められた第三者機関に依頼し、
早く許可を得ることも可能です。
$4,000以上もの余計な支出が増えてしまいますが、
大体1~2ヶ月程度で許可を得ることができるようになるので、
期間が短くなった分どれほど節約できるのか天秤にかけてみると良いでしょう。

日刊サン 2016年6月8日掲載


2017年2月15日水曜日

日刊サンコラム27:住宅の一部を賃貸する方法

近年のハワイにおける不動産の価値高騰には目を見張るものがあります。
ホノルルで売買されている一軒家のMedian(中央値)は$700,000を超えており、
地元の労働者階級にはとても購入することが難しい現状です。
住宅の不足及び価格高騰の対処として、
2015年9月に新しい法律が施行されました。
ACCESSORY DWELLING UNIT (ADU)というもので、
今回はその制度についてご紹介します。

住宅の一部を賃貸することができる


一軒家の離れや、ベッドルームとバスルームのみを
賃貸している広告などを見たことがありませんか?
丸々一軒家を賃貸しない限り、
実は、これらは去年まで法律で禁じられていました。

一軒家には、あくまで一家族が住むことが想定されており、
分割してその一部を収益目的で賃貸することはできませんでした。
今回施行された法律で、部分的に賃貸をすることが合法化されたため、
今までこっそりと貸していた人、これから副収入を得ようとする人、
また、安く賃貸住宅をかりようとするにはとてもメリットが大きいでしょう。

賃貸するにあたっての様々な規制


法整備されたということは、それに伴って様々な規制がしかれます。
まず一つに、その住宅には原則として所有者、
もしくはその血縁者が住んでいる必要があります。
よってすでに他人に貸している賃貸物件を
さらに分割して他の人に貸すといったことはできません。
例外として、所有者が予期せぬ苦難(例:難病にかかった)
にあったときのみ許されます。

また、所有者であれば、ADUとして制定された部分に自らが住み、
母屋を貸し出すこともできます。
子供たちが巣立った後、老後はADUでこじんまりと生活しつつ、
大きな副収入を得る方法も有意義かもしれません。
ただ、どのような賃貸でも良いわけではなく、
賃貸期間は6ヶ月以上と決められているので、
バケーションレンタル用には貸し出すことはできません。
その他、ゾーニングや最大面積、駐車スペースの規制がありますが、
この新しい法律の主な目的はホノルルの賃貸住宅の絶対数を増やすことが
目的となっていますので、ほとんどの一軒家で適用可能となります。

もし、ご興味がおありでしたらお気軽にお問い合わせ下さい。

日刊サン 2016年5月25日掲載



2017年2月9日木曜日

日刊サンコラム26:特別区域について6-パンチボール編

ここ数週間に渡り、特別区域(Special Districts)についてご紹介しております。
特別区域とは都市計画の一環です。
利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、
歴史や文化を継承させたり、色やデザインについて制限をかけ、
街全体に統一感を出したりすることで街全体の価値をあげることを目的としています。

ハワイには8つの特別区域が制定されており、
今回はパンチボール地区についてお話しさせていただきます。

パンチボール特別区域

Punchbowl

行かれたことのある方も多いかと思いますが、
パンチボールは国立太平洋記念墓地として、
ホノルルの観光名所の一つです。

広大なクレーター内が国立墓地となっており、
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、
ベトナム戦争などで戦死した3万人以上の兵士が安らか眠っています。
この特別区域は、今現在持っている特徴・雰囲気を維持することを目的としています。
自然溢れる近隣を守り、パンチボールからの景観、
またはパンチボールへの景観を損なうようなことを規制しています。

建物の向きや高さに対する制限


近隣の主要道路からパンチボールがよく見えるように、
また、パンチボールから遠くまで見晴らせるように、
建物が視界を遮らないよう配慮し、パンチボールを海側から見たときに、
その視線と平行な向きにする必要があります。(下図参照)


また、主要な道路からパンチボールがキレイに見えるように
建物の高さ制限も斜めにひかれています。
高台になっているProspect St沿いは40 feetの高さまでしか建てることができず、
それより下の方だともう少し高くまで建設することが許されています。


このように特定の景観を守るための高さ制限というのは、
実は非常に珍しいことなのです。
ただ、こちらの規制が発令したのは大分遅く、
すでにパンチボール付近には高層の建物が建ってしまっているのがとても残念ですね。
それらの既存の建物は当然取り壊すわけにはいかないので
現状維持を許されていますが、
今後同規模の建物に建て直すことは許可されません。

よって、建物の耐用年数が超える数十年後、
パンチボールの景観がどのように改善していくのか楽しみですね。

日刊サン 2016年5月11日掲載


2017年2月6日月曜日

日刊サンコラム25:特別区域について5-ハレイワ編

ここ数週間に渡り、特別区域(Special Districts)についてご紹介しております。
特別区域とは都市計画の一環です。
利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、
歴史や文化を継承させたり、色やデザインについて制限をかけ、
街全体に統一感を出したりすることで街全体の価値をあげることを目的としています。

ハワイには8つの特別区域が制定されており、
今回はノースショアのハレイワ地区についてお話しさせていただきます。


ハレイワ特別区域


今ではオアフ島の主要な観光スポットの一つとなっているハレイワ地区ですが、
1800年代後半にプランテーションの街として
ハワイ史においても重要な役割を担っていた場所でもあります。
当時の景観を守るために、地域の建造物には高さ制限やデザインの指定など様々な規制があります。

ハレイワのお店



現状維持が原則


具体的な規制内容は色々と細かく分かれており複雑ですが、
根本的には出来る限り現状維持に努め、
新たな建物も既存のものと似たようなデザインにしようといったものです。

いくら地主が現代建築を建設したくても、実現することは不可能です。
ファサードデザインや建材、色、看板まで、
多岐に渡って既存の街並みから浮かないように規制されています。

また、ハレイワ地区はのどかな田舎であり、
そののどかさもまた重要な特徴の一つと捉えられているため、
過度な発展も望ましくないとされています。
その関係も含め、建ぺい率は低く、
高さ制限も30フィート(約9メートル)までと商業地区としてはかなり低く設定されています。
ただ、その甲斐あってかどの建物も小規模で可愛らしいデザインが魅力的で、
ノスタルジックな雰囲気の漂う人気観光地として維持し続けられるのだと思います。


最後に、
熊本地震の被害に遭われた被災地の皆様やご家族の方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、
犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
一日も早い平穏な日々の訪れと被災地の復興・復旧を心よりお祈り申し上げます。

日刊サン 2016年4月27日掲載