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2025年9月10日水曜日

日刊サンコラム74:オーナービルドについて

知り合いのハンディマンに工事を依頼したり、ご自身で工事をする等、
 免許を持っていないコントラクターが工事を行うことは可能なのかと、
最近よく相談を受けます。
 そこで今回は、「オーナービルド」という方法をご紹介致します。 

オーナーの全責任なら無免許で工事を行うことはできるが非推奨


結論としては、コントラクターの免許がなくても工事を行うことができます。
ただ、その条件として、すべての責任をオーナーが負う必要があります。
コントラクターは工事をする部材を買ってきて組み立てるだけの人ではなく、
様々なサブコントラクター(下請け業者)を雇い、
指揮するという重要な役割を果たしています。
なので、そのような経験がない方や、
委託できるような知り合いがいない場合にはとてもリスクが高いためお勧め致しません。

また、サブコントラクターも含め、すべての責任がオーナー自身にかかることのリスクの例をいくつかあげてみましょう。
例えば、工事中に不慮の事故が起きた場合の保障や、
インスペクターをしかるべきときに呼ぶ義務。
また、オーナーであっても建築許可図面に忠実に施工する必要があり、
デザインを変更した場合には再度建築許可を取得しなければならない可能性もあります。
特に、誰かが屋根から落ちる等して大きな怪我をした場合には
数百万ドルもの賠償金を支払わなければならない事態に至る可能性もありますので、
保険に入ることは絶対に必要です。 

 電気と機械だけは要資格保持者が必要 オーナービルドであっても
電気工事士と機械工事士(配管や空調)は必要となってきます。
もちろん、電気と機械工事が絡まないような工事内容であれば必要はありませんが、
オーナーであっても無資格者が触れることは許されておらず、
建築許可書を受け取る際に、電気と機械工事士の署名付きの書類を用意する必要があります。

一年間リースやリセールができない 


 免許保持者が工事を行っていない場合、建物の信頼性に疑問があるため、
工事完成後1年間は貸したり売ったりすることができません。
また、1年以内はオファー(広告など)も出すことができませんので注意が必要です。
ただ例外として、工事内容が$10,000未満の場合や
自分の会社の従業員であれば1年未満であっても貸したり売ったりすることは可能です。
 その他、オーナービルドであっても各種法律に準拠しなければならず、
知らないうちに法律違反をしていたなんてことは良くあります。
工事のやり直しを命じられるだけでなく、
罰則もありますので結局コントラクターを雇うよりも高くついてしまったなんてことになりかねません。
少し節約をしようとして大きく損することは十分にありえますので、
きちんと免許を保持しているコントラクターに依頼されることを強くお勧め致します。

日刊サンコラム74:オーナービルドについて



2025年9月2日火曜日

日刊サンコラム73:不動産(中古物件)を買う際の注意点2

前回は、不動産を買う際には建築申請の状況やアスベスト、鉛を含んだペンキが使われているかということを気をつけないといけないということをご紹介させて頂きました。
今回はその他に注意すべき点を建築士の視点からいくつかご紹介させて頂きます。

とにかく隅々まで見る・試す


中古のモノを買う際は、車でも何でもそうだと思いますが、基本は「すべて試してみる」ということです。
ドアや窓は全部開け閉めをし、電気もすべてつけてみて、水道もお湯を出してみたり、
バスタブに水を溜めてみたり、動くものはすべて動かしてみて下さい。



そこで少しでも違和感があったら徹底的に調べます。
気になる点があった場合、できれば建築士や工務店等、専門家を呼ぶことをお勧めします。
例えばドアが開きづらいものがあった場合、
単にヒンジが錆びているだけなら良いのですが、建物全体がゆがんでいる可能性があります。
また、内外壁に斜めにヒビが入っている場合も同様です。
傾いた建物を直すのは大掛かりな工事が必要となりますので、購入を見送っても良いですし、
また、その点を交渉材料にし値引きを試みるのも自由です。

また、ハワイではシロアリ被害がとても多いので、特に気をつけましょう。
もちろん、購入時にInspectorと呼ばれる検査員が調査しますが、
チェックリストに従い現状を報告するにとどまります。
何か問題点を発見した場合、その問題から派生するさらに大きな問題や、
原因となるものまではやはり通常教えてもらえない場合が多いので、
個人でさらに調査をするか判断をしたほうがよいでしょう。


築年数に注意


当然ですが、古ければ古いほど注意が必要になります。
すぐに建て替えてしまう日本とは違い、建物の平均寿命が非常に長いので、
築50年以上の住宅・コンドミニアムはそこら中にあります。

しっかりとリフォームされていれば、新築よりも安く、
快適に住むことができるので人気があると思います。
ただ、どれだけメンテナンスをしていたとしても、建材には寿命があります。

例えば鉄筋コンクリートの寿命はきちんと施工されたとして80年~100年といわれています。
また、海岸部では塩分がコンクリート内部に侵食し鉄筋と反応することで通常よりも早く腐食されてしまいますので、
購入時にはこれらの内容も踏まえた適切な判断が必要でしょう。

専門家を雇う必要は?


一般的に自分でチェックしてみて気になる点がなければわざわざ雇う必要性はあまりないと思います。
ただ、大規模な建物や、商業利用の場合には一度相談されることをお勧めします。
建物によってはレストラン等に改築することが非常に困難な場合や、
また、立地によって不可能な場合もあるので十分に注意しましょう。

日刊サンコラム73:不動産(中古物件)を買う際の注意点2


2023年1月6日金曜日

日刊サンコラム72:不動産(中古物件)を買う際の注意点1

 今回は、不動産を買う際に気をつけないといけないことを
建築士の視点からいくつかご紹介させて頂きます。

建築申請の状況については必ず確認


建築許可の申請をせずに違法な工事をしている物件は、
多々見受けられるので十分な注意が必要です。

不動産取引の際でも、売主や買主のエージェントでさえ
違法であることを知らないケースが多く見受けられるので、
買い手側がきちんと調べて確認することが大切です。

Notice of Violation

 

