2018年7月18日水曜日

日刊サンコラム45:ハワイのコンドミニアムが高い理由

今回は、いつもと少し趣向を変えて、
建築士の視点からハワイの不動産についてお話させて頂きます。
米国の中でもトップクラスに高いハワイの不動産ですが、
それには様々な理由が考えられます。

世界中がマーケット


近年、カカアコエリアを中心に高級~超高級コンドミニアムが乱立しています。
その購入価格は、全米平均から見てもかなり高めなわりに、
ハワイ州の平均年収は決して高くありません。
全50州の中では、ほぼ真ん中あたりに位置しています。
加えて、他の州と比較して光熱費や物価が高いことを考慮すると、
かなり低いことになります。
それでも、新しい物件が出る度に売り切れるのは、
世界中の投資家がこぞって購入するためです。
売れる→需要が高まる→供給が足りなくなる→価格が上がるといった流れですね。

急成長をしているカカアコエリア

土地が非常に限られている


ハワイ州は発展には非常に保守的で、
自然溢れるところは自然のままにしようといった考えが根付いています。
ただでさえ、ハワイは小さな島々で成っていて土地が少ない上に、
その中でも高層コンドミニアムを建てることが許可されているエリアはほんの一握りです。
ゾーニングによって、土地の用途や制限が明確に区別されているため、
許可されているエリアの発展は目覚しく進んでいきます。
それでも、絶対数が足りないので、その他の市外の不動産価格も、
比例して徐々に上がってしまうのです。

訴訟リスクが建築コストを上げている


コンドミニアムというのはLease Hold(借地権)のものを除き、
一つの建物を多数の人が共有しているという概念で成り立っています。
つまり、共有部分については全員がオーナーということになります。
オーナーということは、全員がそれぞれ建物に対して訴訟を起こす権利があります。
では、何について訴訟するのかというと、建物の瑕疵(欠陥)です。
欠陥建築であればもちろん訴訟して当たり前なのですが、
今の規定では工務店や建築士等の関係者は完成後約15年間責任を負うことになっています。
それだけ期間がたつと経年劣化であったり、
使用法が間違っていたりと様々な他の要因も関わってくるので双方ともに立証は難しいのですが、
高層コンドミニアムはすべて、専門の弁護士が業者を相手に訴えを起こしています。
そのため、新築コンドミニアムの計画時から、
それぞれの関係者が訴訟リスクを考え、弁護士費用等を個々に上乗せしてしているのが現状です。
これもまた、コンドミニアム価格高騰の一因であると言えるでしょう。

日刊サンコラム45:ハワイのコンドミニアムが高い理由

2018年6月29日金曜日

日刊サンコラム44:屋根材について

今回は、主に一軒家における屋根材の種類とその違いについてご紹介致します。
屋根は雨漏りしなければ何でも良いと考える人が大半かとは思いますが、
かなり大きな面積を占めるので外観にも大きく影響を与えます
また、材質やデザインにより、メンテナンスの頻度や方法
そして耐久性までもがかなり異なるため、慎重に選択することがとても大切です。

Asphalt Shingles


アスファルトでできた板を重ねたもので、
近年最も多く見る機会がある屋根の種類です。
丈夫で施工がしやすいうえ比較的安価で、
様々な柄及び色からも選ぶことができるので、とても人気があります。

耐久年数は大体20年程度とされており、その短さが短所だといえます。
特に、屋根の上を人が歩くような場合は、更に短くなるでしょう。
また、濃い色のものは年数が経つにつれて色落ちするので、
全体の均一感が損なわれ、まだらな模様になることがあります。

Asphalt Shingles

Slate & Tile Shingles


粘板岩を用いた屋根材になります。
高級感があり、耐火性能も良く、腐敗もせず、
メンテナンスもほぼ不要のため100年はもちます

デザインも様々な色やスタイルから選ぶことが可能です。
短所は、重量があることと、施工が難しいという点です。

また、それに伴う費用も考慮しなければなりません。根材自体に重量があるため、
屋根を支える屋根組みや梁、柱が大きくなります。

また、材料費もAsphaltに比べて高い上に、
施工が難しいため、かなりコストが嵩みます。

丈夫で硬い素材なのですが、その反面、ダイアモンドのように割れやすいという特徴もあります。
なので、屋根の上に乗ると割れてしまう可能性が高いので、
雨樋の掃除等には工夫が必要となります。

