2016年8月9日火曜日

日刊サンコラム24:特別区域について4-チャイナタウン編

ここ数週間に渡り、特別区域(Special Districts)についてご紹介しております。
特別区域とは都市計画の一環です。
利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、
歴史や文化を継承させたり、色やデザインについて制限をかけ、
街全体に統一感を出したりすることで街全体の価値をあげることを目的としています。

ハワイには8つの特別区域が制定されており、
今回はチャイナタウン地区についてお話しさせていただきます。

チャイナタウン特別区域

チャイナタウン

チャイナタウンに遊びに行ったことのある方は多いかと思いますが、
独特な雰囲気がある地域です。
歴史的な低層建築が立ち並び、様々な用途(リテール、オフィス、住宅)の建築物が
密集しているこの特別区域は、これらの特徴を尊重し、守る役割をしっかり果たしています。

歴史的な外観を守ることで、文化を継承していき、
歩行者をより優先していくことで活気のある街づくりをしていこうという意図が
この特別区域には込められているのです。

細かな規制内容


チャイナタウンは8つの特別区域の中で、
実は一番規制が厳しく、ややこしいかもしれません。

歴史的建物が多いため、保護を推奨しているわけですが、
保護対象が三段階に分かれており、個々の建物ごとに異なります。
個々の建物ごとに改築・増築における制限が違うので注意が必要です。

また、様々なデザイン規制があり、
建物正面(ファサード)におけるオーナメントやキャノピーのデザイン、
建材、ドアや窓の種類、色の指定まで定められています。

シンプルなデザインはモダンな雰囲気をかもし出すため、
凝ったディテールの外観にする必要があります。

看板も1940年代を彷彿させるようなデザインが推奨されています。

その他、少し変わった規制としては、
セットバック(道路と建物の間の距離)をとることを禁止していることです。
つまり、建物は敷地境界線ギリギリに建てなければなりません。
そうすることで、すべての建物を歩道沿いにキレイに整列させることができ、美しい街並みになります。

日本でも、銀座は同様な都市計画を施行し、とても整った世界に誇れる街となりました。
銀座の街並み


まだまだこの特別区域が制定されて年数が浅く、改善の余地は多々ありますが、
今後のチャイナタウンの発展を期待しましょう!

日刊サン 2016年4月13日掲載

2016年7月27日水曜日

日刊サンコラム23:特別区域について3-ダイアモンドヘッド編

前々回から特別区域(Special Districts)についてご紹介しております。
特別区域とは都市計画の一環です。

利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、
歴史や文化を継承させたり、色やデザインについて制限をかけ、
街全体に統一感を出したりすることで街全体の価値をあげることを目的としています。

ハワイには8つの特別区域が制定されており、
今回はダイアモンドヘッド地区についてお話しさせていただきます。

ダイアモンドヘッド特別区域

ダイアモンドヘッド


ダイアモンドヘッドは、州及び国単位で文化遺産保護に指定されており、
1970年代からダイアモンドヘッドの景観を損なわないよう様々な制約が定められています。
ダイアモンドヘッド周辺は住宅地が広がっていますが、
公園のような雰囲気(park-like character)を全体として出していくことも目指しています。

景観保護


ダイアモンドヘッドの景観保護とは、
主要道路からダイアモンドヘッドが見えなくならないように規制されています。
1970年代に急速にワイキキ界隈が高層化し、カラカウア通りの海側にホテルが乱立し、
ダイアモンドヘッドがよく見えなくなったことが問題になり、規制がされるようになりました。
住宅においても出来る限り視界を妨げないよう、片流れ屋根や平屋根は禁止されており、
斜面と並行に屋根が流れるように設計することが義務付けられています。

公園のような美しい街並み


デザイン面では、美しい街並みにするため、
商業・工業的なイメージを彷彿させるようなものは禁止されています。

例えば、エアコンの室外機を見えるようなところに設置してはなりません。
大きな壁面も工業的なイメージを彷彿させるため、岩やタイル等のテクスチャーをつけるか、
細かく分割する必要があります。
また、建物の色にも規制があります。派手な色はもちろんのこと、
反射するような塗料・建材の使用は禁止されており、
落ち着いた茶色・緑色等のアースカラーで、街並み全体を統一することを目指しています。

日本の規制と比較すると、考えられないほどに厳しいものばかりですが、
住民一人一人の協力によって成し得た街並みであることを意識して、
ダイアモンドヘッド周辺を散歩してみるとまた印象が変わってくるかもしれませんね。

