2017年10月30日月曜日

日刊サンコラム36:住宅の増築について

希望より少し小さめの家を購入された場合や、家族の人数が増えた場合等、
家の面積を大きくしたいというケースはあるかと思います。
今回はそのような場合における住宅(一戸建て)の増築についてご紹介します。


住宅の建ぺい率・総面積に注意

所有している土地だからといって何をしても良いわけではありません。
東京の住居のように敷地いっぱいまで建設することは
ハワイの住宅街では禁じられています。

敷地境界線から5 feet(約1.5m)もしくは10 feet (約3m)の部分に
建設することはできません。

ホノルル市の住宅街におけるセットバック

容積率も50%と定められており、
敷地面積に対して最大半分までのみ住宅を建てることができます。

また、総面積に応じて必要な駐車スペースの数が定まっています。
2,500 sqft(232㎡)以上の場合には最低2つ、
3,500 sqft(325㎡)以上の場合には3つと、
面積が大きくなるに準じて必要数が増加します。
駐車スペースが限られている場合には、
増築できる面積に制限がかかってしまうので注意が必要です。
ちなみに、駐車スペースとは屋根がある駐車場やカーポートに限らず、
ドライブウェイも駐車スペースとして数えることができるので、
4台程度(4,500 sqftまで)であればあまり問題になるケースはありません。

二世帯住宅は注意が必要


二世帯住宅及び一部を貸して収入を得ようとする場合には注意が必要です。
ランドリー(洗濯室)や台所は住宅に一つしかおくことができませんし、
家を二つに分割し、内部で直接行き来ができないようにすることは禁じられています。

ただ、敷地の面積、ゾーニング(用途区分)によっては
二世帯住宅を可能にするような制度(Ohana Unit)が適用される場合や、
住宅の一部を賃貸できる新しい制度であるAccessory Dwelling Unit (ADU)
といったものが利用できることもあります。

どの敷地でもというわけではありませんが、
これらが適用できれば何ら問題なく建設することが可能となりますので、
増築及び二世帯住宅をお考えの方はお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

日刊サンコラム36:住宅の増築について 2016年10月12日掲載

2017年10月9日月曜日

日刊サンコラム35:オフィスを開く際の注意点

今回はハワイでオフィスを開こうとする方への注意点をご紹介させて頂きます。
建築的にはどのような業種のオフィスであれ、大して違いはありません。
人が寝泊まりしたり、料理を作ったり、何か物を売ったり、
危険物を保管したりする等特別な用途ではなく、
一般的なイメージのオフィスであれば通常同じカテゴリーに分類されます。

レストランや住宅に比べてそれほど注意点は少ないのですが、
それでも気をつけるべき点がいくつかありますので、
お考えの方はご参考にして頂ければと思います。


オフィスを開ける地域は決まっている


オフィスはどこにでも開けるものではありません。
住宅街に開くことはできず、
オフィスが開設可能なゾーニング(用途別区分け)の区域でなければいけません。
それほど厳しい制限ではなく、ワイキキ等の観光地や、
カカアコ等の工業地域でも可能です。
閑静な住宅街でなければほぼ大丈夫ですが、
決める前に予め建築士に相談することをお勧めします。

建築許可は必要


オフィスの簡単な工事であっても、9割以上の場合は建築許可が必要となってきます。
具体的には、工費が$500を超えるような場合、
もしくは電気工事を含む場合は建築許可を申請しないと、工事の途中で止められたり、
リース終了後撤去の際に困ることになる可能性がありますのでご注意下さい。

一番の注意点はシンク

オフィスのキッチン

ある程度の大きさのオフィスになると、
休憩室等にシンクが必要となってくると思います。

シンクの水道の下水は重力にのみよって流れていくため、
大本の下水管まで傾斜をつける必要があります。
よって、下水管までの距離
が遠い場合、物理的に設置することが難しくなります。
ポンプをつけることで加圧する方法もあるのですが、
大がかりになるためあまり現実的ではありません。