Slate Shingles

Metal


金属屋根は近年どんどん人気が出てきています。
メンテナンスもほぼする必要がなく、屋根材も軽いため構造的補強も必要ありません。
ただ、施工が難しいため金属屋根に精通した工務店に依頼する必要があります。

また、材質の特徴上、熱を持ちやすいので
ソーラーパネルを設置する際には屋根から浮かす等の工夫が必要になります。
時間が経つにつれ、金属屋根は輝きを失っていきますが、
塗装を施して新品同様に戻すことも可能です。

Metal

Flat Roof


平屋根を採用することで、建物全体をとても近代的なデザインにすることができます。
モダニズム建築が流行したときに、平屋根が一気に増えたのもそのためです。

すっきりした外観で、屋上も自由に使うことができるのでとても良いのですが、
メンテナンスが大変です。
葉っぱやゴミが排水溝につまらないように定期的に掃除する必要があります。
また太陽光が徐々に屋根材を劣化させるので、メンテナンスを怠ると、
最も雨漏れがしやすいのです。
また、15年おきに仕上げ材を交換する必要もあるため、
長い目で見るとコストも嵩んでしまいます。

Flat

以上のように、一概には最も良い屋根材がどれかと決めることは難しく、
個人的な必要に応じて考慮しなければなりません。
見た目、コスト、機能性、メンテナンス性をそれぞれきちんと理解した上で最適な選択をしましょう。
文量の関係上、かなり簡潔にまとめましたが、詳しいことは建築士にご相談下さい。

日刊サンコラム44:屋根材について

2018年6月15日金曜日

日刊サンコラム43:天井について2

空間の質を決定づける大きな要素の一つに「天井」があります。
基本的に、天井は人が触れることがなく強度も意識する必要がないため、
デザインの上で、最も自由度が高い部分とも言えます。

前回は、天井の高さによって、人が受ける印象がいかに変わるかというお話をしました。
今回は、照明と材質についてお話したいと思います。

間接照明を設置する絶好の場所


お洒落で落ち着ついた空間を演出するために、間接照明がよく採用されます。
天井に窪みを作り、そこに照明を設置すれば、
照明器具自体の姿は隠しつつ、天井全体を照らすことができます。

点光源ではなく面光源なので、眩しさも和らぎ、
テレビやパソコンのモニター等への反射も弱まります。
また、間接照明の柔らかい光には、リラックス効果もあるのでおすすめです。

ただ、場合によっては、どうしても光量が足りないこともあり、
例えば読書をする際には別途スタンドライトを用意した方が読みやすく、
また目にも優しいでしょう。

天井の間接照明

音を吸収させる


硬いものは音を反射し、柔らかいものは吸収します。
硬いものばかりに囲まれると、音が反響してしまい、
少しの物音も大きく聞こえてしまいます。

床をカーペットにすると、音が吸収されるので良いのですが、
好みや機能性の問題でできない場合も多いと思います。
壁に柔らかい素材を施すこともできますが、コストもかかりますし、何より耐久性に劣ります。

そこで、天井を柔らかい素材にし、吸音性能を飛躍的に向上することができるのです。
天井は、前述の通り耐久性を考慮する必要もないので、吸音加工には最適です。
現に、オフィス等でよくあるタイル状の天井は吸音材でできており、
とても軽くて柔らかい素材です。

オフィスの吸音材


コンサートホールのように、音をわざと反響させるケースはありますが、
一般的には吸音材がふんだんに使用されていても、不快になることはありません。

特に人が多く集まるような場所には、出来るだけ柔らかい素材を施し、必要以上の騒音を抑えれば、大変心地よい空間が生まれるでしょう。

普段あまり天井の素材について考えることは少ないかと思いますが、
少し気にして上を見てみると、色々な工夫がされていることがわかりおもしろいかもしれませんね。

日刊サンコラム43:天井について2

2018年2月28日水曜日

日刊サンコラム42:天井について

空間の質を決定づける大きな要素の一つに天井があります。
基本的に、天井は人が触れることがなく強度も意識する必要がないため、
最も自由度が高い部分とも言えます。

通常、あまり意識することもないかもしれませんが、
工夫次第で、それほどコストもかけずに
空間の質を飛躍的に上げることができる部位でもあるのです。

天井は高ければ良いというものではない


天井を高くしようとするとその分コストはかかります
建材はもちろんですが、階高が高くなるので同じ高さの高層ビルでも、
天井高が8フィートと9フィートでは、
40階建てと35階建てと5階分も少なくなってしまいます。
その差の分だけ大きく収益が減ってしまうので、
「天井が高い=豪華」ともいえるでしょう。