日刊サン 2016年3月30日掲載

2016年7月19日火曜日

日刊サンコラム22:特別区域について2-カカアコ編

先週から特別区域(Special Districts)についてご紹介しております。
特別区域とは都市計画の一環です。
利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、歴史や文化を継承させたり、
色やデザインについて制限をかけ、街全体に統一感を出したりすることで、
街全体の価値をあげることを目的としています。

ハワイには8つの特別区域が制定されており、
今回はカカアコ地区についてお話しさせていただきます。

カカアコ特別区域

カカアコの高層ビル群

高層コンドミニアムが何十軒も開発されていることで最近何かと話題のカカアコ地区。
ラグジュアリーな新開発都市のイメージがあるかもしれませんが、
住宅(residential)・商業(commercial)・工業(industrial)地区が混在するおもしろいエリアです。

この区域での都市計画は、単純に高級住宅街にするのではなく、
これら3つの用途を個々に守りながら、またそれぞれを発展させたいという意図があります。
様々な用途をコンパクトな区域におさめることで、歩行者に優しい魅力的な街を目指しつつ、
美しい景観を保つために厳密な規制も多々設けられています。

例えば植栽についてですが、Punchbowl Streetではモンキーポッドという木を
最大80 feet(約80m)間隔ごとに植えなければならない等、
主要な道はすべて細かく指定されています。

エアコンの室外機や換気扇、駐車場等、あまり景観として美しくないものに関しては、
植栽もしくはルーバー(羽板)などで隠すことも義務付けられています。
ワイキキのように建築的デザインの制約はありませんが、
カカアコという街をみんなで使いやすく、また美しくしようという試みです。

LEED NDの認定


これらの特別区域にデベロッパーのThe Howard Hughes Corporation®も賛同してか、
60エーカー(24万平米)ものエリアを環境に優しい地区として、
LEED ND(Neighborhood Development)という認定制度の最も厳しいプラチナに申請しています。
便利で美しく、しかも環境に優しい街並みになれば、住民や近隣のビジネスはもちろん、
地価の向上により投資家にも多大な好影響が期待できるのではないでしょうか。

日刊サン 2016年3月16日掲載

2016年5月20日金曜日

日刊サンコラム21:特別区域について1

ハワイには8つの特別区域(Special Districts)が制定されています。
日本には存在しない概念で、馴染みもほとんどないと思いますので、
複数回に渡っていくつかの特別区域についてご紹介します。

特別区域の目的


特別区域は都市計画の一環です。
利用者にとって快適かつ便利な街並みを推奨したり、歴史や文化を継承させたり、
色やデザインについて制限をかけ、街全体に統一感を出したりすることで、
街全体の価値をあげることを目的としています。

この特別区域はこれらの内容を推奨するだけでなく、
制限をする権限を持っているため、建物を新築・改築する際には、
各特別区域を取りまとめている団体に許可を得なければならず、
訂正を求められた場合には従う義務があります。

ワイキキ特別区域


8つの特別区域のうちの一つがワイキキです。

ワイキキのデザイン制限は多岐に渡っていますが、
基本的にはリゾート地として観光客が快適に過ごせるように、
また、ハワイアンなイメージを維持していけるように制定されています。

例えば、ホテルのロビーは出来る限り外にオープンにし、エアコンは設置しないとか、
オープンスペースにはハワイの植物(モンキーポッドややしの木)を
植えるように推奨したりしています。

また、建築物の色やデザインにも様々な制限があり、
ハワイらしさのあるデザインを取り入れることを義務付けられています。
特に現代的な建築物には必ずハワイアンなロゴがファサードについていたり、
屋根の形状が伝統的な寄棟屋根(屋根の最上部から4方向の屋根面が分かれている屋根)
にしなければならない場合もあります。

Hip Roof
伝統的な寄棟屋根


具体例としては、カラカウア通りで西からワイキキに入るとすぐ右手に見えるAllure Waikikiという高級コンドミニアムです。
1階の柱にはそれぞれハワイアンなロゴが装飾されており、
庭園にはやしの木などのトロピカルな植物がたくさん植わっています。
そして、極めつけが屋根です。高層ビルはフラットな屋根が採用されることが多く、
現にこの建物を設計した建築士もフラットにしようとしたらしいのですが、
特別区域の許可が得られず、伝統的な寄棟屋根となりました。