知らずに購入をすると、その責任は買い手側にうつります。
今度売りたいときに知識のある買い手に調べられ、
値引き交渉の大きな要因となるだけでなく、
許可申請されていない物件にはローンの審査がおりないものも多数あるので、
買い手の幅が狭まります。

代表的なのは米軍関係者用のローンで、こちらは物件への審査が厳しいです。
購入前に建築許可を取得していないことがわかれば、
購入後に認可を得るためにかかる費用を算出し、
その分の値引き交渉をするということも可能になります。

アスベストや鉛(lead)を含んだペンキがあるか注意


人体への悪影響が懸念され、アスベストは1973年に、
鉛を含んだペンキは1978年に、それぞれの使用が違法となりました。

ハワイにおいて築40年を超える物件では、これらが含まれている可能性が非常に高いのですが、
だからといって買わない方が良いというわけではありません。

アスベストが違法となった経緯としては、
施工していた業者の従業員が健康を害したことが発覚し、
それに伴ってその使用が禁じられることになったのです。

一旦施工され、乾いた状態では人体には影響はありません。
ただ、それらを撤去する際には、
再度空気中を舞うので必ず専門業者に依頼する必要があります。

ポップコーンシーリングの除去
 

よく見られるものはポップコーンシーリングですが、
壁や床材などに含まれていることも多々あります。

購入後、改築や増築等をする予定がある人は、
撤去する際に通常よりも少し手間とお金がかかってしまいます。
また、そのようなことを知っていれば、
売主との交渉にも使えるかもしれませんね。

反対に、売主側からの視点で見れば、
アスベストを撤去してから売りに出せば少し売りやすく、高値になるかもしれません。

日刊サンコラム72:不動産(中古物件)を買う際の注意点1


2022年6月9日木曜日

日刊サンコラム71:建築にかかる期間について

 増築、改築、新築を問わず、建築はとても時間がかかります。
日本のようにはいかないため、もっと早めに計画しておけばという声をよく聞きます。
特に新築であれば2年以上かかることはざらにあります。

増築、減築、改築では大した差はない

延べ床面積が増えるのか減るのか変わらないのかの違いになるわけですが、
アメリカの建築基準法において、
それらの建築許可申請のプロセスにあまり差はありません。
ゾーニングによっては外観が変わるのかどうかで許可申請が増えることはありますが、
それはワイキキ等の特殊な地域に限ります。



例え延べ床面積が変わらないとしても、
総工費が$1,000を超える場合にはすべて建築許可が必要となり、
住宅の場合には6ヶ月〜9カ月ほどかかり、
第三者機関を利用したとしても3〜5ヶ月ほどかかります。

増改築のプロジェクト

新築は時間がかかる


規模に寄らず、新たに建物を一から建てるにはデザインに時間がかかるだけでなく、
許可申請にもかなりの時間を要します。
ePlanという電子ファイルでの申請しか認められておらず、例年非常に時間がかかっており、
申請だけでも一年以上を要することがほとんどです。

新築プロジェクト


第三者機関を用いれば、増築の場合とほぼ変わらない期間で許可がおりるため
大変お勧め致します。
ただ$3,000〜$6,000ほどの費用が追加されますので、
予め予算に組み込んでおくとよいでしょう。
もしくは、計画段階から1年以上待つことを前提に心づもりをしていれば、
時間はかかりますがそれだけ節約ができるという考え方もありだと思います。
許可が降りるのを待っている間に出来る限り貯金をして、
好みの家具を揃えたり電化製品を新調したりするのも良いですね。


*2022年6月現在では、すべての住宅のプロジェクト(増改築を含む)にて
ePlanでの申請が必要となっており、期間は第三者機関を通さない場合は
どちらも変わらず9カ月~1年ほど要します

2022年1月12日水曜日

日刊サンコラム70:国による建築士の違いについて

 先日、建築ジャーナルという日本の専門誌で執筆させて頂く機会があり、
ハワイでの建築設計事情について綴らせて頂きました。
私以外にも各国の建築士が執筆しており、興味深かったので少しだけ紹介させて頂きます。

建築士になるためのステップが全く異なる


ハワイに限らずアメリカの場合には、
建築学科の大学・大学院を卒業後、最低3年間のインターンシップを経た後に
6つの建築士試験に合格しなければ建築士になることはできません。

イギリスも似たような感じになっているようですが、
フランスは5年生の大学を卒業するだけで資格を得ることができます。

反対にドバイに至っては、
UAE国籍保有者でなければ建築許可申請業務を請け負うことが出来ない等、
大きく違いがあるようです。

ほとんどの国に景観法が存在する


先進国ではほとんどが景観法と呼ばれる、
近隣の景観を守るための法律が存在しています。

ハワイも類に漏れず、ワイキキでは自然色のみを使うことが許され、
ハワイアンなデザインやロゴが義務付けられています。

Waikiki Beach Walk


イギリスでも同様に厳しくコントロールされており、
計画許可の決定がなされる前に計画内容を公開し、市民からの意見聴取も行うようです。
その点、日本はかなり自由度が高いと言えます。

歴史的建造物の保護


世界遺産の状態を維持していくというのはとてもわかりやすく常識的ですが、
特に遺産として認定されていない建物についてどう対応するのかは、
国によって大きく異なります。

日本では驚くほどに自由ですが、
ハワイにおいては築50年を超える建築物に関しては、
どのような用途・状態の建物であれ、別途役所に申請する必要があります。
申請が必要というだけで、却下されるケースはほぼありませんし、
場合によっては写真や図面を作成し、保管することがあるという程度ですが、
それらの建物の現状を常に把握しようという努力が感じられます。

イオラニ宮殿


さらに、古い建物がとても多いイギリス、フランス、イタリア等では
より厳しく管理されているようです。
例え自分が所有している土地であったとしても、
家を建て直すことは認められず、
周りの環境が保たれる範囲に限り改築が許されるという程度なのです。

このように、建物に対する価値観は国によって大きく異なりますので、
ハワイを含め、海外で建物を買ったり、改築・新築する際には、
その国の文化や法律を少し学ぶ必要があるでしょう。




