2016年3月3日木曜日

日刊サンコラム16:一軒家の決まりごと2

前回、一軒家を建てる際の注意点として一軒家には
一家族しか住むことを認められていないという話をご紹介しました。
今回はその話をもう少し掘り下げ、ゾーニングの話をしたいと思います。

ゾーニングとは


ホノルルのゾーニングマップ 


ゾーニングとはホノルル市及びハワイ州が定めている土地の用途区分です。
例えば、住宅街の真ん中にナイトクラブや、工場が出来たら困りますよね。
毎晩騒音や空気汚染に悩まされることになってしまいます。

そのようなことを避けるために、地域別に建物の用途を制限しているのがゾーニングです。
ゾーニングは大まかに建物の用途や建物の高さ及び密度を制限します。

住宅街のゾーニング


住宅街のゾーニングは最も厳しいものになっています。
妨げなく就寝できるよう、最も静かな環境を守る必要があるからです。

この住宅街のゾーニングは、R3.5、R5、R7.5、R10、R20とあります。
RはResidentialを意味しています。後ろの数字は敷地の最低面積を表しています。
R5であれば、5,000 sqft(平方フィート)以上の敷地でなければならないという意味です。
ただ、5,000 sqftよりも多少小さい敷地もすでに存在している場合には特に問題ではありません。
ここで、もしR5のゾーニングで10,000 sqftもの土地を所有しているとすると、
規定の倍の広さとなりますので、同じ敷地に2軒の家を建てることができ、
個々の家に合法的にキッチンやランドリーを設置することができます。

基本的には上記のような考え方なのですが、その他にもいくつか制限があり、
同じ敷地内において複数軒の家を建てることができない場合もありますので、
まずは建築士に相談をしてみることをお勧めします。

ゾーニングの変更


市や州がゾーニングを変更することは決して珍しいことではありません。
したがって、所有している土地のゾーニングが変更すれば、
建設できる範囲やその種類なども変わってきます。

例えば80年代中盤頃に、海岸沿いのセットバックは40フィートと定められ、
海岸沿線から40フィートのところまで建物を建設することができなくなりました。
その変更以前に建てられた建物で、40フィートより海岸に近い建物はたくさんありますが、
それらは合法になります。

このように、ゾーニングが変更された場合には、
通常それ以前の建物は現状維持を認められますが、
建て直しはもちろん、改築や増築・減築の際に、
新しい法律が適用されるケースもありますので十分に注意が必要です。

2016年2月17日水曜日

日刊サンコラム15:一軒家の決まりごと

一軒家を建てる際、もしくは改築・増築する際には様々な法規が関わってきます。
高さ制限からセットバック、建蔽率などあげていけばキリがないほどのルールがありますが、
今回はその中から、一軒家には一家族しか住むことを認められていないという話を
ご紹介したいと思います。


一軒家に一家族


自分が所有する土地に自分が家を建てるのだから好きにさせてほしい!
というのが大半の方々の考えで、日本では自由度が高いのですが、
米国は少し事情が異なります。

一軒家には、基本的に一家族のみが住むことができます。
二家族住めるようなプランニングは厳しくチェックされますし、
市から変更を要請されてしまいます。
二家族以上住むようであれば、その分火災などのリスクや損害が大きくなるなるため、
規制が一層厳しくなり、タウンハウスやアパート、コンドミニアムとして申請する必要があります。
ほとんどの住宅街ではこれらの複合住宅の申請は許されていないため、
不可能であるケースが多いのです。

ただ、例外としてハワイにはOhana(家族)という制度があります。
二世帯住宅を目的としたもので、ある程度敷地が広い住宅街で認められてます。
これは個々の敷地によって定まっているので、自分が所有している、
もしくは買おうとしている土地が認められているかは、建築士に聞いてみましょう。
もしOhanaが認められていれば一つの土地に二軒の住宅を建てることも可能となります。

一家に一つしか置けないモノ


住宅は一軒でも、内部を無断で分割してこっそりと二家族住んだりできないように、
他にも決まりがあります。

まず、すべての部屋は繋がっていなければなりません
それも、寝室やトイレ、倉庫などを通って他の部屋に行くことは禁じられており、
リビングもしくは廊下を通じて家の中にあるすべての部屋に行き来できる必要があります。