その他のオフィスのレイアウトは自由ですので、
まずはシンクが必要なエリアから考えていくことが大切でしょう。

場所に目星がつきましたら、
ご希望のオフィスが実現可能かどうかまずご相談頂ければと思います。

日刊サンコラム35:オフィスを開く際の注意点 2016年9月21日掲載

2017年9月25日月曜日

日刊サンコラム34:ハリケーン対策について

皆さんご存知の通り、ハワイにはほとんど地震がありません。
あったとしても、近隣の火山の影響で震度3くらいの揺れがある程度でしょう。
ただ、ハリケーンのリスクはあります
毎年のように注意報が出ており、今年も例外ではありませんが、
過去60年強の間に9回は最接近しています。

日本の台風よりもエネルギーの大きいハリケーンは、
一度接近すると膨大な被害をもたらします。

ハワイのハリケーン

インフラは機能しなくなり、
水や電池などの必需品を用意しておかないと大変なことになりかねません。
また、家自体への被害も大きいため、
年々ハワイ州の建築基準法はハリケーン対策のため厳しくなっています。
その一つがSafe Roomです。

ハリケーンによる被害

リスクの高い地域には各住宅に避難場所が必要


Safe Roomは近年、ハワイで法整備されました。
ハリケーン接近時に風速が高くなるような高台は、
高リスクエリアとして認定されます。
具体的にはマノア、パロロバレー、カイルア、カネオヘ等です。

ホノルル市のホームページで具体的に
どの地域が風速何マイル出る可能性があるのか詳しく見ることができます。
これらの場所で、改築・増築・減築・改修をする場合には特に問題はないのですが、
新築住宅を建てる場合のみ、Safe Roomと呼ばれる避難場所を用意する必要があります。

家族が立って入れるぐらいの小さな部屋で良いのですが、
この部屋はその他の住宅と構造的に独立している必要があり、
住宅がたとえ倒壊したとしても、その部屋だけは無事であることが求められています。
非常用の電話回線や換気用の開口部等、
市から指定されたものを用意する必要があります。

家全体の構造を強化するのは大変お金がかかるので、せめて一部屋だけでも強化し、
そこへ批難することで人命だけは守ろうというコンセプトなのです。

家の強度を上げれば避難場所は不要


もちろん、家全体の強度を上げれば、別途避難場所を用意する必要はありません。
強風に耐えられるよう外壁の強化はもちろんですが、
風にのって飛んでくる様々な物が窓に当たっても割れないよう、
すべての窓ガラスを強化ガラスにする必要があります。
また、日本家屋によくあるような雨戸(シャッター)を各窓ガラスに設置し、対策をすることができます。

これらの対策は新築住宅において義務化されていますが、
当然既存の住宅においても行うことができます。
最近ハリケーンが頻繁に接近してきており、心配な方も多いかと思いますので、
もしご興味がありましたらお気軽にご相談下さい。

日刊サンコラム34:ハリケーン対策について 2016年9月7日掲載


2017年7月13日木曜日

日刊サンコラム33:レストランを開く際の注意点

最近、ハワイでレストランを開きたいといったお問い合わせを多くいただきます。
そこで今回は、レストランを開業するにあたって、
建築的な観点から、いくつか注意点をご紹介したいと思います。

ハワイには数え切れないほどの和食レストランがあり、
介入しやすいビジネスかと思われがちですが、
特に日本でレストランを経営された経験のある方ほど、.
アメリカの法規の厳しさ及び工費の高さに困惑されます。
日本では必要でないことでもアメリカでは義務付けられているものが数多く存在し、
イニシャルコストも大幅に膨れ上がってしまいます。

日本とは異なる数多い法規・条例


全部挙げるときりがないですが、特に安全面はとても重んじられています。
収容人数が50人を超える場合、避難経路が2箇所以上必要であったり、
また、人数に応じて避難経路の道幅も広くとる必要があります。

キッチンでは、耐火材料を使うことはもちろんのこと、
下水道に直接油が流れこまないようグリーストラップの設置も必ず義務付けられています。
さらに、ワイキキにおいては、屋外に煙を流すこと自体が禁じられており、.
エコロジーユニットと呼ばれる煙を除去する大掛かりな機器の設置も必要となってきたりと、
思いも寄らないところで施工費用が大幅に膨らんでしまうことがあります。