Allure Waikiki
Allure Waikiki


結果、現代とハワイアンが融合された良い建物になったと思います。
このような建物がワイキキにはたくさんあります。
一度これらのことを気にしながら歩かれてみるとおもしろいかもしれません。



日刊サン 2016年3月2日掲載

2016年5月17日火曜日

日刊サンコラム20:建築士との契約書について



先週は施主と工務店(コントラクター)との間の契約書についてご紹介しました。
意外と知られていない施主の責任や建物の保障について説明しましたが、
今回は施主と建築士の間の契約書についてご紹介します。


契約書の種類


工務店との契約書はあまり差異がなく、
AIAのフォームが使われることが多いとお話しました。

しかし、建築士との契約は、工務店と比べ取引金額がかなり少ないこともあり、
そもそも契約書を結ばない場合や、
設計事務所が独自に作成した簡易な契約書で済ますことが多いのです。

実際、私も設計を請け負う際にはAIAの契約書を使わず、
その都度依頼内容も踏まえた上でよりわかりやすく書き直した
独自の簡易契約書を使用しています。

それでも、基本的な内容はどこもAIAのものをベースにしているので、
大体似たような内容となっています。

工務店との関係性


建築士と施主との契約書の中で最も変わっている点は、
契約の当事者ではない第三者(工務店)が大きく関わってくる点です。

建築士が描いた図面で、実際工事を行うのは当然工務店ですし、
工務店の選定や見積もり、また工事進行時、
終了時と一貫して建築士と工務店は密に仕事をします。

ただし、建築士はあくまで施主の代理人として動くので、
工務店と建築士の間に契約書は存在しません。
よって、施主と建築士の間の契約書に工務店についての事項が数多く記載されています。

設計の順序


建築設計はいきなり施工図面を描くのではなく、段階を追って進めていきます。

最初の段階はSchematic Designと呼び、
漠然とした部屋の配置や大きさ、全体のデザインを決めていきます。

施主から大まかなデザイン面で合意が得られると、
次の段階であるDesign Developmentに入ります。
この段階では、もう少し細かく建材やキッチンのキャビネットのデザイン、
仕上げ、電気・機会図などを決めていきます。

それらがすべてが決まると、最後にConstruction Drawingsに取り掛かります。
この段階になると、構造計算から屋根や床のフレーミングや、
各種詳細図面を仕上げ、それらの図面をもとに工事ができるような状況まで仕上げます。

順序立ててより詳細に図面を仕上げていくので、
逆に最終段階に入ってから部屋の配置やデザインを変更することは非常に困難になり、
多くの場合追加料金を請求されてしまいます。
このようなことにならないためには、
建築士との打ち合わせ等すべての意思決定の場に、
関係者を出来る限り同席させることが最も大切だと思います。

日刊サン 2016年2月24日掲載

2016年5月6日金曜日

日刊サンコラム19:工務店との契約書について



先週は施主と建築士及び工務店(コントラクター)の間で
契約書が交わされていない場合どうなるのかというお話をしました。
その場合には建築業界における一般常識が適用されるのですが、
その常識は何から構成されるのかというと、
 AIA(アメリカ建築家協会)が作成した契約書だと言えるでしょう。
これは最も多く利用されている契約書であるため、
業界における慣習となりつつあります。

今回は二週に渡ってそのAIAの契約書の一部についてご紹介致します。
今週は施主と工務店の間で結ぶ契約書についてです。



AIA A201:工務店と結ぶ契約書の約款


工務店との契約書には、工事の規模及び建物の用途等によって
様々な種類のものがありますが、 
AIAのものにはすべてA201の約款が採用されています。
この約款だけでも16章にもおよび、かなり長いですが、
抜粋して特徴的な内容のみご紹介いたします。

施主の責任について


施主の責任は大まかに3つあります。

1.工費の支払いを滞りなくすること 
2.意思決定をすること 
3.敷地の情報を開示すること。

1、2については説明する必要もないと思います。
3つ目の敷地の情報について注目してみましょう。
敷地は施主の所有物であり、施主が最もよく知っているハズといった考え方です。
敷地の測量及び調査については、
別途、施主(もしくは施主に雇われた測量士)が行う必要があります。
敷地が斜面になっていたり、土壌の状態があまりよくないことが予想される場合には、
きちんと調査することを強くお勧めします。