その他にも、キッチンとランドリーは一家に一つずつしか配置することができません
厳密に言うと、ランドリーという部屋が一つしか配置できないというだけで、
同室に二個ずつ洗濯機と乾燥機を設置することは問題ありません。

また、キッチンは一つしか配置できませんが、
バー(Wet Bar)という形態であれば配置することができます。
キッチンには、冷蔵庫・コンロ・シンクが必ず一つずつはありますが、
「バー」であるにはこの三つのうち二つまで(通常冷蔵庫とシンク)しか設置することはできません。
また、カウンターやキャビネットの大きさに制限があるので注意が必要です。

VICTORIA PLASENCIA INTERIORISMO の アクセサリー&デコレーション Bar

これらの制限は、二家族以上住むことを目的としていない場合でも、
引っかかるケースが数多くあります。
一軒家の新築・改築・増築ご計画の方は、根を詰めて考え出す前に、
自分達が計画しようとしている住宅は法規的にも実現可能なのか、
一度建築士にご相談されてはいかがでしょうか。

日刊サン
日刊サン 2015年12月2日掲載

2016年2月4日木曜日

日刊サンコラム14:屋上農業について

手前味噌で恐縮ですが、
先日提出した学術論文が国際学会の審査を通過したため、
今年の開催地であるイタリアに赴き発表をする機会を与えていただきました。
そこで今回は、学術ジャーナルに掲載される内容の触りを少し紹介させて頂きたいと思います。

イタリアでのプレゼンの様子

屋根のポテンシャル


屋根の役割というのは、その下にある建物内部を雨風等から守り、
太陽光・熱を遮るために存在しています。
この屋根の上に何かを載せて付加価値をつければ、建物の所有者はもちろんのこと、
都市全体として多大なるメリットを享受することができるのではないでしょうか。
都市部における屋根が占める面積というのは、都市全体の面積の1/3程度もあります。
そのすべてを緑化したときの影響力は計り知れないものがあります。

小栗建築設計室 の ラスティックな 家 緑の屋根

屋上緑化のメリット


大都市の問題点は主にコンクリートの多さに起因しています。
特にハワイにおいてはその影響を肌で感じることができます。

例えば、雨水は通常土の中に染み込んでいき、
時間をかけて河川や地下水、また海へと流れていきます。
ただ、都市部においてはコンクリートが地面のほとんどを覆っているため、
土に染み込むことなく下水へと流れていきます。
そのため、強い雨が降るとすぐにFlash Warning(洪水警報)が
出るのは皆さんご存知かと思います。
また、コンクリートは熱帯夜を引き起こす「ヒートアイランド現象」の主な原因にもなっています。
都市部の1/3もの面積を占める屋根をすべて緑化することで、
劇的に都市部特有の問題を軽減することが可能になります。
他にも屋外の防音・断熱の役割を果たしたり、空気の浄化を手伝ったりと、
屋上緑化の利点は数多く挙げることができます。

都市農業のメリット

屋上でせっかく植物を育てるのであれば、
食べられるモノ(農作物)をつくった方が有意義ではないかというのが私の主な論点です。
農作物であっても上記にあげた利点はすべて享受できます。
単なる芝を育てるわけではないので、その分手間もかかりますが、
逆に言うと、その分雇用の機会を増やすことにもつながりますし、
もちろん利益を生むことも可能です。

FCD の モダンな 庭 屋上菜園

また、短時間の農作業をすることによって、
現代人のストレスは飛躍的に軽減することも知られており、
さらには、食料自給率を上げます。
ハワイや日本のように食べ物を輸入に頼っている場合、
震災時や有事の際に致命的な状況になるだけでなく、
送料や関税により値段が高い上に、
運ぶときに必要なエネルギーを考えるととてもエコだとは言い難いでしょう。

都市部で農作物を作ることが最も効率的でかつエコであることは明らかなのですが、
唯一の問題は地価の高さです。
そこで、今まで利用されていなかった屋上を利用すれば、
その点は難なくクリアできると私は考えます。

緑あふれる自給自足の大都市…
そんな街にいつかなればいいなと夢見ています。

日刊サンコラム14
日刊サン 2015年11月4日掲載

2016年1月5日火曜日

日刊サンコラム13:建築士になるには

建築士になるには


Architect

今週は少し趣向を変えて、
建築士になるにはどうしたら良いのかということについてご紹介したいと思います。
日本では、木造の住宅や小規模な鉄筋コンクリート造などの建物の設計
及び工事監理をすることができる二級建築士と、
それ以外の大規模な建物も設計できる一級建築士とに分かれています。