2021年7月9日金曜日

日刊サンコラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて

2018年4月27日にカカアコにオープンした
オーガニックスーパーのDown to Earthについてご存知の方も多いかと思います。
Keauhou Laneというコンドミニアムの1階に位置しているのですが、
今回はそのKeauhou Laneについてご紹介します。

中低所得者向け賃貸物件

Keauhou Laneはホノルルの平均所得を下回る世帯のみが
賃貸する権利を得ることが出来る少し特殊な物件となっています。
ホノルルの地価高騰により、
あらゆる所得層が住まいを確保できるように制定されたプログラムです。

Keauhou Lane
Keauhou Lane


SALT等、徒歩圏内にたくさんの商業施設があり、
今後のカカアコ地区の発展を考えてもとても良い物件であると思います。

コンドミニアムではオアフ島初のLEEDプラチナ


Keauhou Laneはオアフ島のコンドミニアムで初めて、
環境に配慮した建物に与えられる認証システムLEEDの
最高評価であるプラチナを授与されました。



一般的にエコ建築というと、
工費も高くラグジュアリーなイメージになりがちですが、
今回のような中低所得者向けの賃貸物件で認証されたことにより、
イメージ改革にも繋がりとても素晴らしいことだと思います。

ちなみに、同じくカカアコ地区で
Howard Hughes Corportaionの開発でもLEEDプラチナを授与されましたが、
これは近隣開発(Neighborhood Development)についてであり、
今回の認定は建物そのものに授与されたもので、
どちらも素晴らしいことですが少し異なります。

エコ建築はランニングコストを下げられる


エコ建築にする方法は多数あります。
施工費が高くなるようなものが正直多いのですが、
運営費(ランニングコスト)が下がるものばかりです。

身近な例ですと、白熱電球とLED電球はわかりやすいです。
白熱電球はLEDよりとても安く買うことができますが、
寿命が短く、電気代も多くかかります。
10年スパンで計算してみるとLEDの方がはるかにお得なのは明らかです。


同じような考えでソーラーパネルを大量に屋根に設置したり、
雨水を溜め込み、フィルターを通してキレイにして再利用するシステムを
導入する等すれば、地球に優しいだけでなく、
光熱費も飛躍的に下げることができます。

Keauhou Laneでは、上記の事柄はもちろんのこと、
植栽についてもハワイ産の植物を植えることで
必要最小限の水やりで育つようにしたりと細部にまで工夫が施されています。

ご自宅でも新築・改築される際には、
お得にエコなことができないか建築士と相談することをお勧めします。

コラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて
日刊サンコラム69:エコ建築は高額になるのか ー カカアコのKeauhou Laneについて




2021年2月27日土曜日

日刊サンコラム68:家を増築する際の注意点

 最近一軒家の増築の依頼が多いので、
今回は増築に関する主な注意点についてご紹介させて頂きたいと思います。

長期的な需要と目的をしっかり考えて計画


増築する主なきっかけは家族の増員です。
増えた家族のために寝室やトイレを増築しようという話になるわけですが、
どのぐらいの期間で何人住むことになるのかを推測することはとても大切です。

新生児であれば一般的に18~22年程度は同居すると考えますが、家はそれ以後も残ります
子供が巣立った後に増築した家をどうするのかといった
長期的な視点で考えるととても有意義な計画をすることができます。

大きな家が必要なくなったら買い換える


子供が巣立った後は、増築した家を売ってしまい、
小さな場所を買うというのも良い選択だと思います。
その場合には、少しでも売値が下がらないように
出来る限り一般受けのしやすいレイアウト・デザインにすることをお勧めします。

日本人にとっては良くても、ローカルにしてみれば
大きなマイナス査定である要素はたくさんあるので注意が必要です。

住宅の一部を貸し出す


使わなくなった家の一部を貸し出し、不労収入を得るという手段もあります。

その頃には退職している可能性もありますから、
生活を支える収入源としても期待できます。

ただし、その場合にはADU(Additional Dwelling Unit)として
建築許可を申請しておく必要があるので注意して下さい。

増築時に申請をしておけば、
居住人数が変わったときにいつでも貸し出したりすることができますし、
一軒家の場合にはキッチンは一つしか配置できないという制約も、
ADUでは二つ置くことができるので、
二世帯住宅にすることも容易でとてもお勧めです。

具体的にどういった増築をすれば良いのかわからない場合にも、
建築士に話してみれば考えもつかなかったアイディアを提案してもらえるかもしれないので、
まずは相談してみましょう。


日刊サンコラム68:家を増築する際の注意点


2020年10月8日木曜日

日刊サンコラム67:最近話題となった巨大住宅について2

 ローカルニュースをご覧の方は、
昨年10月に話題となった超巨大な住宅についてご存知かもしれません。

Houghtailing Street(リリハ地区)で29部屋の寝室、
17個のバスルームを含んだ住宅が大きな問題として取り上げられました。

外観は3階建てのアパートにしか見えないのですが、
建築許可申請上はtwo-family detached dwelling(2軒の戸建て住宅)となっています。
二家族で住むことができる住宅ですが、
一部を貸し出したり切り売りしたりすることは禁じられています。

しかし近隣住民は、本来の用途ではなく違法に複数の家族に貸し出すのではないかと
大いに反対活動をしていました。

この件を深刻に受け止めた役所は、巨大住宅の建設を禁止する新たな法案を提出しました。
反対活動もありましたが、ついに3月13日に市長が署名をし、
今後2年間という期間限定で施行されることになりました。



モンスターハウス

大きめの住宅を建設する際に多大に影響する


アパートとして複数の世帯が住むことを問題視して制定された今回の法律ですが、
実際何を持ってして巨大住宅と認定されるのかという見極めが難しいとして
物議を醸しました。

結果、対象となるのは敷地面積の70%を超える延べ床面積の住宅と定められました。
例えば、5,000 sqftの土地であれば、3,500 sqftとなるので、
1,750 sqftの二階建ては対象となってしまいます。
対象となってしまった場合には市議会が別途個別に審査をして、
違法に貸し出す可能性があるのかどうかを精査します。