建物の保障について


一般的な家電や車と同じで、建物にも完成後保障がついてきます。
建材については、図面に明記されていない限り、必ず新品を使用します。
新品でない、もしくは正しく機能していない部分があれば、
無償で直す義務が工務店にはあります。

また、図面及び仕様書の通りにきちんと施工されていない場合、
完成後1年間は工務店が無償にて直すという旨が契約書には記載されています。
建材によってはメーカが保障期間を設けているものがありますが、
それはまた別途保障されます。

建築図面というののは、実は工務店との間の契約書の一部でもあり、
その通りに建っていなければ、それは工務店の責任となります。

(注:筆者は弁護士ではなく建築士であり、
また法的な話はケースバイケースのことが多いので、
詳しくは建築を専門とする弁護士にご相談下さい)

2016年4月19日火曜日

ヨーロッパ旅行記2~パリ郊外編~

学術論文の審査が通り、イタリアの学会で発表することになりました。
(発表内容についてはこちらで簡単に紹介しています)
ついでにロンドンやミラノ、パリにも寄って旅行を満喫してくることに。
10月8日~10月21日の2週間ほど滞在してきました。

更新をサボっており、もう半年も前の旅行になってしまいましたね。。
ヨーロッパ旅行記1はこちらからどうぞ。

二回目のパリは郊外へ

大学生のとき、卒業旅行でヨーロッパ旅行をした以来のパリですが、
当時はドイツ・ベルギーメインだったため、フランスはパリ市内だけしかまわれなかったんです。
2年前の新婚旅行では、スペイン・イタリアとフランスに足を踏み入れることもなく。。
今回ようやくフランス滞在が長めにとれそうだったので、
レンタカーをしてパリ郊外へ足を伸ばしました。

サヴォア邸

パリ郊外には、ベルサイユ宮殿など数多くの名所がありますが、
建築に携わっている者として外せないのがサヴォア邸。

1931年に建てられたル・コルビュジエが設計した近代建築の住宅です。
20世紀最高の作品であり、近代建築というものを定義づけたといっても過言ではないと思います。

外観

サヴォア邸以前の建築といえば、装飾的で重厚な西洋的伝統建築が良いとされていました。
当時の時代背景を考えると、上の写真のようにシンプルでかつ軽やかな建築というのは、
アヴァンギャルドであり、多くの人達に衝撃を与えたそうです。

軽やかさという、今までの流れとは間逆のベクトルに向かったわけですが、
ピロティを使うことで、二階の居住スペースが浮いているかのような感覚を実現しました。

また、梁を使わず、ドミノクラブと柱とスラブで支えており、
水平連続窓(当時は高く・細い窓が主流)もかなり珍しかったハズです。

建材も鉄筋コンクリートを採用しており、当時としては最先端の素材です。
逆に、鉄筋コンクリートが普及したからこそ、
サヴォア邸のような建築が生まれたといっても良いと思います。


玄関前のスロープ

折り返しのスロープ 

室内も綿密に考えられて設計がされており、
1階から2階へのメイン動線としてスロープが採用されています。
2つのフロアを連続的に繋ぐことでシークエンスを形成しています。






その他、室内は外観とはうってかわり、暖かみのある色が使われています。
ところどころ、丸みが帯びた壁があり、これもまた暖かみを表現しているのだと思います。





広々としたデッキ及び屋上もスロープで繋がれており、
上るにつれ高くなる視線を意識したプランニングがされており、シークエンスがとても豊かです。

寒い季節に行ったのですが、夏場に行けばとても気持ちの良いデッキなのだと思います。


当然このサヴォア邸については良く知っているつもりでしたが、
実際行ってみると大分印象は違いました。

近代建築の発祥とも言えるこの住宅は、
思っていたよりも暖かく家庭的なイメージを受けました。

当時にしては考えられないぐらいに開口が大きく、
家のどこにいても存分に光が入ってきて明るいです。

また、オープンフロアで、長いスロープが家の中心にあることによって、
家族の生活が垣間見れると同時に、
家のどこにいても子供達のはしゃぎ声が聞こえるのだろうなぁと想像して少しほっこりしました。




2016年4月12日火曜日

日刊サンコラム18:契約について

今回は少し趣向を変えて、法律及び契約関連のお話をさせて頂きたいと思います。

建物を建てる際には二つの契約が必要


デザインビルドでない場合には、一般的に施主(オーナー)は二つの契約を結ぶ必要があります。
一つは施主⇔建築士の間の契約、
もう一つは施主⇔工務店(コントラクター)との契約です。