アメリカでは、そのような区別はされておらず、
Architect(建築士)の資格があればどのような建物も設計する権利があり、
また、資格がない場合には有資格者の管理下で設計をする必要があります。

必要な学位



degree

資格をとるためには、まず大学(ほとんどの場合大学院)を卒業し、
NAAB(全米建築課程認定委員会)に認定されたプログラム
(B.Arch, M.Arch, D.Arch)のいずれかの学位を取得する必要があります。
現在日本には、一校もNAABに認定された学位が取得できるところはありません。
ただ、通常よりも長めにインターンとして働くことで、同等な権利を得ることができます。
ちなみにハワイでは、唯一ハワイ大学マノア校に認定された学位があり、
7年間のプログラムになっています。

インターンシップ


最低2年間(通常3年以上)のインターン経験が必要となります。
ただただ設計事務所で勤務していれば良いというわけではなく、
NCARB(建築家登録委員の評議会)に逐一報告する義務があり、
また規定に沿った万遍ない業務を経験する必要があります。

例えば、2年間ずっと模型作りをしていたとしても、
それはインターンのほんの一部しか経験をしていないという扱いになり、
その他見積もりや施工図面作成なども経験しない限り、
一生インターンシップを終えることができません。
色々な業務に携われるかどうかは就労している設計事務所の理解が大きく必要となります。

筆記試験

ARE

7年程度で学位を取得し、3年前後かけてインターンを終えて、
ようやく建築士試験の受験ができるようになります。
試験は合計7つあり、個々に選択問題と作図に分かれています。
それぞれ5時間前後要する試験を7つすべて合格する必要があります。
これら3つ(学位・インターン・試験)をすべてクリアして、
晴れてArchitectと名乗ることができるようになり、また業務をする権利が得られます。
州ごとに若干決まりが異なる点があり、
カリフォルニア州は追加でもう一つ試験を受験する必要があります。
ただ、それ以外は基本的に全米どこででも建築士の免許を取得することができます。

とても長い道のりに聞こえるかもしれませんが、
安全かつ快適な建築物を建てるにはたくさんの知識や経験を要するので仕方がないのかもしれません。
ただ、最もやりがいのある職種の一つだと思いますので、
もし志したいと思う方がいれば喜んでご相談に乗ります!

2015年12月7日月曜日

日刊サンコラム12:ファーストトラックとは

先週は、デザインビルドついてご紹介しました。
一般的に米国における建築は、施主に依頼された建築士が図面を作成し、
工務店(コントラクター)が施工をするのですが、
その場合すべての図面が揃うまで正確な見積もりが組めません。

デザインビルドでは、建築士と工務店が一体となって業務を遂行するため、
計画の途中でも正確な見積もりを取ることができ、
かつ図面がすべて揃う前に材料を発注することができるなど、工期短縮に大きく貢献します。

タイムイズマネー


Time is Money

建築というのはとても時間のかかるものです。
建築設計は小さいプロジェクトでも3ヶ月、大きなもので3年~5年かかるものも珍しくありません。
工期についても同様で、何年もかかるものまであります。

誰にとってもこの待ち時間というのはなんとも苦痛なものです。
土地を所有していたら固定資産税はもちろん、ローンの支払いも始まりますし、
リースであれば月々の支払いをしながら待たなければならない場合もあります。

そんな中、完成を待ち続けるのは精神的にも経済的にも非常に辛いものです。
1ヶ月でも早く完成すれば、そこで利益を生むことができる(出費を抑えることができる)ため、
多少費用が追加でかかっても、早く完成させたいケースも多いかと思います。
そんなときに有効なのがファーストトラックという手法です。

ファーストトラックで工期短縮


ファーストトラック(Fast Track)とはデザインビルドの手法の一つです。
よって、建築士と工務店が一体となることが大前提となります。

どのような手法かというと、建築士が図面をすべて完成させる前に工事を開始するのです。

簡単に流れを説明すると、建築士は躯体や基礎のデザインだけを決めて、
図面におこし、それを基に工務店が工事に取り掛かります。
工事をしている間に、次は屋根や内壁の位置などを決め、
躯体等の工事が終わり次第、新たに描いた図面を工務店へ渡していきます。

