2019年10月23日水曜日

日刊サンコラム60:最近話題となった巨大住宅について

ローカルニュースをご覧の方は、
今年10月に話題となった超巨大な住宅についてご存知かもしれません。

Houghtailing Street(リリハ地区)で29部屋の寝室、
17個のバスルームを含んだ住宅が大きな問題として取り上げられました。
3階建てのアパートにしか見えないのですが、
建築許可申請上はtwo-family detached dwelling(2軒の戸建て住宅)となっています。
二家族で住むことができる住宅ですが、
一部を貸し出したり切り売りしたりすることは禁じられています。
しかし近隣住民は、本来の用途ではなく違法に複数の家族に貸し出すのではないかと
大いに反対活動をしていました。


ニュースで取り上げられたMonster House

建築基準法を満たしていれば問題はない


こちらの住宅は、家の中の二部屋を倉庫として申請しましたが、
実際の工事では寝室にしてしまったことで違反がありました。
しかし、それはそこまで大きな問題ではなく、
全体としては全くの合法的な建物となります。
 当然建築許可も下りていますし、きちんと正式なプロセスは踏んでいます。
また、同オーナーがカリヒに同様な巨大住宅を建築しました。
6階建てに見えるその住宅は20部屋の寝室、16個のバスルームを含んでいます。
こちらも建築としては特に現在の法律では問題になりません。
あくまで「建築としては」です。
各部屋を別の世帯に貸し出すとなると大きな問題となります。

近隣の景観・環境は損なわれる


巨大な建築が建つとその建物がとても浮いて目立ち、
閑静な住宅街のイメージが損なわれてしまいます。
また、大勢の人が住みだすと交通渋滞を招くだけでなく路上駐車も困難になります。
近隣のイメージダウンとなり、地価が下がるといったことにも繋がりかねません。

ホノルル市もこのような事態を深刻に受け止める一方で、
カイムキ地区などは今後成長していくべき地域として
規制緩和を継続していく方向であるとも明言しています。

今のところ住宅の規模に関する規制は一切ないので、
今後このような住宅が数多く建築されると何らかの規制が引かれる可能性は多いにあります。
ただ、一方では住宅の不足が深刻化するホノルルで街の成長を妨げるような規制は引きたくないという事情もあり、
とても慎重になっているようです。





注:2019年10月現在ではすでに法規制が行われています。
建蔽率の制限やバスルームの数の制限等が出来、このようなモンスターハウスは施工できなくなりました。

2019年10月9日水曜日

日刊サンコラム59:防火対策について


モイリイリのアラワイ運河沿いにあるマルコポーロの火災は
未だ記憶に新しいと思います。
コンドミニアムのスプリンクラーの有無が少し話題にもなったかと思います。
以前は高層コンドミニアムでスプリンクラーが義務付けられておらず
それが原因で被害がかなり拡大されたと考えられています。

また、最新の建築でも一軒家にはスプリンクラーがついていません。
どのような基準でこれらの事柄が決まっているか今回は少しご紹介します。


Construction Typeが各建物により定まっている

 建物の用途と規模によってConstruction Typeというものが決まります。
この区別で必要な防火対策が定まっていきます。
Type I~Vと5つあり、Iが最も厳しくVが緩いです。
建物の規模が大きくなればなるほど様々なリスクや被害が増えるとして、
防火対策を厳重にしなければならなくなります。

高層コンドミニアムは最もハイリスクとして、Iにカテゴライズされます。
建材はすべて不燃性のものでなければならず、
構法も木造は認められない等の制限が出てきます。
一軒家の住宅はVに分類され、駐車場を除きほぼ防火対策をする義務がありません。

基準は人命と近隣


 これらの分類及び防火性能は、
火事が起きた際にその建物の中の人が無事に脱出するまでの
時間稼ぎができるかどうかということと、
近隣に火が燃え移り、被害が拡大しないかどうかといったことが基準となっています。
よって、マンションであれば隣の住居との間に耐火壁が必要となり、
万が一火事になったとしても最低2時間は隣に火が燃え移らないように、
またその間に消火もできるかなどを念頭に設計しなければなりません。
被害エリアが最小限に抑えられれば消火活動も速やかに行うことができます。

あくまで必要最低限の防火対策である


 これらの事柄はアメリカの建築基準法で定まっている必要最低限の防火対策であり、
建築士は一般的にそれ以上の防火対策は行いません。
防火対策は万が一のときにはとても助かりますが、同時にコストがかさみますので、
人命が救助できれば良いという最低限の基準しか満たす義務がありません。
更に対策を万全にされたい方は、
例えば一軒家であってもスプリンクラーをつける等の処置も十分可能ですので、
建築士に一度相談されてみてはいかがでしょうか。




日刊サンコラム59:防火対策について