天井が高いレストラン

最近のカカアコの超高級コンドミニアムも
階高が通常より1フィート高いものが増えています。
天井を高くすると、空間が広く見え、開放感が増しますね。
逆に8フィートよりも低いと圧迫感が強まり、不快になりがちです。

ただ、天井を高くしすぎると逆に緊張感が増すという興味深い点もあるのです。
例えば、高級ホテルのとても天井が高いロビーに入ったときに、
身の引き締まるような軽い緊張感を覚えた記憶はありませんか。
自然と、背筋も伸びてきちんと振舞おうという意識が働くものです。
しかし、一旦客室に入ると今度はぐっと天井高が低く、
居心地のよい落ち着いた空間が設けられているのです。

レストランでも、ドレスコードがあるようなキチッとしたお店は天井が高く、
アットホームな居酒屋は低めにすることで狙い通りの空間にすることが可能なのです。
最近、天井がオープンでダクト等が見えているようなレストラン・カフェが増えていますが、
天井を高くすればするだけ良いわけではなく、
どのようなイメージのお店にしたいのかを意識するととても良いと思います。

様々な天井高があり、多様性をもたせている(カピオラニのDoraku)

一軒家の場合にも、お客さんが来るようなリビングは天井高を高くして開放感がある空間にし、
家族だけでまったりと過ごすようなファミリールームや寝室は
ぐっと低くするととても快適な家造りができるのではないでしょうか。

次回は、高さ以外の天井の役割についてご紹介したいと思います。

2018年2月14日水曜日

日刊サンコラム41:ハワイの温水システムの注意点

日本とハワイの家で最も顕著な違いは、温水システムではないでしょうか。
日本はタンクレスのガス瞬間湯沸器が大半を占めていますが、
ハワイでは大きなタンクに貯水をして、
電気で温めるウォーターヒーターが利用されているケースがほとんどです。

水を温めるという目的は同じものの、そのシステムの違いや使用方法により、
間取りも注意しなければなりません。

タンクの容量分しか一度に温水を使えない


日本のガス瞬間湯沸器の場合には、使うたびに使う分だけ水を温めているため、
制限なく利用することができます。

ガス瞬間湯沸器


タンク式温水器の場合には水を溜めて温まるまで時間を要するため、
一度にタンク内の温水をすべて使ってしまうと、その後は冷水しか出ません。

ウォーターヒーター


お風呂にお湯を溜めたりして、
止めるのを忘れたりするとすぐになくなってしまうので注意が必要です。
また、食器洗いやシャワー、洗濯機を同時に利用してもすぐになくなってしまうので、
タイミングを見計らう必要が出て少し不便です。

タンクから遠いと温水が出るまで時間がかかる


一般的にタンクは一軒に一つしかありません。
タンクは結構場所をとるので駐車場や裏庭に配置されがちですが、
タンクからの距離が遠いと当然ですが、温水が出るまでに時間を要してしまいます
一般的な大きさの一軒家であっても、水周りとタンクが離れている場合、
温水が出るまでに1分以上要することはよくあります。
その間、冷水を流しっぱなしにしなければならず、とてももったいないです。
毎日のことですので、上下水道代も心配ですよね。
最初に配置する際に少し工夫して、水周りをまとめ、
その中心位置付近にタンクを配置するか、タンクを二つ配置することをお勧めします。

太陽熱温水器で電気代節約


太陽熱温水器

新築住宅であれば、必ず設置が義務付けられていますが、
既存の住宅でも太陽熱温水器を設置すれば、飛躍的に電気代を節約できます。
タンク内の水を屋根まで循環させ、太陽熱で水を温め、
気温が低い場合や太陽が出ていない時に補助的に電気で温めます。
試しに電気を止めて実験してみたことがありますが、
シャワーや食器洗い等では全く問題ないほど水が温まります。

日本仕様にすることも可能


それほど出回ってはいませんが、ハワイでも瞬間湯沸器を設置し、
ガスか電気で温めることが可能です。
ガスは二酸化炭素が発生してしまうため、
必ず設置箇所には換気が必要な点だけはご注意下さい。
また、瞬間湯沸器であっても、設置箇所から離れた場所では、
温水が出るまでに時間を要してしまうため、
上記の内容を総括的に考える必要があるでしょう。