このようにして、同時進行で工事と設計を行うことにより、
本来設計がすべて終わるまで工事着工を待たなければならなかった分、時間短縮になります。

Fast Track
ファーストトラックの図解

もちろんその分、各工程へ進むごとにその都度、現状の図面をアップデートし、
新たな部分を描き足すという作業が必要となりますので、
建築士が描かなければならない設計図の量はかなり増えます。

そこで、トラブルを避けスムーズに作業を進めるためには、
計画序盤から完成までの全体像が頭の中で描けるような
経験豊富な建築士の起用が望ましいでしょう。
この手法で3ヶ月でも工期を短縮できれば、大きく節約できる場合は多々ありますので、
特に商業施設を計画されている方は一度建築士に相談されてみてはいかがでしょうか。


日刊サン 2015年10月21日掲載

2015年11月30日月曜日

ヨーロッパ旅行記1~ロンドン編~

学術論文の審査が通り、イタリアの学会で発表することになりました。ついでにロンドンやミラノ、パリにも寄って旅行を満喫してくることに。
10月8日~10月21日の2週間ほど滞在してきました。


初めてのロンドン


ヨーロッパには去年も旅行で行き、十代の頃にも一度行きましたが、
イギリスには一度も足を踏み入れたことはなく、とても楽しみにしていました。

行く前の印象では、食べ物は美味しくない、物価は高い、いつもどんより曇っている
と悪いイメージが多かったですが、今回の旅ですべて払拭されました。

いや、物価が高いのだけは事実かもしれません。。
ホテルもお世辞にも立派とは言えないようなところが5つ星で、一泊7万円近くしました。
アメリカ基準だと2つ星ぐらいのところです。

ただ、食べ物はとっても美味しかったです。
妻が事前にレストランをリサーチ(主にTripAdvisor)でしてくれたのも大きかったと思いますが、
何料理を食べても軒並み美味しかったです。

そんな普通の旅行記みたいな話はこの辺にして…
一応建築ブログなので、建築の話をメインにご紹介していきたいと思います。

ロンドン建築


せっかくロンドンまで来たのですから、ベタな観光は一応しました。
ロンドン塔やタワーブリッジは当然一通り見てまわり。。

タワーブリッジ
タワーブリッジ


夕方にはミレニアム記念事業により建設されたロンドン・アイにのってみたり。

ロンドン・アイ
ロンドン・アイ
その向かいにあるウェストミンスター/ビッグベンを見てまわったりと、
一通り、俗に言う「観光地」は観てまわり、人並み以上に感動してきました。

ウェストミンスター
ウェストミンスター/ビッグベン
ですが、私が最も好きなのは、近代建築から現代建築なのです!
アールヌーヴォーやバウハウスなんかも好きですが、イギリスにはほぼないので今回は割愛。




ロンドンの現代建築


まず、ほとんどの観光客が行かないであろうロンドン市庁舎。

ロンドン市庁舎
ロンドン市庁舎全貌


ロンドン市庁舎
ロンドン市庁舎エントランス

こちらはタワーブリッジのすぐ側にあるので、
時間がある方はお立ち寄りされることをお勧めします。

ノーマン・フォスター
が設計した近代建築で、ヤドカリのような形をしています。
これは、表面積を極力小さくすることで、エネルギー効率が上げられるのではないか
という実験的な目論見を基に設計されたと言われています。
実際、エネルギー効率を測定してみると、あまり良い結果が出なかったのが残念ですが…。

その他にも近代・現代建築はロンドンにたくさんあります。
イス・リ本社ビルも歴史的な建物と共存して建っている様子がいかにもロンドンらしくて素敵です。
イタリアなんかではなかなかこういった光景はお目にかかれません。

スイス・リ本社
スイス・リ本社

また、200m超の超高層ビルも街中に建っています。
こちらはRogers Stirk Harbour + Partnersによる設計で、
真下から見上げた姿は圧巻です。
周囲と比べてもズバ抜けて高いので、よく目立ちランドマークとなっています。