一般的に建築士及び工務店が最初に契約書を作成します。
その後、施主もそれを吟味し、双方が合意するまで変更を重ねて完成させます。
契約書の内容は様々で、建物の規模や用途によっても変わってきます。
それぞれの事務所がオリジナルのものを用意する場合もありますが、
AIA(アメリカ建築家協会)が作成したものが広く使われています。

AIAの契約書

よく用いられる契約書についての詳細はまた後日お話しするとして、
今回は契約書が交わされなかった場合についてご説明します。

契約書がない場合には一般常識が適用される


大きなお金が動く場合には、契約書は交わした方が良いのですが、
小さな改築工事の時などは、細かな契約書を作成せずに設計及び工事を行うことがあります。
契約をしていないと双方に拘束力が全くないと思われがちですが、実はそうではありません。

例えば、皆さんは病院に行かれた際に契約書にサインをさせられたことがありますか。
大きな手術をするときには合意書のようなものにサインをすることはありますが、
風邪をひいたときには、順番待ちをしてお医者さんに受診してもらい、
受付に行って受診料及びお薬の代金を支払ったりすると思います。



このときに値段の説明や、支払い義務についての契約書はおろか、
説明すら受けないと思います。
それでも、受診料を支払う義務はありますよね。
また医師側も間違った診断をした際には責任が生じてきます。

これは、一般常識もしくは慣習に基づく行動であるからで、
そこから大きく逸脱しない限り、自動的にこれらの慣習に従う義務が発生します。

建築についても同様です。契約書を交わさなかったとしても、
建築士はきちんと不具合のない建物を設計をし、工事完成まで見守る義務があり、
また、施主は設計料をきちんと支払わなければなりません。

ただし、ここで問題なのが
医師よりも建築士の方が一般的な方にとって馴染みがないということです。

つまり、建築における一般常識が何なのか広く理解されていないことが多いので、
その分気をつけたほうが良いでしょう。

(注:筆者は弁護士ではなく建築士であり、
また法的な話はケースバイケースのことが多いので、
詳しくは建築を専門とする弁護士にご相談下さい)


日刊サン 2016年1月13日掲載

2016年3月23日水曜日

日刊サンコラム17:工務店(コントラクター)について



建築物を建てるとき、改修するとき、また増減築するときには、
まず建築士を雇い図面を完成させ、市に建築許可を得て、
工務店(コントラクター)に工事をしてもらうというのが一般的な流れです。

今日は工務店について少しお話したいと思います。

工務店は免許が必要



建築士が免許を取得する必要があるように、工務店もまた工務店の免許が必要です。
州から認可されていない工務店を利用した場合、
数多くのリスクを抱えることになります。

例えば、無免許の工務店の従業員が工事中に怪我した場合は保険が適用されず、
大本の雇用主となる施主がすべて賠償しなければならない可能性があります。
アメリカの医療費は高額ですので、
最悪数億円規模の賠償金が発生するということにもなりかねません。

建築許可を受け取る際には免許が必要なので、
無免許であったことを施主が知らなかったということはまずありえませんが、
免許があるのかどうかを知っておくだけでもリスクを回避できるので、
念のために確認するとよいでしょう。

免許が必要ない場合とは


工事をする以上、免許を保有する工務店にお願いする必要があると考えて頂いて
概ね間違いはありませんが、一応例外もありますのでご紹介します。

一つは工費が$1,000未満の場合です。
このような小さな工事の場合には、
例外的に工務店の免許がないようなハンディーマンでも行うことが認められています。
ただ、$1,000未満であっても電気や水道に関わる工事が含まれている場合には
認められないので注意が必要です。
壁を一つ追加するだけの場合や、窓を新たに開ける等の工事にこの例外は適用されます。

もう一つの例外は、施主自らが工務店として動く場合です。
自分の家なのですから、自分で建てることは認められています。
その場合には、owner-builder permitを取得すれば出来ます。
無免許の工務店の場合には、こちらの制度を悪用して工事をするケースが
多いようですのでご注意下さい。

また、施主が工務店として動く場合には、工務店の免許は必要ありませんが、
それでも電気と水道の工事には個々の免許保有者が工事をする必要があります。
さらに、建物が完成してから1年間は売ったり貸したりすることが
禁じられているというのも知っておくとよい条件といえるでしょう。

日刊サン 2015年12月30日掲載