もし、違法に使う可能性があると判断されてしまった場合には
建築許可を得ることはできません。
また、この審査は最大60日間かかるので、
建築許可申請に要する時間がさらに延びてしまうことが予想されます。

セットバックや必要な駐車スペースも変更


今回新たに制定された法律では、他にも既存の建築基準法からの変更点があります。
敷地境界線からのセットバックは住宅において道に面している部分は10フィート、
その他は5フィートとされていましたが、
今後4,000 sqftの住宅では7フィート、
5,000 sqftでは9フィートと2フィートずつ増加していきます。

駐車スペースも4,000 sqftを超える住宅においては6台必要となります。
4台以上駐車スペースがある場合には、車は頭から入り、
敷地内で切り替えして道路へ頭から出ることができなければならないので、
ドライブウェイにかなりの面積が必要とされます。


 

平均より少し大きめといった程度の住宅でも対象となるため、
かなり多くの人に影響を与えることになるでしょう。

詳しいことは土地の面積や立地によっても異なりますので、まずは建築士にご相談下さい。

2020年9月17日木曜日

日刊サンコラム66:内装の仕上げについて

 ハワイの住宅の内装は大半が塗装になっています。

日刊サンの編集の方に、日本だと色々な種類があるのになぜハワイはほとんどが塗装なのかという質問を頂いたので、
この場をかりて塗装と壁紙クロスの違いについてご紹介させて頂きます。

壁紙を貼るよりも塗装の方が安い

まずイニシャルコスト(施工)は塗装の方が安いです。

特に技術も必要なくマスキングをしっかりすれば素人でも少し慣れればキレイにできます。
また、壁紙は何か硬いものをぶつけると破たり、
塗装もまたペンキが剥がれることがあります。
どちらも定期的にやり直す必要があるのですが、
壁紙は一部を補修することは非常に困難で、
最低でも壁一枚やり直す必要があります。
同じクロスが見つかる可能性は低いので、
結果として部屋全体をやり直すということになりがちです。

反対にペンキは一部だけ塗りなおしたり、
壁一枚だけといったことは容易に行うことができる上、
ホームオーナーが自ら塗ることも可能です。

格安でメンテをすることができるのでランニングコストも塗装の方が安くなりがちです。
日本ではあまり家の塗装を自分でするといった習慣がないというのも、
日本とハワイの大きな違いかもしれません。

DIY壁塗装
 

素敵な柄にしたいのであれば壁紙


単色ではなく柄にするのであれば壁紙が良いでしょう。
塗装ですとペンキで壁に絵を描いたり、柄を描くことになり、
施工業者に任せるのは現実的ではありません。

壁紙であればパターンを選べばそのとおりの柄の壁になるため、
思い描いていたとおりのデザインを容易に実現化できます。
ハワイでもカフェやレストランでは壁紙が採用されるケースが多いです。



壁紙


壁紙に湿度は大敵


壁紙はノリで石膏ボードに貼り付けてあるため、湿度が高いと剥がれてきてしまいます。

ハワイも山間部では高温多湿となり、壁紙が向いていない地域もあります。
また、バスルームやキッチン等、部屋の機能上湿度が高くなるような部屋では
壁紙は使用しない方が無難です。

ベッドルームやリビング、廊下等でちょっとお洒落にしたいところだけ
壁紙を選択するのが良いでしょう。

2020年6月24日水曜日

日刊サンコラム65:ハワイの住宅の気密性

日刊サンの編集の方に、なぜハワイの住宅は気密性が低いのかと質問を頂いたので、
この場をかりて私の考えを紹介させて頂きたいと思います。

昔はSingle Wall Constructionが大半を占めていた


1970年代までのハワイの住宅はSingle Wall Constructionという構法を
使ったものが大半だったので、今主流である2x4構法とは大きく異なります。

これは日本でいう在来軸組工法に近いもので、
柱で二階や屋根を支え、構造壁がありません。

壁で自重を支えていないため、
1インチに満たない薄い板一枚が柱と柱の間に張ってあるだけです。
外との間に一枚の板しかないため、
少しでも歪んでいるとすぐに隙間風が入ってきてしまいます。

1970年以前の建物となると、地盤が緩んできたりと
建物全体が歪んでいることがとても多いので、
まずはその歪みを直してあげる必要があります。

このような場合でも、家を建替えなくても直すことは可能ですので、
もしご自宅が傾いているかもしれないという方は
一度建築士にご相談されてみてはいかがでしょうか。

そもそも気密性は必要なのか


このような構法を採用してきた背景には、ハワイの気候が関係しています。
そもそも気密性というものを重要視していなかったのではないかと私は思います。

ハワイはとても気候が良く、年中暖かいです。風さえ吹いていて、
日陰に入ればとても快適に過ごすことができます。

木陰さえあれば快適なハワイ


つまり、木の下で十分快適なのです。
そもそもなぜ気密性を上げたいのかということを考えると、
外との温度差を保つためです。

外は寒いけど中は暖かく、外は暑いけど中は涼しくと、
冷房・暖房器具で人工的に室内の温度を調整して初めて気密性が生きてきます。

ところが、八ワイにおいてはそのような必要がなかったので、
あまり重要視されなかったのではないかと思います。

ただ最近では、きちんとした施工業者に依頼をすれば、
日本の建物のような気密性の高い建物を建てることは十分可能です。
気をつけなければならないのは、気密性があまりに高いと
シックハウス症候群になりやすいということです。
きちんと換気をする習慣をつけるか、
24時間自動で換気のできるシステムを設置することをお勧めします。

日刊サンコラム65:ハワイの住宅の気密性

2020年6月3日水曜日

日刊サンコラム64:コンドミニアムの改装について

最近コンドミニアムの改装の依頼を頂くことが多くなってきたため、
今回は簡単にその流れや注意点についてご紹介致します。

内装工事であっても諸認可を受ける必要がある


Fee Simpleでコンドミニアムの一室を買ったからといって
何をしても良いわけではありません

基本的にはコンドミニアムのアソシエーション(管理組合)に
工事内容を図面として提出をして承認してもらい、
ホノルル市へも建築許可を申請する必要があります。

アメリカでは、コンドミニアムは商業ビル扱いとなってしまい、
諸認可には建築士及び電気設計士、機械設計士による図面が必要となります。
工務店に相談する前に、まずは建築士と話し合うことを強くお勧めします。