Leadenhall Building
Leadenhall Building

ですが!今回のメインはこれではありません。
もちろん好みによると思いますが、
私はリチャード・ロジャーズ設計のロイズがとっても見たかったのです。







こちらも実験的な要素が強い建築です。
こういったコンセプトが明確で挑戦的なものが大好きです。
こちらのコンセプトはパリにあるポンピドゥセンターと同様で、
通常隠してしまう配管などを前面に押し出してしまったらどうかという試みです。

これにはいくつかの狙いがあります。
まず、大きなところとしては、機能美です。
配管がたくさん立ち並び複雑なファサードをしていますが、
どの建材をとっても必要なものばかりで構成されております。
どのように建物が機能しているのかということを見せることにより、
美しいIndustrialなファサードを表現しています。

また、機械設備というのは最も耐用年数が短い建材です。
よって、他の建材に比べて頻繁に修理や交換が必要になってくるのですが、
外に出ていることにより、それらの作業がしやすくなるという狙いもあります。

ただ、現実的には、外に露出することで経年劣化を早めてしまい、
イニシャルコストもランニングコストも通常より高くなってしまうため、
この後、あまり建築のトレンドとして流行することはありませんでした。

これはとても残念な事実でありますが、
だからこそ、このロイズは試験的に試したとっても貴重な建物の一つであるわけです。

また、実際に見て初めて気づいたのですが、
デザインが黒川紀章氏による中銀カプセルタワービルを思わせました。

中銀カプセルタワービル
中銀カプセルタワービル

4枚目の写真なんかちょっと…。。
気のせいですかね。

こちらも同じく実験的な有名な建築物なので、共通認識があればおもしろいですね。


2015年11月16日月曜日

日刊サンコラム11:デザインビルドとは?

デザインビルドとは?


前回は、一般的な建築士の役割についてご紹介しました。
施主は建築士を選定し、契約をします。
建築士は別途各種エンジニアと契約を結びコンサルタントとします。
工務店(コントラクター)については、別途施主が契約をします。

工務店と建築士は独立しているため、
図面がすべて出来上がってからでないと最終的な工事の見積もりは出ないという話をしました。
ただ、それでは困る場合が多々あるので、
そういった場合のために編み出された手法を「デザインビルド」と呼びます。

工務店と建築士が一体となる


デザインビルドでは、建築士と工務店が一体となります。
施主との契約も建築士・工務店合わせて一つしか交わされません。

通常の手法では、施工図面がすべて完成してから工務店が選定されますが、
デザインビルドではプロジェクトの最初から工務店が関わってきます。
そのことにより、設計の途中段階でも正確な見積もりがとれる上に、
デザインを選定する際に正確な金額の差を考慮に入れて決めていくことができます。
さらには、仕入れや施工に時間のかかるようなもの(レストランのキッチン周り等)は
設計の途中段階で始めてしまうことで、工期を大幅に短縮することが可能になります。

デザイビルドと通常のやり方の違い
デザインビルドと従来の方法の工期の違い

非常に効率的で、かつ無駄な予算をかける必要がなくなる可能性が高いため、
近年米国では急速に広がりつつある手法です。

デザインビルドに欠点はないのか?


一般的な手法よりも優れている点が多いように聞こえますが、
それならばなぜすべてのプロジェクトに採用しないのでしょうか。

それは、工費があがってしまう傾向があるからです。
前の段落と矛盾していると思われるかもしれませんが、
最初から工務店を選定することで、工務店同士の競争相手がいなくなるため、
出来る限り予算を下げて仕事をとろうとする姿勢はなくなってしまいます。

また、設計段階から工務店が打ち合わせに出席したり、見積もりを何度もとったりと、
こなさなければならない仕事量が増えるため、どうしても費用がかかってしまいます。

どういったプロジェクトに向いているのか


ほとんどの場合、施工費は出来る限り安く済ませたいでしょう。
そのような場合には従来の一般的な手法の方が向いています。

投資・借り入れなどの理由により、予算を完全にコントロールする必要がある場合や、
多少のお金よりも工期短縮を優先する場合に向いています。
大規模な建物ほど一ヶ月でも早く完成させることができれば、
多少の施工費の増減など簡単にペイオフできることが多いためです。

来週はさらに工期を短縮できるファーストトラックという手法についてご紹介致します。


日刊サンコラム11:デザインビルドとは
日刊サン 2015年10月7日掲載