建築士の役割とは?
日本人の方から建築設計の依頼を受ける際に、一番最初に私がするお話があるので、今週はその一部をご紹介致します。
それは施主と建築士、工務店(コントラクター)の関係についてです。
建築士は施主が予め購入もしくはリースした土地に、
施主の提示するプログラムに基づいて建物をデザインし、
各種エンジニアと共に施工図面を作成し、市から建築許可をとり、
工務店と工事の確認を行います。
こう説明するとなんだかややこしいですが、
例えば新築の住宅を建てる場合で見てみましょう。
まず土地を見つけ購入し、どのような家にするか夢を膨らませると思います。
その中で家族構成や来客の頻度等で、必要な部屋数やレイアウトを決めていきます。
この設計する際のガイドライン、もしくは施主の用途に基づいた希望をプログラムと呼びます。
その後、建築士を決めて、一緒にデザインを詰めていくことになります。
エンジニアは建築士がコンサルタントとして雇います。
今回の場合ですと、Civil Engineer(土木技師)やStructural Engineer(構造設計士)、
Landscape Architect(造園設計士)等が関わってくる可能性があります。
建築士は施主からの要望を聞き入れ、
それを実現できるようすべてのコンサルタントに指示及びマネージメントをします。
施工図面が完成しましたら、市に図面を提出し、建築許可をとります。
(建築許可についてはコラム1を参考にしてください)
許可が下り次第、工務店から見積もりをとって契約を結びます。
そこからいよいよ工事に入ります。
ここで勘違いされがちな点が2つほどあります。
1. 工費の見積もりをとるのは工務店である
建築士と工務店は独立しており、設計が終わって工務店に見積もりの依頼を出して初めて正確な工費が算出されます。
もちろん、建築士も工費に関する知識はあるので、
例えば50万ドルで家を建てたい等という要望があれば、それを実現する義務があります。
もし、予算よりも工務店の見積もりの方が高い場合には、
AIA(アメリカ建築家協会)の契約書により、
建築士は無償にて図面の描き直しをすることになっています。
予算内に収まるよう最大限の努力をするのが建築士ですが、
実際見積もり金額を算出及び加減することはできないという点にご注意下さい。
2. 建築士は工事の指揮をとらない
日本と異なるのは、アメリカの建築士は通常施工監理を行いません。もし建築士が監理する必要がある場合には、基本設計料とは別に費用が必要になります。
これには責任の分担がありまして、工事の全責任は工務店が、
デザインの全責任は建築士がとれるようになっています。
よって、現場で建築士はデザイン通りにきちんと施工されているかどうかを細かくチェックしますが、
工事過程(例えば足場の組み方等)について口出ししないことにより、
双方が責任をもってきちんとした仕事をすることができます。
以上がアメリカでの基本的な建築士の役割ですが、変則パターンも数多く存在します。
次回はその一つであるデザインビルドについてご紹介します。
日刊サン 2015年9月23日掲載 |
0 件のコメント:
コメントを投稿
ブログ記事に関するご質問・ご意見はお気軽にどうぞ。
設計の依頼・ご相談などはtakao@focuslabo.comまでお気軽にEmailして下さい。