諸認可が必要となる境界線


カーペットやフローリングといった床材をやり直す場合や、
壁の塗装といった仕上げのみの工事の場合には基本的に諸認可は必要ありません。
また、家具の入れ替えについても同様です。

ただ、電気工事や機械(水道・ガス)が含まれるような工事、
もしくは総工費が$1,000を超えるような場合には
アソシエーション及びホノルル市の認可を受けることが義務付けられています。



これは修繕の領域を超えるであろうという境界線で、
それほどの規模になればハンディーマンではなく、
きちんと免許を持った建築士及び工務店が責任を持って計画・工事を行うことにより、
不足な事故が起きないよう、また万が一起きてしまっても
きちんと保険でカバーできるようにする必要があるという考えです。

外観は変えられない


ほとんどのコンドミニアムが、外観を変えることに関してはとても厳しいです。
ラナイを閉じてしまい、部屋の一部にすることを認めているコンドミニアムは多数ありますが、
具体的にどのような窓枠でどういったデザインでなければならない、
といった細かい規則が定まっています。



また、エアコンについても同様です。
窓枠にはめるタイプのエアコン(Window Unit)や室外機をラナイに設置すると、
外から見える可能性があります。
これを規制しているコンドミニアムも多数ありますので、
きちんと管理組合の規則(House Rule)を参照することが大切です。

いずれも、日本での改装工事よりもかなり時間のかかるプロセスになりますので、
計画については出来るだけ早めに始めることをお勧めします。

日刊サンコラム64:コンドミニアムの改装について

2020年5月1日金曜日

日刊サンコラム63:IT技術と住宅

前回はITの発展がいかに建築設計に影響を与えたかというお話をしました。
今回は、住宅にIT技術をどのような方法で採用できるのかについてご紹介します。

スマート家電で快適生活

少しずつメジャーになりつつあるスマート家電。
ライフスタイルによってはとても便利になる可能性を秘めています。

家中の家電をリモコンやスマートフォン1つで操作できるのは、
一度慣れてしまうともう戻れないほどに便利です。

私たちに一番馴染みのあるものでいえば、
テレビ周辺のリモコンがあげられます。

テレビ本体はもちろん、DVDプレイヤーやアンプ、
ケーブルテレビなどのリモコンが
コーヒーテーブルにところ狭しと並んでいるご家庭もあるかもしれませんが、
1つのリモコンに学習させ集約することや、
スマートフォンで操作できるようにすることができます。

同じく照明やエアコンも同じリモコンで一元管理できると便利なだけでなく、
テーブル周りがとてもスッキリします。
また、リモコンではなく、音声認識で反応するというものも最近流行りつつありますね。

安定したネットワーク環境を構築

年々我々の生活にインターネットが不可欠になってきています。
仕事だけでなく、学校の宿題、友達とのコミュニケーションも
インターネットがないと出来ないというところまできています。

ネットワークというとwifiが主流ですが、ルータとの距離が遠かったり、
壁などの障害物が原因で思ったようにスピードがでずストレスを感じてしまいます。

二階建ての住宅や、平屋であっても1,000 sfを超えるようなところでは
有線ケーブルを壁の中などに這わせることでルータから離れたところでも
ネットワークの速度を全く落とさないことが可能です。

少し前は当たり前のようにやっていたことなのですが、
無線がメジャーとなった現代では少し減少傾向にあります。

これから新築、改築の計画をされる場合にはどこにネットワークの拠点を作り、
家の端までどうやってカバーするのかしっかり考えていかないと、
今後益々インターネットに頼る生活になった場合、
とても不便を強いられる可能性がありますね。

日刊サンコラム63:IT技術と住宅 

2020年4月21日火曜日

日刊サンコラム62:IT技術進歩における建築設計への影響

 PCで仕事をすることが当たり前になってもう20年ほどになります。
その後、飛躍的に進歩を遂げ、
どの職種でも業務内容や作業工程が大きく影響されたと思います。
建築設計も例を漏れず、
手書き図面からパソコン上で製図をするCADと進化を遂げてきました。
今回はさらにその先の最新技術について少しご紹介したいと思います。

現在はBIMが主流


日本ではそこまでシェアが伸びていませんが、
アメリカの設計事務所ではBIMがCADのシェアをもう超えました。

CADとは作図ソフトで今まで手書きで一本一本線を引いて図面を起こしていたものを
PC上で描くことができます。
BIMではBuilding Information Modelingの略で、
三次元上に現実に限りなく近い建物を描き、
それを元に図面を起こしていくというソフトです。
ただ三次元なだけではなく、
それぞれの建材に情報を与えることで断熱性能や熱容量を計算したり、
コスト計算もすることができます。
さらに紙面上ではなかなか気づきにくい配管と梁との干渉等、
施工中に起こりうるトラブルも予め回避することが可能になりました。

レーザーポイントクラウド測量


まだまだ採用している企業は少ないですが、測量も自動化が進んでいます。
360度回転できる画像を皆さん見たことが一度はあるかと思うのですが、
その一歩先に進んで、360度三次元で物体を捉えることができる技術です。
数千万ものレーザーを放射し、それぞれの点までの距離を測量し、
三次元空間をPC上で再現することができます。

膨大なデータ量と処理が必要になるため、
かなりハイパワーなマシンが必要となりますが、
測量しづらい部分も正確に測ることができるのはとても便利です。

設計者の負担は減らない


様々な技術が発展していますが、
今のところ飛躍的に建築設計の負担が減るような技術はありません。
どちらかというと、トラブルが起こらないように
正確に設計するためのツールといったところです。

また、それぞれのソフトはとても高価なだけでなく操作方法はかなり煩雑で、
習得するまでに時間を要します。
今後さらに様々なソフトが出てくるでしょう。

建築の工法等も日進月歩ですので、日々の業務に追われるだけでなく、
どれほど最新のテクノロジーを勉強し続けることができるかというのが
建築士の責務のように感じます。

