2015年12月7日月曜日

日刊サンコラム12:ファーストトラックとは

先週は、デザインビルドついてご紹介しました。
一般的に米国における建築は、施主に依頼された建築士が図面を作成し、
工務店(コントラクター)が施工をするのですが、
その場合すべての図面が揃うまで正確な見積もりが組めません。

デザインビルドでは、建築士と工務店が一体となって業務を遂行するため、
計画の途中でも正確な見積もりを取ることができ、
かつ図面がすべて揃う前に材料を発注することができるなど、工期短縮に大きく貢献します。

タイムイズマネー


Time is Money

建築というのはとても時間のかかるものです。
建築設計は小さいプロジェクトでも3ヶ月、大きなもので3年~5年かかるものも珍しくありません。
工期についても同様で、何年もかかるものまであります。

誰にとってもこの待ち時間というのはなんとも苦痛なものです。
土地を所有していたら固定資産税はもちろん、ローンの支払いも始まりますし、
リースであれば月々の支払いをしながら待たなければならない場合もあります。

そんな中、完成を待ち続けるのは精神的にも経済的にも非常に辛いものです。
1ヶ月でも早く完成すれば、そこで利益を生むことができる(出費を抑えることができる)ため、
多少費用が追加でかかっても、早く完成させたいケースも多いかと思います。
そんなときに有効なのがファーストトラックという手法です。

ファーストトラックで工期短縮


ファーストトラック(Fast Track)とはデザインビルドの手法の一つです。
よって、建築士と工務店が一体となることが大前提となります。

どのような手法かというと、建築士が図面をすべて完成させる前に工事を開始するのです。

簡単に流れを説明すると、建築士は躯体や基礎のデザインだけを決めて、
図面におこし、それを基に工務店が工事に取り掛かります。
工事をしている間に、次は屋根や内壁の位置などを決め、
躯体等の工事が終わり次第、新たに描いた図面を工務店へ渡していきます。

このようにして、同時進行で工事と設計を行うことにより、
本来設計がすべて終わるまで工事着工を待たなければならなかった分、時間短縮になります。

Fast Track
ファーストトラックの図解

もちろんその分、各工程へ進むごとにその都度、現状の図面をアップデートし、
新たな部分を描き足すという作業が必要となりますので、
建築士が描かなければならない設計図の量はかなり増えます。

そこで、トラブルを避けスムーズに作業を進めるためには、
計画序盤から完成までの全体像が頭の中で描けるような
経験豊富な建築士の起用が望ましいでしょう。
この手法で3ヶ月でも工期を短縮できれば、大きく節約できる場合は多々ありますので、
特に商業施設を計画されている方は一度建築士に相談されてみてはいかがでしょうか。


日刊サン 2015年10月21日掲載