ワイキキで大人気の丸亀うどん

居抜き物件であっても注意が必要


前テナントが造作した店舗の内装や厨房設備などがそのままの状態で残っているような居抜き物件であれば、
安価でかつ早くお店をオープンできると思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。
ほとんどの場合、レストランで提供するメニューが変更されたり、
内装の改装をすると思います。
そうすると、厨房の改築はもちろんのこと、
機械工事(エアコン・上下水道の配管・換気ダクト)や電気工事が必要となり、
建築許可を取得する必要がでてきます。
建築士を雇い、建築許可を取り、やっと工事が着工できるので、
デザイン開始から店舗オープンまでは6ヶ月程かかると考えてよいでしょう。
その間、家賃を払い続けるのか否かによっても初期投資の金額は大きく変わります。
建物のオーナーとの交渉次第では、建築許可がおりるまでは家賃を免除してもらえたり、
また、改築費用を一部負担してもらえるケースもありますので、
粘り強く交渉することをお勧めします。

また、立地・建物の状況によっては、
そもそもレストランをオープンすることが不可能であったり、
想定外の莫大な費用がかかることもあります。
リース契約前に一度建築士に現場を見てもらい、
大まかな費用や工事の必要性も含め相談することが大切です。

何かご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

日刊コラム33:レストランを開く際の注意点

2017年4月19日水曜日

日刊サンコラム32:建築トラブル回避の方法

最近「工務店に騙された!」とのご相談を受けたので、
そのようなことにならないよう今回は注意事項を書いていきたいと思います。

異国の地で大金を積んで工事を依頼するというのは、非常に怖いことだと思います。
また、風習や常識も異なるため、細心の注意が必要です。
工務店の免許を確認する等、簡単にできることも多いですが、
依頼主に落ち度があるために損をするケースが非常に多いので、
しっかりと勉強してから挑むか、詳しい専門家に相談をすることを強くお勧めします。

口頭で工事依頼をするリスク


ちょっとした工事や修復、リフォームは建築許可はいらない、
建築士を雇う必要はない、とよく耳にするかと思いますが、
厳密には$1,000以上の施工費がかかる場合には、
例外なくすべて建築許可が必要となります。

建築許可 - Building Permit


また、工務店の役割は、日本とは大きく異なります。
日本ですと、改築やリフォームをする際、工務店に相談をしに行き、
そこでデザインや材料の選定の打ち合わせをします。
きちんと図面にして、工事内容に納得した上で施工依頼をするという流れになります。

一方、米国の工務店は基本的に工事しかしません。
図面は引いてもらえないため、
直接工務店に駆け込むと口頭で工事内容を伝えることになります。
そして見積書にサインをし、工事着工となるわけですが、
口頭ですべてのことを伝えることは困難です。

例えば、シャワールームのタイルが古臭いから新しくしたい思い、
「タイルを張り替えてください」と伝えたとします。
一見それで十分そうですが、はたしてどこまで双方同じ考えを持っているでしょうか。
これでは、タイルの上から新たにタイルを張るのか、
タイルを取り除いた場合、痛んだ石膏ボードは張り替えるのか、
防水処理はどうするのか、どのようなタイルを張るのか等、
一見単純に思える作業でも、たくさんの決定事項があります

シャワーのタイル

実は、「工務店に騙された!」と相談をしにいらっしゃる方で
このようなケースはとても多いです。

最も大切なのは契約書


とても月並みですが、建築工事の場合、契約書というのはとても広義になります。
実は建築士の描く設計図というのは、施主と工務店の間の契約書として機能しています。
工事内容についてすべて自分で説明し、文書にしてから契約書を作成するか、
自信がなければきちんと建築士を雇い図面にしてもらう方が無難です。

建築工事はとても大きなお金が動きます。
コミュニケーション不足で工事をやり直すことになると、
2倍・3倍とお金がかかることは珍しくありませんので、十分に気をつけて下さい。