日刊サンコラム62:IT技術進歩における建築設計への影響

2019年12月4日水曜日

日刊サンコラム61:ハワイに適した日よけ対策

最近一気に涼しくなってきたハワイですが、それでもやはり常夏というだけあり、
日本と比べると年中暖かいです。
建物も日本と同じように建ててしまっては快適な住環境・労働環境を構築することはできません。
今回はどのような日よけ対策をすればハワイで快適な環境をつくることができるのか紹介していきます。

近年流行のガラス張りタワマンは快適か


皆さんご存知の通り、カカアコを中心として現在高層タワーマンションが数多く建設されています。
私のお客様でもご購入された方は何人もいらっしゃるのですが、
セントラルエアコンをつけていれば快適だが、
消して窓を開けるだけだと日中すごく暑いという話を良く耳にします。

本来、皆様ご存知の通りハワイはとても快適な気候に恵まれています。
公園の木陰に座れば涼しい風が吹いてとても気持ちが良いです。
建物の中の方が快適なハズなのですが、なかなかそうもいきません。
近年の高層コンドミニアムは床から天井までガラス張りで、日よけが全くされていないため、
直射日光が部屋に入ってきます。
コーナーユニットであれば良いですが、一面しか窓がなく風通りも悪いと、
日光により徐々に室内が暖められていき、その熱を外に逃がすことができません。
もちろんエアコンをつければ良いのですが、あまりお好きでない方もいらっしゃるかと思います。


カカアコの高層コンドミニアム

直射日光を室内に入れない工夫が必要

日よけというと屋根や庇(ひさし)のイメージが強いと思いますが、
実は方位によっては全く意味がありません。
太陽は東からのぼり、夏場は頭上を通り、冬場は南側から西に降りていきます。
どれほど長い屋根を設置しようと、
東からは朝日が、西からは夕日が真横から室内に入ってきます。
これを防止するには、縦方向のルーバーが最も効果的です。
Punchbowl沿いにあるDepartment of Transportation Servicesの建物がとても良い例です。
西向きに建っておりますが、夕日を遮るように建物全体にルーバーがかかっています。

Department of Transportation Services


また、逆に南側は屋根や庇が非常に効果的です。
上階にラナイを設置することもとても実用的かつ有効的です。
Ala MoanaにあるPark Laneはその点を良く理解した良いコンドミニアムだと思います。
大半の住居が南向きで、ラナイが大きく南側にせり出しており直射日光を防いでいます。

アラモアナのパークレーン

高層コンドミニアムの場合にはデザイン性や景色を重視するため、
日よけ対策を最優先することはなかなか難しいのですが、
一軒家等の低層建築の場合にはわりと簡単な方法で実現することができます。
木陰にいれば日中でもとても快適なハワイですから、
エアコンがなくても快適な住環境を実現することは当然可能ですので、
お悩みの方は建築士に一度相談されてみてはいかがでしょうか。

日刊サンコラム61:ハワイに適した日よけ対策

2019年10月23日水曜日

日刊サンコラム60:最近話題となった巨大住宅について

ローカルニュースをご覧の方は、
今年10月に話題となった超巨大な住宅についてご存知かもしれません。

Houghtailing Street(リリハ地区)で29部屋の寝室、
17個のバスルームを含んだ住宅が大きな問題として取り上げられました。
3階建てのアパートにしか見えないのですが、
建築許可申請上はtwo-family detached dwelling(2軒の戸建て住宅)となっています。
二家族で住むことができる住宅ですが、
一部を貸し出したり切り売りしたりすることは禁じられています。
しかし近隣住民は、本来の用途ではなく違法に複数の家族に貸し出すのではないかと
大いに反対活動をしていました。


ニュースで取り上げられたMonster House

建築基準法を満たしていれば問題はない


こちらの住宅は、家の中の二部屋を倉庫として申請しましたが、
実際の工事では寝室にしてしまったことで違反がありました。
しかし、それはそこまで大きな問題ではなく、
全体としては全くの合法的な建物となります。
 当然建築許可も下りていますし、きちんと正式なプロセスは踏んでいます。
また、同オーナーがカリヒに同様な巨大住宅を建築しました。
6階建てに見えるその住宅は20部屋の寝室、16個のバスルームを含んでいます。
こちらも建築としては特に現在の法律では問題になりません。
あくまで「建築としては」です。
各部屋を別の世帯に貸し出すとなると大きな問題となります。

近隣の景観・環境は損なわれる


巨大な建築が建つとその建物がとても浮いて目立ち、
閑静な住宅街のイメージが損なわれてしまいます。
また、大勢の人が住みだすと交通渋滞を招くだけでなく路上駐車も困難になります。
近隣のイメージダウンとなり、地価が下がるといったことにも繋がりかねません。

ホノルル市もこのような事態を深刻に受け止める一方で、
カイムキ地区などは今後成長していくべき地域として
規制緩和を継続していく方向であるとも明言しています。

今のところ住宅の規模に関する規制は一切ないので、
今後このような住宅が数多く建築されると何らかの規制が引かれる可能性は多いにあります。
ただ、一方では住宅の不足が深刻化するホノルルで街の成長を妨げるような規制は引きたくないという事情もあり、
とても慎重になっているようです。





注:2019年10月現在ではすでに法規制が行われています。
建蔽率の制限やバスルームの数の制限等が出来、このようなモンスターハウスは施工できなくなりました。

2019年10月9日水曜日

日刊サンコラム59:防火対策について


モイリイリのアラワイ運河沿いにあるマルコポーロの火災は
未だ記憶に新しいと思います。
コンドミニアムのスプリンクラーの有無が少し話題にもなったかと思います。
以前は高層コンドミニアムでスプリンクラーが義務付けられておらず
それが原因で被害がかなり拡大されたと考えられています。

