2022年6月9日木曜日

日刊サンコラム71:建築にかかる期間について

 増築、改築、新築を問わず、建築はとても時間がかかります。
日本のようにはいかないため、もっと早めに計画しておけばという声をよく聞きます。
特に新築であれば2年以上かかることはざらにあります。

増築、減築、改築では大した差はない

延べ床面積が増えるのか減るのか変わらないのかの違いになるわけですが、
アメリカの建築基準法において、
それらの建築許可申請のプロセスにあまり差はありません。
ゾーニングによっては外観が変わるのかどうかで許可申請が増えることはありますが、
それはワイキキ等の特殊な地域に限ります。



例え延べ床面積が変わらないとしても、
総工費が$1,000を超える場合にはすべて建築許可が必要となり、
住宅の場合には6ヶ月〜9カ月ほどかかり、
第三者機関を利用したとしても3〜5ヶ月ほどかかります。

増改築のプロジェクト

新築は時間がかかる


規模に寄らず、新たに建物を一から建てるにはデザインに時間がかかるだけでなく、
許可申請にもかなりの時間を要します。
ePlanという電子ファイルでの申請しか認められておらず、例年非常に時間がかかっており、
申請だけでも一年以上を要することがほとんどです。

新築プロジェクト


第三者機関を用いれば、増築の場合とほぼ変わらない期間で許可がおりるため
大変お勧め致します。
ただ$3,000〜$6,000ほどの費用が追加されますので、
予め予算に組み込んでおくとよいでしょう。
もしくは、計画段階から1年以上待つことを前提に心づもりをしていれば、
時間はかかりますがそれだけ節約ができるという考え方もありだと思います。
許可が降りるのを待っている間に出来る限り貯金をして、
好みの家具を揃えたり電化製品を新調したりするのも良いですね。


*2022年6月現在では、すべての住宅のプロジェクト(増改築を含む)にて
ePlanでの申請が必要となっており、期間は第三者機関を通さない場合は
どちらも変わらず9カ月~1年ほど要します

2022年1月12日水曜日

日刊サンコラム70:国による建築士の違いについて

 先日、建築ジャーナルという日本の専門誌で執筆させて頂く機会があり、
ハワイでの建築設計事情について綴らせて頂きました。
私以外にも各国の建築士が執筆しており、興味深かったので少しだけ紹介させて頂きます。

建築士になるためのステップが全く異なる


ハワイに限らずアメリカの場合には、
建築学科の大学・大学院を卒業後、最低3年間のインターンシップを経た後に
6つの建築士試験に合格しなければ建築士になることはできません。

イギリスも似たような感じになっているようですが、
フランスは5年生の大学を卒業するだけで資格を得ることができます。

反対にドバイに至っては、
UAE国籍保有者でなければ建築許可申請業務を請け負うことが出来ない等、
大きく違いがあるようです。

ほとんどの国に景観法が存在する


先進国ではほとんどが景観法と呼ばれる、
近隣の景観を守るための法律が存在しています。

ハワイも類に漏れず、ワイキキでは自然色のみを使うことが許され、
ハワイアンなデザインやロゴが義務付けられています。

Waikiki Beach Walk


イギリスでも同様に厳しくコントロールされており、
計画許可の決定がなされる前に計画内容を公開し、市民からの意見聴取も行うようです。
その点、日本はかなり自由度が高いと言えます。

歴史的建造物の保護


世界遺産の状態を維持していくというのはとてもわかりやすく常識的ですが、
特に遺産として認定されていない建物についてどう対応するのかは、
国によって大きく異なります。

日本では驚くほどに自由ですが、
ハワイにおいては築50年を超える建築物に関しては、
どのような用途・状態の建物であれ、別途役所に申請する必要があります。
申請が必要というだけで、却下されるケースはほぼありませんし、
場合によっては写真や図面を作成し、保管することがあるという程度ですが、
それらの建物の現状を常に把握しようという努力が感じられます。

イオラニ宮殿


さらに、古い建物がとても多いイギリス、フランス、イタリア等では
より厳しく管理されているようです。
例え自分が所有している土地であったとしても、
家を建て直すことは認められず、
周りの環境が保たれる範囲に限り改築が許されるという程度なのです。

このように、建物に対する価値観は国によって大きく異なりますので、
ハワイを含め、海外で建物を買ったり、改築・新築する際には、
その国の文化や法律を少し学ぶ必要があるでしょう。