コラム32:建築トラブル回避の方法

2017年4月12日水曜日

日刊サンコラム31:住宅地における建ぺい率と容積率について

数週間に渡り、住宅を建設する際に、
セットバックや高さ制限があるということをご紹介してきました。
今回はその他に建蔽率(けんぺいりつ)、容積率というものについてご紹介致します。

住宅地では最大50%まで建設可能


建蔽率とは、所有している土地に対して建設可能な面積の割合のことです。
住宅地では敷地の総面積に対して50%まで住宅を建設することが許されています。
残りの50%は庭として保持することで建物が密集し、
息苦しい住宅街になることを防いでいます。
この割合についてはゾーニングによって定められており、
郊外や都心部においては異なりますので注意が必要です。

建設物と認識されるものとは


住宅の場合、壁に囲われている範囲は当然建設物として計算されます。
柱だけで支えられているカーポート等も同様です。
屋根については軒先30インチまで免除されます。
ハワイで最も一般的な軒先の長さは30インチのため、
特別に大きな屋根にしない限り、屋根は除外されるという認識で問題ありません。

その他、フェンスや擁壁(retaining wall)、ドライブウェイ、
屋根のないコンクリートデッキ等も建設物として計算されません。
また、二階部分だけ突き出していて、
地面部分は庭となっていたとしてもその範囲は建設物として認識されてしまいます。

通常の一軒家を建てる上では、
あまりこの制限がシビアに関係する場面は多くありませんが、
投資物件で土地面積をフル活用する場合や、土地がとても狭い場合、
また一つの敷地に二軒以上の住宅を計画する際には細心の注意が必要になります。

容積率はあまり気にしなくても良い


日本では、建蔽率と対になって容積率も重要視されます。
容積率とは、敷地に対して、どれだけの延床面積の建物が建てられるかを示すもので、
建蔽率同様、各ゾーニングごとに制限が定められています。

ハワイの住宅地においては、容積率の制限は特にありませんが、
延床面積の大きさによって必要な駐車場の数が変わってきます。
例えば延べ床面積が2,500 sf未満の建物については、
駐車スペースが最低1つ必要となり、それを超えると2つ以上なければなりません。
3,500 sf以上の場合には3つ以上と、大きさに準じて増えていきます。

ただし、序盤にもお話しましたが、これらはゾーニングごとに定められており、
郊外や都心部においては異なりますので、詳しいことはお気軽に直接ご相談下さい。

日刊サン記事
日刊サン 2016年7月27日掲載


2017年4月5日水曜日

日刊サンコラム30:斜面に住宅を建てる場合

先週、ハワイの住宅地ではセットバックというものがあり、
敷地いっぱいに建物を建設することは禁じられているという話をご紹介しました。
その他にも高さ制限があり、
最大25 feet (約7.6m)であるということをお伝えしました。

ただ、敷地が斜面の場合には少し事情が変わってきます。
斜面に住宅を建設すると、どうしても最高高さが高くなってしまい、
25 feetにおさめるのが難しくなってしまいます。
そのような状況に対処するために、ホノルル市では、
敷地が斜面のときに限り最大30 feet (約10m)まで認められています。

斜面では三階建て住宅も可能


最大30 feetまで認められているといっても、条件がいくつかあります。
基本的なセットバックは平地のときと同じで、
道路に面している側は敷地境界線から10 feet
その他は、5 feetのエリアは建設することはできません。
その他詳しいことは下図をご覧下さい。太線のところが建設可能エリアになります。


斜面における建物のセットバックと高さ制限の図(立面
この30 feetの制限を利用して、実は3階建ての住宅を建設することが可能です。
平地の25 feetの高さ制限では不可能ですが、
段々畑のようにずらしながら建設することで建設可能エリアにおさめることができます。

通常かなりの量の土を取り除いたり、
足したりする必要があるため、建設コストは割高になります。
ただ、ハワイにおいて斜面の敷地といいますと、山沿いがほとんどだと思います。
山から海を見下ろすような絶景が望める場合には、
上記のような建設方法をすることで、
各階から海が望めるようになり多少割高でも投資する価値は大いにあると思います。


ただ、敷地の広さや傾斜角度によっては難しい場合もありますので、
詳しくはお問い合わせ下さい。

日刊サン 2016年6月29日掲載