また、最新の建築でも一軒家にはスプリンクラーがついていません。
どのような基準でこれらの事柄が決まっているか今回は少しご紹介します。


Construction Typeが各建物により定まっている

 建物の用途と規模によってConstruction Typeというものが決まります。
この区別で必要な防火対策が定まっていきます。
Type I~Vと5つあり、Iが最も厳しくVが緩いです。
建物の規模が大きくなればなるほど様々なリスクや被害が増えるとして、
防火対策を厳重にしなければならなくなります。

高層コンドミニアムは最もハイリスクとして、Iにカテゴライズされます。
建材はすべて不燃性のものでなければならず、
構法も木造は認められない等の制限が出てきます。
一軒家の住宅はVに分類され、駐車場を除きほぼ防火対策をする義務がありません。

基準は人命と近隣


 これらの分類及び防火性能は、
火事が起きた際にその建物の中の人が無事に脱出するまでの
時間稼ぎができるかどうかということと、
近隣に火が燃え移り、被害が拡大しないかどうかといったことが基準となっています。
よって、マンションであれば隣の住居との間に耐火壁が必要となり、
万が一火事になったとしても最低2時間は隣に火が燃え移らないように、
またその間に消火もできるかなどを念頭に設計しなければなりません。
被害エリアが最小限に抑えられれば消火活動も速やかに行うことができます。

あくまで必要最低限の防火対策である


 これらの事柄はアメリカの建築基準法で定まっている必要最低限の防火対策であり、
建築士は一般的にそれ以上の防火対策は行いません。
防火対策は万が一のときにはとても助かりますが、同時にコストがかさみますので、
人命が救助できれば良いという最低限の基準しか満たす義務がありません。
更に対策を万全にされたい方は、
例えば一軒家であってもスプリンクラーをつける等の処置も十分可能ですので、
建築士に一度相談されてみてはいかがでしょうか。




日刊サンコラム59:防火対策について


2019年8月12日月曜日

日刊サンコラム58:WELL Buildingについて

快適な労働環境を構築するために2014年にWELLという認証プログラムが開始されました。

人々は、90%もの時間を建物の中で過ごしています。
その建物の可動性、空気の質、食事、そして職場でのストレスというのは
人々の健康に多大な影響を与えます。
その事実を受け、広義での健康を維持できる建物であるかどうかを検証し、
認証するのがWELLなのです。

建物の認証プログラムというと、
LEEDというものをご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
LEEDは住環境や地球環境に特化しているので別物ですが、
プロセス等はとても良く似ています。
LEED AP同様、WELLにも専門の資格であるWELL APというものが存在します。

WELLとは何か


主に職場環境の改善を目的としてInternational Well Building Institute (IWBI)という機関が始めた制度です。
医師や科学者等の専門家を交え、建物のデザイン、環境、健康、行動について
7年以上にもわたって研究されて、7つのカテゴリーに分けて分析されました。
そのカテゴリーはAir(空気)、Water(水)、 Nourishment(栄養)、Light(光)、
Fitness(運動)Comfort(快適性)そしてMind(精神)となります。

WELLの種類


認証プログラムは三種類に分かれており、
新築及び既存の建物、新築及び既存の内装、そしてコアシェル構造になります。
要件を満たすごとにポイントを得ることができ、
一定以上になるとシルバー、ゴールド、プラチナと高いランクの認証を受けることができます。
Well Buildingの認証の種類


何のためのプログラムか


こういった認証プログラムは、設計者にとって多大な負担になります。
100個近い要件をそれぞれ見直し、
一つでも多く得られるように検証及びデザイン変更を何度も何度も繰り返す必要があります。
そのため、設計料も高くなります。

ただ、このプロセスこそがこのプログラムの本質です。
デザインや利便性、効率のみに着目して設計するのではなく、
建物で働く労働者の環境や健康を考え、
デザインを改善していくことで労働者が健康になり、
仕事の効率が上がり、業績も向上することを目的としています。

また、会社がWELLの認定を受けているということで、
その会社は従業員の健康を重んじているとしてイメージアップにも繋がることが予想されます。
まだまだ発足して間もない制度ですが、
だからこそ会社のブランドイメージ向上も兼ねて一足先に採用してみてはいかがでしょうか。
日刊サンコラム58:WELL Buildingについて

2019年7月29日月曜日

日刊サンコラム57:侵食・土砂管理についての新しい法令が施行

今年(2018年)8月よりホノルル市では建築許可申請の際に
新たにErosion and Sediment Control Planというものが必要になりました。
新たな制度の意義や、今後建築を改修・増築・新築する際に
どのように影響を及ぼすのか簡単にご説明致します。

土砂が流れないように計画・監視が必要


本制度は工事中及び工事後に敷地内の土が外に(下水に)流れていかないように計画し、
有資格者が工事中は計画通りに遂行されているか
30日に1回観察及び記録をしなければならなくなりました。

基礎を打つ際に敷地の土を掘り起こしますが、
その土をそのまま放置していると雨風で舞ってしまい、
道路や近隣に流れていってしまいます。
そのようなことを防ぐために、きちんと土は敷地内にとどまるようにフェンスを立てたり、
カバーをしたり、植栽を植えて安定させたりする必要があります。
Erosion Control

土壌に少しでも触れるような工事はすべて必要*


室内のみの改築以外はすべて影響すると考えて問題ないと思います。
フェンスを立てるだけでも、柱を一本追加するだけでも本制度は適用されます。
低いフェンスの設置や小規模なランドスケープを施す場合等、
建築許可が必要ないようなほんの小さな工事でも土砂管理の計画をしなければなりません。
基本的に建築士がすべて行う業務となりますが、
1 acreを超えるような大規模な土壌改善となると土木技師が行う必要がでてきます。
かなり手間のかかる作業となりますので、
今後の設計料は少し値段が上がることが予想されます。


*2019年3月より変更され、120sqft未満の工事であれば免除されることになりました


環境を考えると非常に大事


ハワイの建築はただでさえとても高いのに、
さらにお金も手間もかかる制度が追加されました。

ただ、これは環境問題を考えるととても有意義な制度です。
ハワイに大雨が降ると大量の土砂が海に流れてしまい、
空から見ると島の周り全体が茶色く濁るそうです。


この土砂には車のオイルや薬品等、様々な汚染物質が含まれており、
それらが海に流れ出てしまうことによる環境汚染は計り知れません
土砂を下水や海に流さないことによって海をキレイなままで保てことは
長期的な視線で見るととても有意義な制度だと思います。



日刊サンコラム57:侵食・土砂管理についての新しい法令が施行

2019年6月21日金曜日

日刊サンコラム56:建築許可にかかる所要時間について

建物を新築、増減築、改築する際に不可欠な過程であり、
かつ大きなネックとなりうる建築許可を取得するまでの所要時間についてご紹介します。
ホノルル市役所は深刻な人員不足に直面しており、
認可が下りるまでに非常に時間がかかってしまいます。

建築許可

まだお金が貯まっていないから1年貯めて来年から計画しよう…と考えていると、
完成するのは今から3年後ということにもなりかねません。
とても長いプロセスですので、予め知っておくと無駄な時間を過ごすことなく計画的に行動することができるでしょう。

新築か改築か、また商業施設かで大きく異なる


建築の規模でももちろん認可が下りるまでの所要時間は変わるのですが、
新築なのか改築(増減築)なのか、
また住宅なのか商業施設かでも大きく変わってきます。
まず最短は住宅の改築です。
時期にもよりますが、1~4ヶ月程度でおりる場合がほとんどです。
その間にコントラクターを探したり、冷蔵庫や洗濯機を探したりできるので、
期間的にもちょうど良い具合になります。

ただ、改築であっても商業施設の場合は別です。
役所内では住宅と別のルートを辿ることになるので、
特に何も問題がなかった場合で半年ぐらいは覚悟した方が良いです。

ちなみに、商業施設というのはレストランやリテール、オフィスはもちろんですが、
3軒以上の繋がった住宅も該当します。
よって、アパートやコンドミニアムの改築も含まれるということなので注意が必要です。

コンドミニアムも商業施設扱い


新築の場合、ホノルル市ではePlanというオンラインのシステムを利用しなければなりません。
紙面ベースではなくコンピュータを用いた許可申請プロセスのため、
そのシステムを利用できる役人が少ないのか、非常に時間がかかります。
こちらは今現在最低でも1年はかかると思っていただいた方が良いと思います。
そんなに待てないという方は、
Third Party Reviewerと呼ばれる民間の認可を受けた企業に別料金でレビューをしてもらい、
期間を短縮することができます。

Neighborhood、AOAOの認可も必要

コンドミニアムであれば、その管理者からの認可も必要となり、
認可がおりなければ着工することができません。
また、ワイキキやダイアモンドヘッド、チャイナタウンといったSpecial Design District内の物件では、
外観のデザインレビューが通常の建築許可に加えて行われるため、
通常よりも時間と手間がかかってしまいます。

建築許可が下りる前に工事をすることは可能*

ホノルル市もあまりに許可に時間がかかることは良く理解しており、
その打開策として許可が下りる前に工事をすることを認めています。
早めに工事を始めたければCourtesy inspectionというものを申請し、
認可されれば許可が下りずとも工事をし、
工事途中で行われなければならないInspection(検査)も受けることができます。  
*2019年1月よりこちらの制度についてはなくなってしまいました。
すべての工事において建築許可がおりてからでないと行うことはできません。

一般的な例を挙げましたが、建築は個々に大きくことなりますので、
具体的なことはきちんと建築士までご相談下さい。

日刊サンコラム56:建築許可にかかる所要時間について

2019年6月7日金曜日

日刊サンコラム55:エレベーターについて

今回は様々なエレベーターについてご紹介致します。
高齢化に伴い、バリアフリーの住宅をお考えの方も多いと思います。
また、大規模建築の計画の際にエレベーターは必須です。
一言にエレベーターと言っても種類があり、
それぞれ利点・欠点があるので選定には注意が必要です。

油圧式エレベーター(Hydraulic Elevator)


カハラモール駐車場のエレベーター

最も安価なエレベーターの種類です。
最下層にピストンを設置し、その部分に油を注入していくことで圧力を上げ、
油圧をもって貨物・人を上階に運ぶシステムです。
油圧を利用しているため、最高で8階程度までしか持ち上げることが難しいうえ、
速度も遅いことが大きな欠点です。
また、稀にその油が漏れてしまう事故が起き、
その際の清掃及び修理は大変ですが、
特に何もなければメンテナンスは非常に安価で済みます。

ただ、ランニングコスト(電気代)は他のものに比べて高いと言えるでしょう。
身近な例ですと、カハラモールの駐車場のエレベーターが
こちらのタイプを採用しています。

トラクション式エレベーター(Traction Elevator)

プリンスホテルのエレベーター

ロープで箱を吊るし、最上階上部に滑車・モーターを置き、
反対側には錘でバランスを保っています。
錘があることによって、少ないエネルギーで上下することが可能になっています。
また、滑車部分にギアを配備することで、
モーターの回転数以上に速度を出すことができ、
現段階で最も早く安定した運行をすることができます。

ただ、ロープや滑車の点検は定期的にする必要があり、
メンテナンスコストは高いですし、
イニシャルコストも油圧エレベーターに比べると高くなります。
超高層ビルの場合にはロープをカーボンファイバー製にすることで耐久性を増す等、
色々と工夫が施されています。

機械室がないエレベーター


油圧式エレベーターは最下階の下に、
逆にトラクション式は最上階の上に機械室が必要となります。
高さ制限がある場合や、地下を掘るのが困難な場合には採用が難しいでしょう。
そのような場合にはエレベーターシャフトの側部に機械室を設置できるタイプのものがあります。
トラクション式とイニシャル・ランニングコストは大して変わりませんが、
エネルギー効率はこちらの方が良い傾向があります。
移動スピードはギアのあるものに比べると劣りますが、
油圧式エレベーターの倍ぐらいの速度を出すことが可能です。
エレベーターシャフトの中にモーターが配置されるため、
建築基準法で危険と判断された経緯があり、その結果普及はあまりされていませんが、
今では安全に利用することができ、
中層ビル(250フィート程度)に設置することがお勧めです。

日刊サンコラム55:エレベーターについて